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とりあえず、みんな揃って王都へ転移した。
ショッピングに行く流れで、そのままこの二人を王都に放逐してしまおうってことなのだ。
狩りについてこられたら非常に厄介。
ただでさえイライラが少し出てしまったのに、狩り中後ろからあーだこーだ言われたら……なんかもう、今すぐ駆け出して適当なモンスターを乱獲するレベルである。
誰も何も見てないところで、狩り尽くしたい。
自分のペースで狩り尽くしたい。
いかんな、呼吸が乱れている気がする。
落ち着かないと、落ち着かないと。
最近なんだかペース乱されっぱなしになっているあ。
「ローレントさんも一緒にいきますです!」
「断る」
「なによ、一緒に選んくれてもいいじゃない!」
「いやだ」
テコでも動かん、動かんぞ。
狩りにいくんだ、今日は朝から夜まで狩りをするんだ。
ちなみに蛇足になるが最近座禅組んだままVRギアつけてやってる。
仮想世界は精神世界だよな、って意味で、鍛錬ついで。
そのうち水張った池に打ち込んだ杭の上に立ってやりそうな気がしないでもない。
「まったくもう出不精ですねえ! あの小屋を私たちで豪華にしてやりましょう! ラパトーラさん!」
むしろ王都の外に出るんだけど。
言葉返すのもめんどくさい。
「そうね。とりあえず昨日の依頼で結構お金も入ったし、内装リフォームしましょ!」
「ハーイ!」
そう言って、二人は王都の繁華街へと向かって行った。
まあなんだ、仲良くやってて何よりかな。
「さてと……とりあえずどうするか」
契約モンスターたちを引き連れて、王都のフィールドをもっと奥まで探索するのもよし。
冒険者ギルドが、意外と狩場系の情報が多く、登録していればある程度の情報閲覧が無料でできるので、ダンジョンの情報を集めて潜りに行くのもよし。
南へ引き返して、山から奥とかフィールドのさらに奥、もしくは公式の移動手段を用いて他の都市をテレポートの登録がてらに見に行ってみるのもいいかもな。
あ、でもせっかく王都に身を置いてるし、しばらくこっちで……なんて思っていたら、
「あれ、ローレントじゃね?」
「きゃー! 動画で見たことある!」
「意外と身長高いね! きゃー!」
「うおー! 有名プレイヤーに会えるとか、ラッキー!」
と、後ろから声をかけられた。
振り返ると、五人組のパーティのうち四人が俺を指差して見ていた。
人に指をさすなよな。
「なあ? あんた今一人か?」
「まあ……そうだけど」
口ひげをはやしたミディアムパーマのいかにもちゃらそうな男が近づいてくる。
馴れ馴れしいな、こいつ。
「え、まじ? だったらちょうどいいし俺らと狩らね?」
「は?」
マジでなんだこいつ。
チャラ男は俺の返事を待たずに後ろを振り返り叫ぶ。
「おーい! 今日の狩り、ローレントもはいっからー!」
「え、マジ!? さすがジュンヤくぅん!」
「ねえねえローレントぉ〜、あれやってよあれ、闘技大会でやってたやつ!」
「なにジュンヤ知り合いだったんかよー! 先に行っとけよー!」
「いやたった今知り合った? みたいな?」
「ぶはっ! だったそれお前、コミュ力の塊じゃねーかよ!」
「っしょ? わかるべ?」
「……いや、ちょっとみんな、さすがに迷惑じゃないかなって……」
一番奥にひっそりと立っていた男が苦笑いを浮かべながらテンションあげまくるほか四人を止める。
「ああ? えにしお前さ、誰に向かってもの言ってんの?」
「あ、いや、ジュンヤくんのことを否定するわけじゃないんだ! でもその、まだ返事も聞いてないうちに、勝手に話を進めるのはその……びっくりするっていうか」
ほう、これが俗にいううるさい大学生ノリかと思っていたが、一人だけまともなのがいるな。
「いやいや、お前今流れとノリでパーティ行く感じじゃん? な? なんでそこに水さすわけ」
「いや、その……」
エニシと呼ばれた青年はジュンヤというチャラ男に肩を組まれてたじろいでいる。
「マジエニシそれないわあー、まじないわー」
「狩り行く流れじゃん? マジKY、空気読んでよね?」
「ほんっと、もういいからなんか狩りに必要なアイテム買っといてよ〜」
おいおい、散々な言われようだなエニシくんとやら。
そんなエニシくんは「マジ、いい加減に、しろ、って」と言葉を区切る旅にジュンヤから腹パンを受けていた。
装備は鎧ではなく魔法職用のローブ系、もろにダメージ入りそうだな。
「……行くか」
絡むのも面倒だったし、パーティ内で下っ端みたいなことをしているやつには興味はなかった。
だから、踵を返してそそくさと王都を出ようと思ったら、肩口を掴まれた。
「ちょちょっと、待て待て待て」
ジュンヤだった。
「なんだ?」
「いやいや、これ一緒に組んで狩る流れっしょ? 頼むよ〜、別にレベリングとか手伝ってもらう必要はないけど、ちょっとめんどくさいクエストをエニシが受けちゃったもんだから人手が足らなそうなのよ〜! ね? いいっしょ? 手伝ってくれたらほら、オフのリア飲みとか奢るからさ! マヤとミキもあんたまんざらでもなさそうだし、ちょっとはほら、俺たちも貸してやっからさ〜」
……乱れてるな。
最近の大学生はこんなもんなのか?
いや、俺高卒で速攻海外行ったりして、大学通ったことなかったから知らないんだけど。
高校の時は、絡んでくる奴なんてトモガラくらいだったからな。
「な? な? ちょっとはいいだろ〜?」
肩口をグイグイと引っ張られる。
そろそろうざいな……、っていうか本当にうざいな。
「おい」
「ん?」
「────失せろ」
「……う……っか、は……」
すん頓狂な顔をするチャラ男に殺気を向けると、目を見開いてがくりと尻餅をついた。
「え……? ちょ、どうしたジュン!」
「はあ? ジュンヤくんどうしたの!?」
「きゃあ! ちょっとジュンヤくぅん!?」
「ああもう……いわんこっちゃない……」
エニシくんは尻餅ついて放心するチャラ男に群がるパーリーピーポーたちを見て額を抑えていた。
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「大丈夫ジュンヤくぅん?」
「あ、ああ……」
「ってか、やっぱさすがトッププレイヤーなだけあって、迫力が違うぜ!」
「ねー? なんか、本物って感じ!」
「………………チッ、納得いかねぇな」
「ん? どしたジュン?」
「いや、なんだよあれ、別にパーティくらいいいじゃんか、なあ?」
「そうよねー、ノリが悪くない? 流石にありゃ私無理だわー」
「くそ、何がトッププレイヤーだよ……ムカつくぜ……同じ大学通ってたら絶対いじめてたわ」
「まあまあジュン。たかがネトゲだろ? あんなのに関わってちゃきりねーよ」
「そうよね、きっと童貞かなんかでしょ? それにあの装備? 服? はっきり言ってコスプレオタクって感じー?」
「……これからのクエスト一旦やめて、あいつ追おうぜ? 先回りして獲物横取りしてどっちが上か分からせてやんべ? な? せっかく誘ってやったのに断って来たのはそっちだしな?」
「なにそれぇ! ジュンヤさっすがー! 超面白そうー!」
「ハハッ、ジュンまじ悪どいなー、でもそんなジュンだからこそ退屈しねぇや!」
「え? やっちゃう? まじやっちゃうの? それでパシリとかにできたら楽よねー」
「……ああもう……なんでこういうことになるんだろ……」
「んだよ、エニシ。元を正せばテメェが邪魔しなかったら流れて狩り行けてあわよくばなんかレアなアイテムとか取れたかもしんねーじゃん? テメェが邪魔すっからだろ?」
「い、いや……そういうことじゃなくて……えっと、その……ごめん」
「チッ、テメェに謝られても意味ねぇよ! とりあえずクエスト断ってこい!」
「え……う、うん……その、みんなで違約金の方……割りk」
「はあ? 何言ってんのエニシ? ウチらが払わないといけないわけ?」
「それはないわー、ないわーまじで、エニシが勝手に受けたんじゃん?」
「ああ、はい……わかった……」
「さっさといけよおら!!!」
「……何やらお困りのようですね?」
「あん? 誰だよ?」
「ああ、怪しいものではなく、こういうギルドを運営してるものなんですけど……」
「………………ふーん、面白そうじゃん? ちょっと詳しく聞かせてみ?」
次回から狩り回です。
でもなんか、一悶着ありそうですね……。
出してみたいかませ犬がいっぱいいますので、ローレントのイライラにかこつけて出しちゃ、潰され、出しちゃ、潰されをやって見たいとも思っています。笑




