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 ログインした。

 昨日はログアウトの時間まで、王都周辺の森で魔物を狩りに狩ってみたのだがレベルは上がらなかった。

 王都周辺は人も多いから魔物達も狩り尽くされていて、強い個体は生まれないし数もそこまで多くないようだ。


 狩場としては、南は本当に優秀だと感じる。

 先に進んだ街には相応の強さを持った魔物がいるのは間違いなんだな。

 人の手があまり加わっていない未踏域。

 やはり強いヤツはそこにいる、そうしみじみ思った。


「で、なんでお前らここにいるの?」


「え?」


「はい?」


 スティーブン宅の間借りする部屋でログインし、とりあえずひたすら森の奥を目指すことにして小屋への転移門を潜ると、ツクヨイとラパトーラがいた。

 ツクヨイはテーブルの上で「むむむむ……」と彼女の日課である魔石やら魔結晶やらの錬金を行い、ラパトーラは「フンフンフン」と鼻歌混じりで部屋の模様替えを勝手にしている。


「出て行け」


 プライベートもへったくれもなかった。


「いやいや、私は普通にお師匠様から間借りしてる部屋でログインしてここにきただけですし、正当性はあります!」


「……まあそうか」


「いよっし!」


 ガッツポーズを取るツクヨイは一旦おいといて。


「家の面倒を見るとは一言も言ってないぞ、ラパトーラ」


「え……? 言ったわよ……?」


「え? まじ?」


 いや、言ってねえ。

 昨日を振り返っても一言も言ってなかった。

 むしろ俺は嫌がったはずだ。


「言ってない、出て行け」


「チッ」


 舌打ちされた。

 なんだこいつ。


「でもローレント。たまたまわかりにくいようにスティーブンさんの空間系の結界スキルが貼ってあったから今まで誰もここを使ってなかったと思うんだけど……いつか発見されれば、休憩所として我が物顔でここを占拠する奴が現れなくもないのよ?」


「その第一号はお前だな」


「そうね。でもこうして誰かが住んでるって形跡があると、それだけで他の人は使いにくくなるわね。いわば私が部屋番やって、盗みとか占拠とか、そんな狼藉者を追い返す役割をするってこと!」


「……」


 華麗にスルーされた。

 くそ、そういうことなら連れてこなきゃよかった。

 王都からこの森を通る冒険者はそこそこいる。

 そんな最中、誰にも荒らされずに残っているなんて、おかしいと思ったんだ。


 単純に何もないから価値がないと思っていたんだが、そういうことではない。

 誰かに案内されるか、結界を素通りできるようなやつじゃない限りここにたどり着けなかったんだな。


 ……クソが。

 そもそも、この小屋には価値があるものは置いてないし、別に占拠されたとしても転移門使えるのは許可された弟子の俺とツクヨイくらいだ。


 そしてたった今、この部屋に価値のあるものがちょこちょこ運ばれてきている。

 ラパトーラ、俺がログアウトしてから速攻で引っ越しの荷物をまとめてきていたようだ。

 ……行動が早い、早すぎる。


「出て行け」


「いやよ! 出て行けって言われても絶対出ていかないんだから!」


 強情かよ。

 ここはもう俺と契約モンスター達の憩いの場なんだ。

 稽古の場なんだ。

 なんのためにミツバシに巻藁作ってもらって立てたと思ってるんだ。

 ちなみに、テンバータウンの空き地に巻藁立てようとしたら普通に変なものを立てるなとおばちゃんに怒られた。


 あのおばちゃん元気かな?

 ん……そこで思い出したんだが、なんか忘れてる気がする。

 なんだっけな、なんだっけな。


「わぁ! この椅子無駄に豪華ですね!」


「そうでしょ! あいつに屋敷奪われる前に、なんとかお気に入りの家財だけは確保してたのよね!」


「あいつ……? そういえば、ラパトーラさんとローレントさんってどこで知り合ったんですか?」


「ああ……それがね……私はあいつに財産の全てを奪われたの……」


「ええ!? ロ、ローレントさん、それ普通にレッドネームものですよ!?」


 何かを思い出しかけていたところで、ツクヨイにぐわんぐわんと揺さぶられて思考が吹っ飛んだ。

 何か大事な要件だったはずなのに、記憶の彼方に飛んでいく。


「せからしいな!」


「ひっ」


 ……いかん、柄にもなくイライラを声に出してしまった。

 青い顔して怯えるツクヨイ。


「え、あ……すまん。で、なんだ?」


「もおおお! いきなり怒らないでくださいよぉ! ふぐう!!」


「泣くなよ……」


「だってぇ! だってぇ!! ぬぐうう!!」


「悪かったって」


 妹弟子という立場はいわば身内みたいなもんである。

 だから、ついついイライラを表面に出してしまったのだ。

 最近いろいろあったし、胸の中のわだかまりが完全に消え去ったかといえばそうではない。

 どちらかというと、やられた恨みは最後まで心に残しておくタイプだからな。

 ってかやばい鳴き方だな……。


「妹弟子にも当たり散らして……やっぱり人の心がないのね……よしよし」


「うえええん……ラパトーラさんんん!!」


 ラパトーラの胸に飛び込むツクヨイ。

 そしてラパトーラは俺の方を向いて意味深にニヤリと笑っていた。

 なんだよ、俺が何したってんだよ。


「また私から家を奪うっていうの!?」


「兄弟子あるまじきですね。師匠に言いつけてやりますです!」


「……もう好きにしろ」


 すごくどうでもいいことで泣きつかれると、もうなんでもいいやって気持ちになった。

 勝手に居座ればいいんだよ。

 ああ、せっかくのゆっくり稽古空間が……。


「「イエーイ!!」」


 許可すると、ツクヨイとラパトーラはハイタッチ。

 昨日はあんなにいがみ合ってたっていうか、緊迫した状態でのファーストコンタクトなのに。


 女の友情ってよくわからないなあ。

 ……戦いを通して絆を深める、ってことなのだろうか?


「ってことで今日家具買いに行きましょう!」


「うおおお! ショッピングいいですねいいですね!」


 なんだか盛り上がる二人を前にして、ため息をつく。

 俺にはローヴォしかいないよ、永遠の相棒だよ。

 と、思ってさっきまで俺の足元に居たローヴォを撫でようとすると、


「わうわう」


 ツクヨイとラパトーラの方にいた。

 ラパトーラが隠し持っていたという上質な毛布をおさがりにもらって、嬉しそうに包まって感触を確かめている。


 籠絡されたか、駄犬め!!!!








怒らせたのはツクヨイでした。(結構リアルな感じに)

ちなみにローレントは九州の小さな街に住んでいます。

でも方言的には……九州の言葉ではないかもしれません。

ちなみに「せからしいな」で「うるせぇ●すぞ」です。(爆)

※せからしか、せからしい。ですが、方言を使う地元に10年以上住んでて使ってたので、とりあえずこの言葉遣いはあってます(笑


他に集中できるように書き溜め進めてますので、毎日更新はしばらく揺るぎませんのでありからず。

(事故とか病気がない限り)




最後にGSO2巻好評発売中です!

ぜひ、試し読みも一読していただけたらと思いますー。


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