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「良い加減にしろ」


「ひでぶ!」


「いったぁああ!!!」


 このままだとラパトーラとツクヨイが決闘でも始めそうな勢いだったので、げんこつして黙らせた。


「ほおおおおおおうううう!! ほおおおお!!!」


「ああああん!!! なんで私まで殴るのよ!」


 思いっきり痛がるツクヨイとラパトーラ。

 ラパトーラはまだ女らしくもあるが、ツクヨイは本当に近所のガキみたいに痛がって面白いな。


「喧嘩両成敗だ」


 お前らが騒がしくするおかげで、冒険者ギルド内で変に目立っている。

 さっきからギルド報酬を得たラパトーラに怪しげな視線を送っている奴らもいるし、視線が集中しすぎて紛れて隠れられるのも面倒だったからな。

 まあ、普通はこういう視線は上手く隠すのが常識だが、今視線を向けている手合いは隠そうともせず堂々と嫌な視線と殺気を向けているので、紛れられてもすぐにわかると思うけど。


「毎度毎度本当に容赦がないですね。このバカ兄弟子!」


「騒ぐからだ」


「ふぬぐううう!」


 涙目になって俺の胸をぽかぽかと叩いて怒るツクヨイ。

 まったく、大人しくしていればちゃんと説明したものの、説明する暇もなく喧嘩に入りそうな雰囲気を醸し出していれば、そりゃ実力行使である。


「まあ、確かに大人気なかったわね。チビって言ったことは謝るわよ。悪かったわ」


「ぐぬ、そう簡単に謝られるとなんだかげんこつされ損っていうかなんていうか……私もビッチって言ってすいませんでした」


 ラパトーラの大人な対応によって、とりあえず場の騒ぎは収まった。

 依然として視線が集まるのだが、そもそもルビー、ローヴォ、そして冒険者ギルドの入り口からぬっと顔を出してこちらを伺うノーチェ。

 いくらテイムモンスターとか契約モンスターとはいえど、これだけの数の魔物が揃っていたら、そりゃ人目も集まってさもありなんといったところだ。


 マジさもありなん。

 ノーチェのそばにはツクヨイのヤンヤンもいる。


「その……テイムモンスターをお連れになるのは良いのですが……側に連れていただきませんと……周りの方のご迷惑になりますので……」


「あ、すいません」


 ギルドの受付のお姉さんに、申し訳なさそうな表情をされながらご退室を促され、俺たちはそそくさと外に出たのであった。

 広くいろんな人が集まる王都では、テイムモンスターを連れた人も珍しくない。

 それ故、基本的に大型の魔物は移動時以外は専用の施設に預けておくのが習わしなのである。




===




 とりあえず、王都周辺にわずかに出現する魔物を狩りながら森を目指すことにした。

 今はひたすら魔物を狩りして、スキルレベルと自分のプレイヤーレベルをあげないといけない。

 闘技場へ向かい、対人戦をこなすという手もあったが、ランク圏外から這い上がって行くのはもう少し時間が取れてからだろうなと思っている。

 格下相手に俺が一人で戦ってもしょうがないからな……、経験値が契約モンスターとかコーサーとかトンスキオーネに吸われてるんだから、仕方がないのだ。


 手っ取り早いのはこうして集団で襲って来る魔物を、契約モンスターたちと蹴散らすのが良い。

 トンスキオーネやらコーサーやらを連れてマフィアを襲撃しても良いのだが、デブはニシトモと商売に躍起になっていうこと聞かないし、コーサーは……。


 コーサーは、姉御と慕っていたアンジェリックがそばからいなくなって、どこか抜け殻のようになっている。

 見かねたトンスキオーネが、適当に雑務を彼に振って忙しさで忘れさせようと企てているらしいのだが、それでも状況はまだ改善されないとのこと。


 ……アンジェリックか。

 結局、フレンドは切られたまま姿は見えない。

 でも、耳にした話だと、リアルでは普通に生活しているようだ。


 こういうゲームの世界の話って、リアルを持ち込むのはNGだよな。

 もし俺がリアルでアンジェリックの居場所を突き止めたとして、それでなんになるって話。

 アンジェリックの従者としてゲームをプレイしていたあいつらも、今は何も言ってこない。

 もし言って来るならば、再び介入することもやぶさかではないし、何よりジョバンニには相打ちデスペナ、そしてハザードとは結果的に引き分け。


 大きく対局を見れば、引き分けというよりこっちの惨敗だ。

 いつか必ずやりかえす、やり返すのだが……それよりも先に自分の戦力をしっかり蓄えておくことが重要だろう。


「……で、なんでついてくんの?」


 ノーチェに乗りながら後ろを振り返り、互いに睨み合いながら歩いて来るツクヨイとラパトーラに聞く。


「いいじゃないの、減るもんじゃなし」


 経験値が減る。


「ダメなんですか?」


 ……別にダメではないのだけども。


 ってか断る理由がないことを盾に意見をゴリ押すのはいかんだろ。

 時と場合を気分によって断ったって良いじゃん、って話だ。

 そしてもう一度言うが、経験値が減る。


「ってか、ツクヨイはなんで俺を探してたんだ?」


「はあ!? ちょっと外で散歩したら戻ってきてくださいっていいましたよね!?」


「む?」


 そうだったかな?

 そうだったかも。


「む、じゃないでしょうが!! このバカ兄弟子!! ったくもう、ハリスさんも話があると言っていたのに……」


「いや、追い出したのお前だろ」


「それは!!! …………ローレントさんが、私の分まで食べるから……食べやがるからですよ!!!」


「ええー」


 食べていいって言ったからもらっただけなのにな。

 まあ、おかげで腹一杯食べることに成功したんだけど。


「とりあえずその話は終わったことだ。ハリスがなんだって?」


「はあ……そうですね。とりあえず無事発見したことですし不問にしときます」


 頬を膨らませて、むーっと俺を睨んでいたツクヨイは、ため息をついて表情を元に戻すと言葉を続ける。

 ってか不問って、どこから目線なのだろうか。

 俺一応兄弟子なんだけど。


「ハリスさんの話は、闘技場のスカウトみたいな感じです。前の闘技大会を見ていたようで、ぜひマネジメントを担当させてほしいと言っていました」


「ほう」


 渡りに船である。


「マネジメントがついていますと、マッチングでも融通が利くみたいですよ? 一般応募だと、どんなに強くても担当がつくまで地味にコツコツ勝ち星を上げて行かなきゃ見たいですしね」


「ほうほう……ん?」


 なんだかこのツクヨイ、やけに闘技場を推して来るな。


「ツクヨイは、俺が闘技場に入り浸るのをもっと嫌がるかと思っていたんだが?」


「ギクリ」


 斜め上を向いて口笛を吹くツクヨイ。

 怪しすぎる、ってか怪しい。

 だが、ハリスがマネジメントについてくれるならば、圏外の雑魚達を一人一人倒してランキングに乗っかり、そこから徐々に上がっていくという工程をすっ飛ばすことができるからいいだろう。

 チビが何を企てているかは知らんが、とりあえず話には乗っかっておく。


「まあいい、ハリスにあったら喜んで担当してもらいたい、と伝えておいてくれ」


「はい!」


「……ん? ハリスって、もしかして十傑に惜しくも敗れたデュアルのマネジメントしてる期待の新星マネジメントのこと? な、なんでそこまで位が高いマネジメントを知ってるの!?」


 ラパトーラが話しに食いついていた。

 そういえば、闘技場ファンだったなこいつ。


「あれっ、そんなに有名な人なんです?」


「マネジメントもいろいろいるのよ? しかもデュアルだなんて、ずっと不動だった十傑にもうすぐ手がとどくって言われてる期待の超新星で私もグッズいっぱい持ってる! チケットも高い! バカ高いのよ!」


 ……こいつ助けるのやめようかな。

 お金ないの、絶対それが原因だろ。


 そもそも、こいつの冒険者ギルドのランク帯だとある程度の信頼は置かれているし、稼ごうと思えばいくらでも稼げるはずだ。

 パトリシアの元でどんな贅沢をしていたかは知らないけど、人間って一度生活水準とかを上げてしまうともう後には引き返せなくなって人生終わる人が多いから、多分そんな感じなのかもしれない。


 その点俺は、リアルではどこでも生きていける自信がある。

 死因は確実に食中毒しかありえないと、トモガラのお墨付きもあるのだ。

 不服だけどな、多分食中毒でも死ぬきがせん。


「へえー、ハリスさんって意外とやるんですねえ!」


「確か、闘技場は闘士の戦場でもあるんだけど、同じようにマネジメントの戦場でもあるのよねえ。ねえもし十傑戦とかが行われる機会があったら、チケット安く融通してもらえないかしら?」


「ふふふ、チケットですか? なんと私はハリスさん経由でマネジメント席で見ることができるのですよ!! ……多分、可能性の範囲で、おそらく」


「うそっ!? ずるいわね! ローレントの元又弟子ってことは、妹弟子であるあんたもまた繋がりを持つ又妹弟子みたいなよ! ねえ私もそこに呼んで! 呼んでちょうだい!」


「ええ〜、どうしよっかなぁ〜!」


 そんなやりとりをする二人である。

 ……ツクヨイは調子に乗ってニマニマしながらラパトーラにマウントを取り始めているが、しっかりハリスの許可は取れているのだろうか?

 できない約束をして、あとで泣きを見るのは自分かもしれんのにな……。


 まあ、俺には関係ない話だ。

 見る側ではなく、出る側になるんだから。


 そうと決まれば、できるだけレベル上げをしておきたい。

 同じマネジメント同士でデュアルと戦えるのかは知らないが、目標は十傑最初の壁である“断崖”だ。

 盾より本体の方が硬いか……それを乗り越えるべく、もっと職のレベルとスキルレベルを上げて攻撃力を上げておきたいところ。


「お前ら、話は後にして森に入るぞ」


 よし、狩りだ!

 ログアウトまでの空き時間全てを使って、王都近辺の森の魔物を狩り尽くすのだよ!










もう仲良くなってる。

次回、ローレントがキレます。

修羅の国から来た羅刹、キレます。


プレイレポートっていう程なんで、できるだけ日を飛ばした展開とかはしないように心がけています。

まあ、変に間延びしてしまうこともあるのですが(たくさん更新すると間延びする運命)、毎日更新ということで、ここはひとつ、ここはひとつ。


お願いできませんかね?

冗談です。




さてGSO2巻か発売されてもう直ぐで1ヶ月経とうとしてますね。

毎日更新は、まだまだ続きますよ!

今後とも何卒よろしくおねがいたします!でわでわ

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