-534-
「マナバースト」
「グォォォォッ!?」
スピードが乗る前に接近し、マナバーストでクォーツドレイクの動きを止める。
洞窟の広さ目一杯にも及ぶ体躯が厄介だな。
正面から押し返す他、クォーツドレイクの突進を防ぐ手立てがない。
「マジックエッジ!」
そして六尺棒を持って殴りかかり、硬い手応えとともに弾かれる。
すぐに牙と爪が襲い来るが空蹴を使って体を捩って躱す。
状況は、退けば相手の思う壺である。
定点位置を取りながら、相手の攻撃をかわして、俺の攻撃を叩き込んでいくのがいいだろう。
HPを見ると、地味にだが削れている。
貫通効果を持ってなかったら、真っ先に逃げるべき相手だよな。
土属性はただ硬い、たったそれだけ。
だが、それ故に強いのだ。
「グォォ!」
噛み付き攻撃をしながら、ガリガリと身を壁に擦り付けながら前進して来るクォーツドレイク。
俺は回避優先で攻撃を加えるために、六尺棒を口に咥えて四足歩行で壁を登る。
うーむ、後ろに引き返しながら戦っても、ここまで来るのにひたすら一本道だったから、できれば位置を入れ替えてさらに奥に進みながら戦いたい。
これだけ大きな魔物がいるんだから、奥にUターンできるほどの広い空間があるはずだ。
「うーん……」
隙間があればなんとか位置を変えれて、かつ後方から攻撃を叩き込めるのに、可能性として一番正しいクォーツドレイクの背中部分は、尖った水晶がびっしりしていた。
通れるかな?
ええいままよ。
この状態で戦うよりも体ねじ込んで後ろに回った方が勝率は高いだろう。
「ラパトーラ!」
「な、なによ! き、キモい動きしないでよ!」
動けないでただ呆然と俺の戦いを見ていたラパトーラに告げる。
キモい動きって四足歩行のことかな……。
確かにカサカサ動くからアレだとは思うけど、これ結構こう言う狭い場所では機動力あっていいんだけどなあ……。
「後ろに回って攻撃する。そうすれば、必然的にお前が正面で相対することになるから、自衛しっかりしろ!」
むしろ引きつけてる今のうちに逃げてくれればいい。
クォーツドレイクの気が俺に向いてる今なら、まだ安全だと言えるからな。
「……いやよ! 私だって戦うのよ!」
「でもお前囮になるとか言って、勝つこと諦めてただろ?」
「ッ!」
「まあ、非難するつもりじゃないけど、お前もお前で弟子失格だ」
「非難してるじゃない!」
「とりあえず自衛してろ、もしくは……ルビー」
テイムクリスタルからルビーを召喚する。
テイムクリスタル内でも、一応周りで何が起こっているのかがわかるらしく、ルビーは俺が何かを支持する前に、ラパトーラの元に向かっていった。
「な、なによこの魔物!?」
「クリムゾンコニーっていうクラス4のテイムモンスターだ」
本当は契約モンスター扱いになってるけど、それが通じるかわからんのでオーソドックスな表現を用いる。
「その辺の石ころくらいだったら一人で蹴散らせる強さと機動力持ってるから、護衛には十分だろう」
幾分、自由奔放な性格を持っているのがたまに傷。って感じだけどね。
ローヴォは、俺と初期から一緒にいただけ、黙ってそばにいて戦ってくれる。
ノーチェは誇り高い性格だが、きっちり俺のいうことを聞いてくれる。
だがルビーは、なんだろう……放置してたらどっか消えてる。
おそらく遊びに行ってるんだろうけど、テイムモンスターPKとかしないように気をつけて欲しい。
ありえないとは思うが……。。
「じゃあ、大人しくしてろよ」
喋りながらクォーツドレイクの攻撃を躱すのは割と骨が折れる作業なので、それだけ告げてそのまま天井を走って背中の隙間を通り抜けることにした。
「グォォァァッ!?」
まさか、通るのか?
とも言わんばかりの声を上げて身をよじるクォーツドレイク。
だが、図体がでか過ぎて切り返しができない。
それでも、背後をとらせないようにガリガリと周りの壁を壊しながら体を動かす。
背中に生えた鋭い水晶の破片が、俺の目の前を飛び交っていた。
「エナジーブラスト」
細かいものはまとめて薙ぎ払う。
石柱をアポートして襲いくる鋭い水晶の刃を防ぐ。
「ぐっ」
キャラメイクの時点で体格は180と大柄な部類だったから、針穴に糸を通すように体を入れ込んでも、背中や大腿部、肩などが水晶に触れて鋭い痛みを感じる。
ここで、体を反らされたりしたら、精肉工場のミンチみたいになってしまうな。
それだけや嫌なので、防衛に使っていた石柱を眼前にアポート。
隙間をこじ開け、そしてアスポート。
すぐに、懐から銛銃を取り出して射撃。
バツン、ガンッと石柱にめり込んで、そのまま糸を回収するためのトリガーを引く。
一回目のトリガーが射撃、そして二度目のトリガーが回収ってすっごく便利だね。
トリガーをカチカチ調整すれば、少しづつ糸を引くことも可能だぞ。
「ほ、本当に後ろに回っちゃった……」
俺はクォーツドレイクの背中を通り抜けて、奴の背面に回ることに成功したのである。
よし、あとはケツからしこたま攻撃浴びせるだけだ。
爪や顔はガッチリとした水晶やら石やらで覆われていた、だが生き物であるならばやわらかい部位は確実にあるのだ。
形状的に腹も洞窟に擦り付けて動くっぽいから、なかなか強固な皮膚を持っているとは思う。
だが、結局のところどんな生き物も食って出してって工程を取らなきゃいけない。
はい、私の狙いはクォーツドレイクのケツです。
「グォオオオオオ!!!」
尻尾をブンブンを振り回しているが構わず突撃。
むしろ、
「マナバースト」
振り下ろしにマナバーストを合わせてご開帳してやった。
そのまま六尺棒を両手に構えてドリルのような回転をくわえながら突き込む。
「グ、グオオオオオ!!!!」
「ついでにもうひと押し」
スペル・インパクトをしたら、六尺棒が見えなくなった。
やべぇ。
手を突っ込む。
少しガチガチしてるけど、まあ普通の生物って感じだ。
六尺棒、六尺棒……あった。
掴んで回収し、そのまま起き見上げとして手榴弾を手元にアポートして中に置いてきた。
そして、
「グ、グオオオオオオアアアアアアア!!!」
爆発した。
「な、なな、何が起こってるっていうの!? あの巨体の向こうで、いったい何が!?」
倒すくだりで、書き直そうかと思ったんですが、ローレントって魔物相手に熱いバトルとかやったことあるっけなあ……と思いこのままアップいたしました。
だいたい、外道邪動チックな戦い方結構多いですね。
対人だと、割と武術的な描写も書きやすかったりするんですが、きっと彼の中では、こういう動物の類にはこうした方が手っ取り早いだろう的な、ことになっているんでしょう……。
あとがき小話(読み飛ばしてもええでやんす)。
このあいだ、十割のお蕎麦を奥多摩で食べたんですが……、なんだかボソボソしていました。
ネットでは蕎麦つったら十割だろ!とか書かれていたんで、どんな味かと想像しておりましたが、拙僧うどん派なものでして……小麦粉少しは入ってた方がおいしいなあと……。
奥多摩の景色を見て、なんだろう、心が安らぐ気持ちにもなりながら。
ふと思ったのは、
田舎山奥ってなんでこんなに蕎麦屋が多いんだろう……?




