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「来なさいクォーツドレイク! 私の又弟子は殺させはしないわよ!」
「グオオオオオオ!!!!」
「こわっ! でも負けないんだから!」
なんか、残念な奴だな。
とりあえず、ダンジョンに連れて来た責任感とかその他諸々の感情で動いているようなので、悪い奴だとは思わないでおく。
同じように引っ掻き回す奴は多々いたが、ジョバンニやらケンドリックやらと見比べると、随分とましなようにも思えるしな。
「まあ待て。リフレクト」
選択したスキルはリフレクト。
最近マナバーストでも弾けない奴がちらほらでて来ているから、念には念を入れてのスキル選択である。
「グオオオオオオッ!?」
ガギンと弾き返されて、やや後退するクォーツドレイクは、背中に生えてる水晶みたいなものを伸ばしてスパイクのように扱い、強制的な仰け反り状態を耐える。
「え……? なに、いまの?」
「気にするな」
そのまま走ってラパトーラの前に出て、クォーツドレイクに向かってエナジーブラストを放つ。
クォーツドレイクの顔面に命中するが、さすがに耐えきるみたいだな。
【クォーツドレイク】Lv1
深い洞窟を好む亜竜種。クラス5。
鉱石や魔物を好んで食し、テリトリーに侵入した者は問答無用で殺す性質を持つ。
クラス5、ということは……格上か。
防御貫通効果を持っていても、レベルが高い敵になると攻撃力不足が苛まれるなあ。
相手が人ならば、問答無用で弱点を羅刹ノ刀で切り落とせるんだけど、魔物となればやはり俺のアドバンテージがなかなかいかしきれない。
それはだいぶ前から感じていたことでもある。
「気をつけて! クォーツドレイクは鉱脈喰いと呼ばれて忌み嫌われる魔物なの!」
「ん? 水晶と関わってるなら価値が高いと思ったんだけど?」
「確かに通り道に魔水晶ができるけど、クォーツドレイク自体には価値のある魔水晶を作る能力はないわね! クズ水晶ばかり作って、鉱脈資源を食い荒らすだけの迷惑ものだってのが、ギルドの認識よ!」
「ほう、ならば狩る方針でいいってことだな」
「だったら楽なんだけど、腐っても亜竜種だから、大きな問題になる前にギルドに報告して討伐隊を組む必要があるわよ! だから……私が、私が囮になるから!!」
「……いや、いい」
「え!?」
この世のものとは思えない表情をして愕然とするラパトーラ。
クォーツドレイクを前にして、結構緊迫した状況だと思うのだが、意外と余裕だな。
さすが四元素の魔法使いパトリシアの元弟子である。
「そもそも、俺がスティーブンの弟子だってことは知ってるだろ?」
「ええ」
「だったら、緊急離脱は専門分野だ」
スティーブンがその筋で有名なら、転移魔法を使えることくらい知っているだろうに。
そして俺も、スティーブンの弟子であると言うことは、彼の専売特許たるあの魔法スキルを使えるということも、周知だと思ったんだけど。
「そ、そんなの知ってたわよ! で、でも私と戦った時使ってなかったじゃない!」
「まだ覚えてなかったからだな」
レベル50くらいの時だったから、それから使わせてもらえるようになるまでにそこそこ時間がかかった。
もっとも、三次転職する前にお情けでスキル貰ってたんだけどね。
「な、なら……逃げるわよ! あなたのスキルなら、今からギルドに戻ってすぐに討伐隊を……」
そう捲し立てるラパトーラを手で制す。
「いや、いつでも戻れるならば、チャレンジする。お前ば見てていいぞ」
「はあ!?」
「この洞窟は金のなる木みたいなもんだ。みすみす他の奴らを呼ぶような真似はしない」
それに、魔物相手にでも単騎で勝てるようにならなくては。
クォーツドレイク、属性的に言えば見た所土属性か?
魔水晶の話を聞くと、どうにも他にも何か隠されていそうだが、とりあえず戦っておいて損はない。
やばくなったら大量の石柱を転移させて時間を稼ぎ、すぐに王都まで戻るだけなのである。
「いや、さすがにここは辺境の地じゃないから、所有権は王族が持ってるようなものだから、おいそれと私的利用はできないわよ。それにダンジョン系は資源確認やら諸々の業務をギルドが委託されてるようなもんだから、それこそ我が物顔で使うとギルドから嫌われるし……」
「ぐ」
冷静にそうつっこまれた。
どうやら魔物を飼い殺すとかはよくても、土地的な資源を個人利用するのはご法度らしい。
……まあ戦う理由が減っただけで、戦わない理由にはならん。
とりあえずクォーツドレイクは倒したら倒した奴がドロップアイテムを得られる権限は個人の物なんだから、討伐隊を組んで分け前分割するよりも、先に倒して金にするのだ!
「じゃ、行ってくる」
「ちょっと! わ、私も──」
「──邪魔」
NPCは生き返らない。
だが俺たちプレイヤーは死んでも生き返る。
正直クラス5の魔物とは、ギジドラとの一件で戦ったことはあるが、あの時は使役によってレベルにマイナス制限がかかっていた。
今回はそれがない、正真正銘のクラス5である。
勝てるかは、やってみないとわからん。
そうなれば、彼女の安全を俺は保証はできない。
かと言って逃げ帰るのも癪に触る。
そもそも囮だなんだと死に急ぐ奴は好きじゃない。
かわいそうだから面倒を見てやると言った。
でも戦いの最中はただ邪魔なだけだ。
「──引っ込んでろよ」
だから、殺気をぶつけて冷たくあしらうことにした。
「──ッ! ……何よ……それ……」
「怖くなったら先に逃げててもいいぞ、ここは俺一人でなんとかしとくから」
「グォオォォオオオオ!!」
ガラガラと洞窟の壁を削りながら突撃してくるクォーツドレイクに、俺は正面から攻撃を仕掛けた。
誤字修正などは、ちょいとお待ちお。
他の作品も書きためてたりしたら、時間が取れなくてですね……。
感想やメッセでいただいたものは、必ず修正いたします。
地味に1話から修正入れ始めていたりします。
がんばります、がんばりますので。
今後とも何卒よろしくお願いいたしますね。
ツクヨイ「次回、冷たくあしらわれたラパトーラは、涙を流しながら叫ぶ。
「力が、──欲しい!」と。
(……力が欲しいか)そして聞こえる魔王のささやき……。
次回、覚醒ラパトーラ、スーパー四属性魔法使い。
師匠を超えろ、そして、ええと、師匠を超えろ。
……でお送りしません。この物語に覚醒とかはないです。ネタ回はちまちまありやがりましたけど。正直スーパーサイ●人4のネタまた登場させるのは如何なものかと思っているらしいです。GSO2巻発売中!」




