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「ツブテイシ、そっちに13体。俺はゴロロロロンをなんとかする」
「わ、か……ってるわよ!」
ダンジョンを進めば進むほど、石の魔物たちが容赦無く襲ってくる。
ツブテイシ達なんか、もはや擬態せずに飛び跳ねて物量作戦だし。
そんな軍勢を前にして、ラパトーラは詠唱する。
「カルテット・エスカレーション!」
四属性魔法職のバフだな。
「──ストーンブレット!! から、の……スプレットッ!!」
そこから石の魔弾を放ち、そして拡散させて一気に滅殺にかかる。
だが、
「殺しきれてないぞ」
「やばっ」
「ったく……」
残ったツブテイシがラパトーラを狙って突撃する間に、空蹴にて割って入ってツブテイシをドッチボールの要領で掴んて他のツブテイシに投げて打つけて砕き殺す。
「ゴロロロローーーーォォォン!!」
「チッ」
まだゴロロロロンを倒しきってなかったんだよな。
輪止めも壊されてるし、面倒だ。
舌打ちとともに、空蹴で戻ってリフレクションの手札を切ろうと思ったが、その前に俺の横から濃くて青い色をした水属性の魔弾が連続して駆け抜ける。
「ウォーターブレット──、ラピッドッッ!」
「ゴロロロロ!?」
敵の動きが鈍った。
でかしたぞラパトーラ。
「最初からそれでどんどん打ち込んで一体一体を速攻で殺せよ」
「これ消耗激しのよ!」
殺しきれなかったらそれだけで本末転倒だと思うけどな。
きっちり確殺マージンは取って置いたほうがいい。
こういう多対一の戦闘の場合はな。
「スペル・インパクト」
裏当てで殺しきれないので、スペル・インパクトを用いて倒す。
エナジーブラストよりも消耗が激しいスキルではあるが、使い所だろう。
そうして俺はゴロロロロンを倒した。
「……だいぶ敵の数が増えてきたわねー」
「そうだな」
さすがダンジョン。
なかなかの効率、そして鉱石の獲得率だぞ。
ゴロロロロンは倒し方を気をつけて、核を攻撃して片付ければ魔結晶の元となる。
これが一番稼げるのだ。
たくさん出現して、金銭的価値の高さ。
抜群だ。
抜群にいい。
だが、
「それだけしか魔物が出ないのもつまらないな」
「そうね……本当に新しいダンジョン……それも自然迷宮ならば、そういう傾向にあるっぽいわよ。でも、ここまで同じ魔物が出てくるとなると……なんだか変ね。普通は系統は同じでももっと種類があるんだもの。もしかしたら、想像よりも深いダンジョンで、このあたりはまだ浅い部分なのかもしれないわ」
「そうか」
ならば、奥に行くしかないな。
イシマルあたりを連れて来れば、かなりの戦闘力になったはずだ。
石工補正が効いて、どんな魔物でもバカンバカンと破壊してくれるはず。
ああでも、それじゃあれか、ゴロロロロンの核が取れないか。
由々しき事態だな、それは。
「まあ、考えても仕方がないわね。奥に進む、ただそれだけよ。ローレント、とりあえずこの辺で休憩にしましょ!」
その辺の手頃な石に腰掛けていたラパトーラはアイテムボックスから食材やら調理用具を取り出しはじめた。
「腹が減ってはなんとやらだしな、その案には賛成」
「……言っとくけど、あんたの分はないわよ?」
「は?」
「ここに来るまでに散々食べたじゃないの!!」
「……うそだろ」
「こっちが嘘だろ、よ! なあに? あんたまだ食べる気なの!?」
「でも結構戦闘したし、腹は減る……」
「はぁー……しっかたないわねぇ、でも私もここまで深いダンジョンだって思ってなかったから食料もそれなりにしか持ってきてないわよ? それに石材系の魔物ばっかりで食材になりそうな素材はなかったんだから」
こんなことになるなら、買い込んでから来ればよかった。
今後は、ダンジョンに潜る時は食材を買い込んでこよう。
森とか草原だったら、食べれる物なんか狩れば自給自足できるからなあ。
「お?」
カサカサと音がしたので、掴むとムカデだった。
「……これも腹の足しになるか」
「ばっかじゃないの!? そんなの食べれるわけないでしょ! 捨ててきなさいキモい!」
「………………ちぇ」
虫は重要な蛋白源でもあるんだぞ。
本当に腹が減ったらご馳走にも思えて来るはずだ。
くそ、考えが変わった。
弟子入り志願してきたらこいつに山籠りさせて虫食わしてやる。
……あ、ツクヨイも山籠り志願してたし、食べさせるか。
「まったく……とんでもない上にさらにとんでもないわね!」
ラパトーラはそう呟きながら火属性耐性を持った【モエツブテ】を解体して得られるドロップアイテム、燃鉱石を使って調理を始めた。
モエツブテ、その他の通り熱い石ころである。
だが、他の石よりもなんだかコミカルな感じの魔物だった。
ダブルミーニングでモエなのだろうか。
さておき。
「塩分がたらん」
干し肉とか干し野菜とか、その他いろいろ持っていた食材をグツグツ煮込み始めるラパトーラの鍋に、拾った石を投げこんだ。
「ちょっと、変なもん投げ込まないでよ!!」
「それ、岩塩みたいな感じだぞ」
なんとなく匂いがそんな感じがして、なめてみたらちょっとしょっぱかった。
だから、持ち前の塩を使うよりもいいだろうと思って善意で投げ込んだのに。
「はあ!? そんなもん入れないでよ!! 汚い!」
なぜにこうも罵られなきゃいけないのか。
「しかもシオツブテっていう魔物よ! 確かに倒したら岩塩とれるけど、これ素材じゃなくて魔物! ま・も・の!」
「そうだったのか、知らなかった」
俺、魔物舐めてたのか。
腹壊さないかな。
シオツブテは、ほかのツブテたちと違って結構レアで動かない。
みたまんま本当に岩塩なのだ。
砕いて殺すと塩になる。
それもそのまんまだな。
「……ったく、倒して塩にするけど、あんた絶対調理しないでね」
「はい」
調理するな、厨房に立つな。
何度言われてきたものだろうか。
これは本格的に調理の修行もしなければいけないのだろうか。
「よしっ! 味は完璧ね! はいローレント、ご賞味しなさい。私特製の冒険家鍋よ!」
そう言って彼女から渡された料理は、案外家庭的な味だった。
サイゼやミアン、さらに東遷のような突き抜ける美味さではないが、なんとも心がホッとするような味である。
「どお? 美味しい?」
「うん、故郷の味って感じがする」
「にゃっはっは! そうよ、まさに私の故郷の田舎の味よ! 都会に出てきてしばらく経つけど……やっぱりこの味が忘れられないし、一番だって思うのよねえ……」
しみじみとするラパトーラを横目に。
俺は彼女が作って来れた鍋を味わった。
薬草とか入れたら、さらにHPとか傷の回復効果を持った料理になるんじゃないだろうか……なんて思いながら。
魔物なめてたとか、腹壊さないかとか、言ってますけど。
こやつ、戦闘中は平気で噛みちぎる。
GSO2巻、好評発売中です。
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