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【ゴロロロロン】Lv 20

転がる岩の魔物。クラス4。

狭い道を転がって轢き殺すのが好き。

最初は小さい石の【ゴロン】から始まった。




 洞窟を下っていると、ごろごろごろごろと、何かが転がってくる音がしてラパトーラの範囲鑑定に引っかかった。

 無論、対象が一つなので俺も鑑定でその転がってくる岩が魔物だと判別できた。

 これは罠ではなく魔物なのである。


 ゴロロロロン。

 クラスチェンジとともにでかくなり名前が増えていく魔物。


「既視感が、既視感がある!」


「ちょっと意味わかんないこと言ってないで逃げるわよ! 流石にあの規模は魔弾で砕けない!」


「……と、言っても逃げ道はないぞ?」


 こういう罠がある場所って、ちょうどいい場所に逃げ込めるスペースがある。

 だが、実際はそんなものはないのだ。


 もしこれが罠で、俺がその罠をお膳立てするとしたら……にげこめそうな穴は塞ぐ。

 セメントやら樹脂やらを流し込んできっちりさせるし、さらにいえば岩が転がりやすくする。


「それでも逃げ道に走るしかないでしょ!」


「なるほど」


 俺のローブを引っ張って走りだそうとするラパトーラだが、俺は不動明王のごとく微動だにしなかった。

 一歩とも動かないって意味じゃないけど。


「ちょっと!! 動きなさいよー!!!」


「だが不動尊は煩悩を打ち砕くぞ」


「はあ!?」


「──ゴロロロロロローーーーン!!!」


 なんだかよくわからん鳴き声を発しながら転がってくるゴロロロロンを前に、


「マナバースト」


 勢いを殺すためにマナバーストを呟いた。

 さらに、詠唱を継ぎ足し全てのバフを重ねがけしていく。


「ゴ、ゴロ……?」


 完全に勢いを止められたゴロロロロンは、いったい何がおこったとも言わんばかりの鳴き声を発する。

 なんとなく想像できるが、これからその想像以上のことが起こるぞ魔物。


「か、完全に勢いを止めた……? で、でもそいつは自立して転がれるのよ?」


「輪止めすればいいだろ」


 俺はアポートで適当な石杭を転移させてゴロロロロンと地面の接着面に突っ込んだ。

 勢いが強かったら壊されかねないが、勢いを殺したこの状況ならばそうやすやすと動けないだろう。


「ゴロ……」


「坂を登って勢いをつける気か? 逃がさんぞ?」


 そしてゼロ距離で、


「エナジーブラスト」


「わっ!」


 光の放射にラパトーラが眩しがって目をそらす。

 おい、目をそらすんじゃなくて、普通に水属性の魔弾を撃てよ。

 仮にも魔弾の二つ名があるなら、戦えよ。


「ゴ、ゴロオオオオオ──!!」


 ゼロ距離エナジーブラストの放射をいただいたゴロロロロンは、それでもクラス4でさらに土属性である耐久性をもってして、なんとか耐えきっているようだった。


 ゴロ、ゴロ……、と呻くような鳴き声をあげながら、なんとか逃れようと、もしくは攻撃のチャンスを探そうと必死に自分が転がってきた洞窟を登ろうとする。


「……これでも防御貫通持ってるから、一撃で仕留めれると思ったんだけどな」


 マナバーストによる上昇効果もある。

 ステータス的にいえば、どどんと300くらい増える。増えすぎ。

 それでも蹴散らせなかったこいつは腐ってもクラス4なのである。


「ゴロロロロンは耐久性で言えばかなりのものよ! 攻撃が転がって潰すことに振り切ってるから、その分身を固くするようにできてんの!」


「なるほど。倒し方とかはあるのか?」


「外殻削って中身の核っぽいのを破壊するのも手っ取り早いわね……でも一番いいのはさっきのスキルもう一発打つのがいいかも。浸透してダメージ与えてあるみたいだし」


「そうか」


 だったら中身を直接攻撃できる手段があればいいんだな。

 ちなみにエナジーブラストの放射は貫通はしていない。

 大量巻き込みは可能だが、放射の内部に入っている時だけで、かなり作りのいい盾があればその後ろに隠れることは一応可能である。


 そんな話は置いといて。


「裏当て」


 完全なる脱力した状態から、瞬時に正拳を打ち込んだ。

 空手の極意である。または透しとも言う。

 相手に外傷を負わせることに長けた空手であるのだが、この極意は外部に一切傷をつけずにその内部を破壊するという極意中の極意。


 瓦割りなどで、一番最後の一枚だけを割ったりできるのだが、俺の祖父は戸建てを挟んだ隣の瓦を割れる。

 俺も例によってそういうことは大いに可能。

 使いどころがあまりなかったし、今まで相対してきた魔物はまず弱点が内部なのかなんなのかわからなかった。


 中心に核みたいなのがあって、それが弱点。

 そして残りHPももう少しで狩りきれるならばやってみて損はないだろう。


「ゴ、ゴロッ」


 短い悲鳴をあげて、ゴロロロロンはボロボロと砕けていった。




【石材】

様々な場所で使われる石材。


【転々々々々石の核】

外殻を激しく損傷せずに倒した時のみ手に入る。

削ると大きな魔結晶が手に入るが、専門の削り師が必要になる。


【鉄鉱石】

凡庸性のある鉄を含んだ鉱石。


【黒鉄鉱石】

黒鉄を含んだ鉱石。


【骨鉱石】

肉食性の石系モンスターが内部で溜め込む鉱石。

単体では使えないが、組み合わせることで効果を発揮する。




 ……感じにすると転々々々々石となるのか。

 だとすると最初は転々石?


 ドロップアイテムはなかなか良さげなものだった。

 鉱石系をドロップする魔物はすごく実入りがでかい。

 鉄は広く売れ、黒鉄鉱石はさらに高い値打ちがつく。

 俺のせいで一度値崩れしてたけど。


 さらに骨鉱石とかいう由々しき名前の物。

 これはセメントとかに使えるんだっけな、詳しくは知らないけどガストンかイシマルに投げて反応をみてみよう。

 あとはイシマル、もしくはエアリル案件として、核の存在だ。


 依然として魔石系統のアイテムはグロウに次ぐ取引の対価アイテムでもある。

 いいぞ、このダンジョン、金稼ぎにもってこいじゃないか。


「……は? ……なにいまの?」


「ん?」


 ドロップアイテムを精査しながらほくそ笑んでいると、ラパトーラが何やら拍子抜けしたような顔をしていた。


「前から変なやつだって思ってたけど……なんで素手で倒せるのよ……」


「……お前もほとんど素手とか武器で相手したからわかるだろ、察してくれ」


「察してって……あんた魔法職でしょ!? おかしいわよ!」


「いいじゃないか、素手とか武器で戦う魔法職がいても」


 スペル・インパクトとか見せたら卒倒しそうな反応だな。

 一般的な魔法職として歩んできたNPCに戦い方を見せると、こんな反応をするのか。

 首切り一閃でギリギリの状況に追い込んだブレイムも、反応する暇はなかったとは言え、こんな心の状況だったのかな、なんて思う。


「……ねえ、それってあなたの師匠、無属性魔法使いを極めたスティーブン様が教えてるわけ?」


「……いや、そうでもない」


 あわよくばこいつ次の師匠に俺の師匠を選ぶつもりだろうか。

 過去の因縁からして「嫌に決まっとるじゃろうが」とか言われそうだから俺が断っておこう。


「もう二人弟子いるから、枠空いてないぞ」


「なっ、まだそこまで言ってないでしょ!」


「弟子入りする気マンマンだったのか……」


 うるさいのがピーピーするのはもう嫌なんだ。

 そして妹弟子の面倒だけで俺は精一杯なの。


 うーん……そういえば最近師匠と会ってないな、何してるんだろう。

 手ほどきという手ほどきをしてもらってないけど、そろそろなんか師弟イベントが起こってもいいはずである。


 よし、尋ねよう。

 暇ができたら尋ねよう。


 それより今は、


「この調子でこいつら狩り尽くすぞ」


「へ?」


「石材系の素材を落とす魔物は金銭的価値が高い。まだ誰も狩ってない状況ならば、先んじて狩り尽くして全て金銭に変える」


「えええー!?」


 アイテムボックスに入りきらないでかいものでも、俺が倉庫に送っちゃえばいいのだ。

 さあ、滅ぼそうダンジョン。

 誰かに取られるくらいならば、無理にでも籠って狩り尽くしてやるのだ。


 狩り尽くしちゃえば、安全だしな!








裏当て使わなくても防御貫通ダイレクトアタックできるので、ぶっちゃけ倒せます。(ここ、重要です)






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