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事情が変わったので詳しく話を聞いてみると。
ラパトーラの提案は、王都から出た先にある自然迷宮へ狩りに出て見ないか、というものだった。
自然迷宮、またの名をダンジョン。
乱闘イベントの時にみんなで行った、ピラミッド型と言っておきながら実は地下深くに伸びる例のアレ。
あの時は、中にモンスターやらなんやらは存在しない空間ではあった。
いわゆるお試し版というやつだ。
だが今回は、それも解禁された本物を楽しめる。
設定的には、洞窟などに魔素と呼ばれるものが多く溜まって、それが魔物を呼び込み強くするという。
これがラパトーラの言う自然迷宮というものだが、他にも、明らかに人為的な手が加えられた迷宮というのも、存在しているようだ。
あの時のピラミッドなんか、まさにそんな感じ。
「い、いきなり興味津々ね……」
俺の食いつきに対してやや後ずさるラパトーラ。
なんだこいつ、ここまで言っといて狩りはやっぱりやめるって言ってるのか?
そんなことはさせんぞ。
「ひっ!? ちょ、なんでいきなり腕掴むの変態!!」
「いや、やっぱ狩りやめるとか言うのかなっておもって」
「んなわけないでしょ!」
ひとしきり怒鳴ったラパトーラは、
「……ったく、調子狂うわねもう……」
そうぼやきながらラパトーラは王都の門へと向かう。
無論、俺も彼女のを後につづいて、ツクヨイもしくは俺の顔を知っている人物がいるかいないか、しっかり警戒しながら道を歩いた。
ちなみにガンスは魔弾を顔面に連続して浴びた結果、白目をむき出しにして倒れている。
「踏んだり蹴ったりだなこいつ……」
連れていた仲間たちも、ガンスの横暴にはほとほと困っていたようで、どうしようもないような表情を作りため息と愚痴を吐露しながら、カレーをぶちまけて伸びたガンスを運んで去って行った。
◇◇◇
王都から魔物の巣食う森へ。
スティーブンが転移できるようにしてくれている場所からもさらに歩いた場所にその自然迷宮は存在していた。
「ここが、最近になって新しく出たダンジョンよ? ちなみに、ギルドのクエストは私が先に受付終わらせておいたから、あんたは同行者という形で後から申請するわね?」
「ギルドの依頼ってこと?」
俺はあんまり利用してこなかったギルド。
こう言った依頼もしてるんだなあ。
ラパトーラがいうには、こうして新しくできた迷宮は規模の調査を行うためにあらかじめ高ランク帯の冒険者が依頼を受けて調査するというのだ。
「今回の依頼は、あくまで調査。でも、まあ新しいダンジョンならこれといって厄介なのもいないし、それに私を倒したあんたの腕なら、危険だと判断して奥にいるボスを倒してもいいと思うわよ。この私もいるし」
「ふむ」
「ちなみに、ランクは何?」
「ええと……」
なんだっけなあ、確かランクDだったかな……。
とりあえずランクCに上がるためには行商クエストで護衛をやらないといけない気がする。
ニシトモやトンスキオーネの行商護衛は、実際クエストの範疇なのだろうか。
ギルドに依頼を出したかどうかはしらん。
でも、多分出してないだろう。
ニシトモとトンスキオーネはつーかーで俺が護衛につける。
いちいちギルドに依頼を出して中抜きされるなんて、ニシトモはおろか、まずトンスキオーネが断固拒否するだろう。
ギルドカードを見ると、うん、やっぱりランクDだった。
「Dだけど」
「はあ!?」
Dだというと、偉く驚いた表情を作るラパトーラ。
「なんでDなの!? 内部調査はランクB以上じゃないと無理なのよ!?」
「……色々と事情があって」
だいたいギルドは好かんのだ。
だって、普通にニシトモが営むプレイヤーの経済網に素材流すだけで済むし。
ニシトモはいくつも自分の販路を持っているから、あえてクエストを受ける必要性といえば、専用エリアに入るためだけだったりする。
「もお……最悪……下位ランクを私が連れてきたってことで評価下がっちゃうじゃない……」
顔を抑えて大きなため息をつくラパトーラ。
そんなにランクが大事なのか?
「だったら一人でダンジョンに行ったってことにすればいい」
「……あんたはそれでいいの?」
「大丈夫だ。それに、ギルドのランクは信用しない」
まだこの目で見た闘技場のランカーや十傑の方が信用できる。
それにギルド嫌いだし。
「ナート・エスカレーション」「ナート・マジックアームズ」「マジックブースト」「魔装」
とりあえず戦えることの証明として、フルバフ状態にする。
「これでどう?」
「まあ、申し分ないわね……って、何よそのスキル……あんたもなんだかんだ成長してんのね……」
複数スキルを使用した俺を見て、ラパトーラは問題なしと納得したようだった。
もう少しスキルのレベルを上げて、次のスキル取得と、マックスボーナスを得て、いつかは闘技場に殴り込むぞ。
デュアルを下した十傑十番デソルのたてより硬い本体の意味。
それはスキルを重ねがけした上で引き伸ばされたステータスなのではないか、とさえも思う。
むしろ、あいつらはスキルのマックスポイントをステータスにでも振っているんじゃないだろうか。
一度戦って見ないとわからないな……ハリスあたりにマネジメントを頼んでみよう。
「そういえば、そういうお前こそ──」
「──ラパトーラ」
「……うん?」
「ラパトーラよ。属性を極めた師匠を持つ魔法使い同士、これからは名前で呼び合いましょ?」
「ああ、うん」
気を取り直して、
「ラパトーラこそ、前よりどれくらい強くなったか見せてもらうぞ」
ガンスを蹴散らした時はなかなか見事な魔弾だった。
早い風属性の魔弾攻撃からそれぞれの属性をぶつける。
これぞ、複数の属性を使う魔法職の真骨頂だな。
ぐぬ、思い出しただけでもハザードムカついて来た。
あいつ、五つ属性扱える節があったよな……?
ってか鑑定したら五属性魔法使いだった。
そんな職業聞いたことも見たこともない、あいつだけずるい。
「何イライラしてんの? ほら行くわよ。私はスクロール持ってるけど、あんたは持ってる?」
心の中にむしゃくしゃする気持ちを抱えながら歩いていると、どうやら自然迷宮と称されるダンジョンにたどり着いたようだ。
雪山の時のような洞穴である。
もしかして、あれもダンジョンだったのだろうか?
そんな疑問はさておいて、
「必要ない」
ラパトーラの問いにはそう返しておこう。
ローヴォの能力で暗闇は問題ない。
そもそも視界が悪くても音でなんとかなるからな。
「暗視持ち?」
「うん」
「だったらいいけど。じゃ、行くわよ? 気を引き締めて」
俺とラパトーラは新しくできたダンジョンへと侵入した。
さて、どんな魔物が待ち受けているのやら……。
強いの来い、来い。
雪山はまた特殊なエリアだったりします。
場所的には、南の山を超えて、レギオンコング達のいる場所をさらに超えた場所に位置します。
南の山脈の反対側だと思っていただければ。
いろんなモンスターの集落が存在し、生活している状況です。
レイドボス強襲イベントの時は強制的に従えられていた魔物軍ですが、オーク、オーガ、ゴブリン、その他様々な魔物が自然発生的に暴動を起こすこともあり得ます。
南の山はまたいずれNPCを巻き込んだ取り合い合戦になる予定。
あとがきこばなし
奥多摩の鍾乳洞に行って来ました。
大冒険でした。
なかなかすごかったです。
洞窟取材してきました、ということで。
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