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「てめぇ代われよ? 俺がそれ食うんだからよおーッ! 代金はてめぇでなー!!」


 なんと、俺が最後の客だと思ってそのままカレーをせしめようって魂胆か。

 肩を力任せに殴り飛ばされたので、力に逆らわず空中で一回転して着地する。

 側空転受身である。

 要するに空転受身の側転バージョン。


「お──? オワアアアッ!?」


 そのまま奴の腕を握って小手返し。

 仕返しだ。


「なっ、何しやがんだ!! ぶっ殺すぞ!!」


「そっちが先にして来ただろうに」


 すなわちこれは正当防衛なり。

 問答無用で叩きのめされないだけ、ありがたく思えよな。

 俺の腹を膨らませたステーキ屋とホットドッグ屋に感謝することだ。


「て、てめぇ……ぶっ殺──」


「いいから座れ」


 尻餅をついた状態からイライラしたガンスは立ち上がって俺を殴ろうとした。

 だが、するっと躱して、足、腰に一撃ずつ入れて強制的に席に座らせる。


「は? あ……あれ……?」


 秘技“黙って座って食べなさい拳”だ。

 関節部に素早い打撃を与えることで、椅子に座った状態を作り出す秘技。


「カレー屋、カレーを出せ」


「この状況でマジか? ってか……ガンスも下位とはいえ、一応圏外抜けたランカーだぜ……?」


「このガンス様を呼び捨てにしてんじゃねぇよ!」


「うるさい、黙って飯が来るのを待て」


 座ったガンスの頭を押さえてしっかり椅子に固定する。

 ガンスは「この、この」と言いながら立ち上がろうとするが、残念ながらこっそり魔装を唱えさせていただいた。

 いかにも力任せな近距離職っぽい出で立ちだが、この状況をひっくり返すならフルバフにしろ。

 した瞬間エナジーブラスト決める予定だ。


「……ぐぬぬぬぬぬぬ、こ、の、野郎……ッッ!! な、舐めやがって……ッッ!!」


「飯時の戦いは飯で行う。ちょうど今、カレー大食い大会をカレー屋が開くつもりだったからな、お前も参加しろ」


「くそがあああ!! いいぜ、てめぇランカーである俺様の食事量を舐めてんじゃねえぞ? これでも大食いのガンスって言われてんだ、後悔すんじゃねえぞ?」


 顔を真っ赤にしてそんな啖呵を切って来たのだが、本当なのだろうか?


「……いや、聞いたこともねえけど……そうなんじゃないの? こいつの中では」


「こいつ呼ばわりすんじゃねぇよ!!!」


「ひいっ!! なんでいちいち怒鳴るんだようっ!!」


 いや、今のはカレー屋の言い方が悪かったとも思うが……まあいい。

 ガンスは乗り気みたいなのでカレー大食いバトルだ。戦いだ。


「おいおい……あいつステーキとホットドッグ食ったばかりだろ?」


「まじだぜ、それであんな大男に大食いで勝てんのか?」


「うおおお、こりゃ見ものだぜ、ランカーとの大食いバトルだ!」


「よっしゃー! 俺はガンスに10000グロウ!」


「俺はガンスのイライラをうまくカレー屋に誘導したあの軍服兄ちゃんに50000グロウだ!」


「なら俺もあの兄ちゃんに!」


 周りにいた野次馬たちが集って賭けを始めた。

 ガンスが引き連れていた仲間たちも混ざってである。

 ガヤガヤとした空気が伝染し、それに伴いどんどん見物客が増えて来た。

 隣で座るガンスも、当初のイライラをすっかり忘れて上機嫌である。


「はーん? いいのかてめぇ、さっきまで飯食ってたんだってな?」


「なんだ?」


「ハンデくれてやろうか? お? ん?」


「いらん」


 短く言葉を返すと、ガンスは急に怒り出す。


「このガンス様がせっかく情けをかけてやってんのによお! てめぇごらぁ!」


 ……こういうタイプってなんでこうも身勝手にキレ散らかすのだろうか。

 戦う相手がハンデはいらんって言ってるわけなのに。


「クソ野郎、覚悟しろよ? もう手加減しねぇよおい」


「それでいい。本気でこい」


「ハッ! なら負けたらボコって全財産渡す。それでいいか? 文句は言わせねぇぞ? お互い本気でやるんならこれくらいの対価は必要だってんだからなあ?」


 こちらに顔を向けてニヤリと笑うガンス。

 汚い笑顔だ、受けて立とう。

 そのまま着々とカレーが目の前に準備されていき、戦いがスタートした。


「うおおおおおおおーーーーーーー!!!!」


 固唾を飲んで周りが見守る中、スタートの合図とともにガンスはカレーを一気にスプーンでかっこんで行く。


「う、むむむ!? う、うめえ!! なんだこれ、初めて食べたぜ、なんだこのうまさ!! いくらでもくえらぁっ!!」


「うむ、そうだな」


「軍服の兄ちゃん一瞬で10皿完食うううううう!!!!」


「────……は?」


 スプーンがガンスの右手からこぼれ、音を立てた。


「どうした? スプーンがないと食べれないぞ? まあ、飲んでもいいけどな」


「の、飲む!?」


 周りからそんな驚愕した声が上がる。


「冗談だ。飲む訳ないだろ米なんだし」


 正確にいえば、スプーンを高速で動かして口に運ぶ。

 ただそれだけだ。

 こうでもしないと、祖父じじいの好物だったカレーを食べれなかったんだよなあ。

 少しでも隙を見せると、俺の皿のカレーまで取られかねなかった。

 そんな、子供の頃を過ごしたのだ。


 もっとも、今はそんな面倒な食い方をしなくてもいい。

 じっくり味を堪能できるって、VRゲーム始まったなおい。


 あと、俺もそろそろ満腹が近い、そんな気がして来た。

 こっちの体だと消化スピードも遅いし、少しずつ腹に溜まっていく感覚がある。


 だが、今日は食い切ったりトップを取れば無料だ。

 いくら食べても懐が痛まない、痛まないのだ。


 だったら……、詰め込むだけ詰め込むのさ。


「うおおおおお!!! さらに加速させているううう!!!」


「あれ、もはや飲んでるよな。食ってるとは思うけど、飲んでるよな」


「飲んでる飲んでる」


「……どうするケーキ屋。カレーが終わったら次はお前の番だぞ」


「……どうすりゃいいんだよぉ……ホットドッグ屋ぁ……」


「だが、美味しそうに食べてるからカレー屋繁盛してそうだぞ。大食いバトルもそうだけど、触発されてカレーを書き込む奴が大勢出てるぜ?」


「食べてるところを見ると腹減るしなぁ……っていうかお前ら意外と料理人としてのスキル高いなおい。なんで接客して料理作りながら普通に会話してんだよ」


「おめーが話しかけるからだろ」


「ホットドッグ空中でジャグリングしながら言葉返さないで。普通にしてたらか俺も普通に話しかけちまったじゃねえか。大変なら料理と接客に集中してろよ」


「いや、問題ない」


「そっか……」


 劣勢に立たせられたガンスは、俺の真似をしてカレーを掻き込むがすぐにむせた。

 まったく、素人が生半可な真似をするからそうなるんだ。


「無駄にせずゆっくり食え。しっかり胃に収めてこその食事だぞ。ありがたく思え」


「……やってらんねぇ……やってらんねぇ!!!!!!!」


「む?」


「てめぇの方がぜんっぜんありがたく思ってねぇだろ! 冒涜してんだろ! 上から目線で言いやがって母ちゃんか!? くそが、腹一杯で動けねぇだろ? 今からてめぇの腹に収まったもん全部吐き出させてやんよ!!」


 腰から剣を引き抜いたガンスが斬りかかって来た。

 ランカーだけあって、なかなか強い踏み込み。

 だが甘い。


「……は、あ?」


 まるで理解できてないとばかりの表情をするガンス。


「ス、スプーンで受けた!?」


「すげぇ!!!!」








GSO2巻発売中定期。

次、久々にあの人登場定期。(たぶんみなさん忘れていると思います)





あとがき小話。

この間は書くの忘れていてすいません。


書こうと思っていた内容は……

この飽食の時代。

どうにもこうにも、加齢とともに食が細くなり、暴飲暴食、さらには一夜漬けというものができなくなってしまったなあ。

という、実にくだらない内容でした。


肉は好きなんですがね……。

もちろん魚も好きですし、野菜も好きです。

基本的にバナナとキウイ以外はなんでも好んで食べるんですが、何やらここ二、三ヶ月ほど、1日1〜2食で足りてしまう毎日です。


ありませんか?

食べて見たい欲、すなわち食欲はあるのに……。

実際目の前にすると、うーんという気持ち。

そんな時は、フードファイター系列の動画を見て満足しています。

これぞ、動画飯。

あ、ちなみに奥多摩の方向に足を向けて寝ています。




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