-511-※※※幕間・農地を荒らす大鷹5※※※
「──ひ、ひええええええ!!!」
こんな時こそ、俺の対空戦力であるルビーの出番なんだが……あいにくタイミングが悪いことに、トモガラと狩りに出かけている。
「仕方がない」
テレポートの出番である。
視認転移だ。
高速でミアンを連れ去るイーグルズ。
だが視界を遮るものがないから好条件だ。
「ローレンドさ!?」
「連れ戻しに行く」
ブリアンにそれだけ言うと、テレポートを使用した。
落下とともにちょうどイーグルズの前に来るように転移すると、そのまま全てのバフを施して行く。
「ナート・エスカレーション、ナート・マジックアームズ、マジックブースト、魔装」
ついでに鑑定だ!
【イーグルズ】Lv15
平原の空を悠々と舞う大鷹。クラス4。
力よりも速度を重視した大空のハンター。
レベルによっては音をも超える速さ。
レベル15のクラス4か。
ローヴォ相手でも短期で勝てるレベルではあるが、相手は猛禽類の頂点。
制空権もあるし、やや不利だろう。
空を統べるということは、それほど有利なことなわけだ。
「──!?」
さて、俺が目の前に現れたことで驚くイーグルズ。
だが急には止まれないようだ。
目の前にストレージから石柱をアポートする。
「ぶつかって落ちろ」
「ちょ、私はどうなるんです!?」
イーグルズに腰のあたりをがっつり掴まれたミアンが喚く。
「大丈夫だ」
「へっ──?」
石柱との衝突を避けるために、イーグルズは掴んでいたミアンを手放すことにしたようだ。
身一つになったイーグルズは、体をギュルンと錐揉み回転させて石柱を躱した。
やるじゃん。
「ピェエエエ!!!!」
怒りにまみれた鳴き声を上げる。
その前に、
「──ひ、わあああああああああああ!?」
解放されて高所から真っ逆さまに落ちるミアンを助けなければ。
石柱から飛び降りて、底を蹴り加速をつけてミアンの元へ向かう。
「ピェェェッ!!!」
「む? エナジーブラスト!」
イーグルズが高速で飛来して来た。
どうやらミアンを諦めてはいないらしい。
牽制のためにエナジーブラストを使用して、そのまま空蹴でミアンの元に急いだ。
「死ぬ! 死ぬ! 死ぬ!!!」
「落ち着け」
「わあああああああ!!! ……あ、あれ……ロ、ローレントさああああん!!」
めっちゃ泣いてる。
確かに、リアルな世界観を主体とするGSO、高所から落ちる感覚はガチもんに思えるからな。
俺だって何度かやられて、少しはひやっとしたよ。
「……お、お恥ずかしいところを見せてしまいました」
「大丈夫だ、慣れてる」
顔を赤くして目を伏せるミアンにそう返しておく。
俺の妹弟子なんて、怖いからしがみつくどころじゃなく、なんかもう顔とか顔から出たいろんな汁とは装備に擦り付けてくるから、それよりはマシだ。
「な、慣れてるんですか」
「うむ」
「ピェエエエ!!!」
「わあ!? ま、まだ追ってくる!?」
「大丈夫だ」
鋭い嘴が抉りこんでくる。
体格的に空中で突撃を受けたら俺とミアンが吹っ飛ばされるな。
「マナバースト」
「──!?」
怯むイーグルズ。
残念だが対空手段がゼロなわけない。
ローブを新調したので、雪山の時のように滑空はできないが、スキルを用いればやりようはある。
「これ」
「ロ、ロープ?」
「自分で体を固定してくれ」
「は、はい!」
お姫様抱っこしたまま戦えるのは漫画の世界だ。
そんな舐めプ状態で勝てるほどイーグルズは甘い相手ではない。
空中でミアンと体勢を入れ替えて、背中に自分で体を固定してもらう。
ツクヨイと比べて柔らかかった。
「ピィェェェル!!!」
「残念。そりゃ残像だ」
弾かれたイーグルズは、再び高度を高くとって空から大きく旋回して鋭い爪攻撃による強襲。
残像でかわすと、そのまま六尺棒を手元に転移して一閃。
「“六尺棒背負い弾き”」
うむ、刀の方が殺傷力はあるが、踏ん張りがきかないとろくに攻撃できない。
だがその点良く撓る六尺棒は空中でも使える。
背中に回して足をかけて、指パッチンみたいに溜めを作って十分に攻撃力を乗せられる。
こういった溜めを使う攻撃を、うちの流派では弾きと呼ぶ。
さらに、ついでにといってはなんだが、マジックエッジとスペル・インパクトもつけておいた。
威力も上乗せだな。
「ピギャッ!?」
脳天に命中。
イーグルズは白目をむいて昏倒し、そのまま落下していった。
「……あの、私背中にいるんですけど」
「え? ああ、うん。どうした? 窮屈か?」
「いやその、棒で攻撃した時、反動がもろ私の背中に来て痛かったです」
「……すまん。だが、勝利だ!」
「……なるほど、ツクヨイさんとか十六夜さん、十八豪さんは毎回こんな気持ちなんですね……」
「なにがだ」
「なんでもないです。っていうかローレントさん、空中まで助けに来てくれたのはありがたいんですけど、この後どうするんですか? 私たち、落ちてますよ?」
もう色々諦めましたって表情のミアンが、後ろから顔を覗かせて眼下に迫る平原を見ながら言う。
「大丈夫だ、問題ない」
しかし、空中に慣れるの早いな、なかなか戦闘の才能あると思う。
戦うウェイトレスをやってもいいんじゃないか?
なんて、そんなことを思いながら。
俺は石柱をアポート、着地、アポート、着地を繰り返して、水田の脇に待つブリアンの元へ向かった。
次で幕間終わり。
そして、掲示板回第二ラウンド(ガツント、レイドボス編)です。
毎回お付き合いいただきまして誠にありがとうございます。
そして書籍版GSOの特設ページにて、試し読みが掲載されました。
確認しましたところ、カラーの人物紹介がありまして、登場キャラクターが載っていたり、試し読み部分で挿絵がいくつか掲載されています。




