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-509-※※※幕間・農地を荒らす大鷹3※※※


「満腹だ」


「相変わらず、すごい量食べますよね……」


 大量の肉や野菜料理を平らげた俺とローヴォを見て、ミアンがややげっそりとした表情をしている。


「大食いのスキルなんかお持ちですか……?」


「いや、そんなことはない」


 最初の頃はなんだろう。

 飯らしい飯といえば硬い携帯食料だった気がする。

 堅パンだ、堅パン。

 バリバリやったり水と含んでふやかして食べいた気がする。


 それもこれも、プレイヤーバッシングのおかげでNPCの営むテンバータウンに元からあった料理屋が軒並みプレイヤーを受け付けなくなったからだな。

 おかげで調理専門のプレイヤーなんかは荒稼ぎしてたみたいだけど、今思えばそんなに食べなくても平気だったかも。


 いや、リアルではそこそこ量を食べるが、ゲームの世界ではそこまででもなかった。

 狩りやらなんやらでフィールドを走り回るようになって、いつの間にか食事量も現実の自分の量と大差なくなっていた節があるのだが……。


「レベルが上がると食べる量も増えるとか?」


「うーん、そんなことはないはずです。人によりけりですけど、狩りから帰って来たプレイヤーさん方と、NPCの皆さんは、割とガッツリ食べる方が多かったですね」


「なるほど、その日の気分によりけりってことかな」


「そうですね。料理をするプレイヤーにとってはいっぱい食べてくださる方は好きですよ。作りがいがあります」


「俺も美味しい飯を作ってくれるプレイヤーは好きだ」


 何気ない一言なのだが、ミアンはやや息を詰まらせた後、顔を二、三度降ってすぐに片付けに取り掛かった。

 なんにせよ、こうして料理が楽しめて且つ満腹感が味わえるって革新的だな。


 食えればなんでも一緒だろうにと、昔は思っていたけど。

 やっぱり真心込めて作られた料理は美味しい、魂を感じる。


 そんなミアンに敬意を評して、


「ごちそうさま」


「ワォンワォン」


 俺のごちそうさまに合わせてローヴォも前足を合わせる。

 ふふ、器用なやつだ。


「はーい、お粗末様でした! ちなみにこの農地の方に何しに来たんですか? てっきりローレントさんはテージシティで活動してると思ってました」


「ああ、ブリアンに」


 と、言いかけたところで、外から呼び声がかかる。


「ローレンドさー!」


 ブリアンの声だ。

 呼ばれたので外に出てみると、耕運機にまたがったブリアンがいた。

 俺があげたやつだな、無事にテージシティより届いていて何よりである。


「イーグルズの前に、ちょっくら案内したいところがあるんだべ! ささ、乗って乗って」


「この耕運機に?」


 俺がメトロポリス級の農耕都市で買って来て、ブリアンに渡した耕運機の魔道具は、手押しタイプと乗れるタイプがある。

 今、ブリアンが座って運転しているのがまさにその乗れるタイプなのだが……。


「どこにのれと」


 巨大な尻が座席からはみ出てるんだけど。

 そもそも耕運機は二人乗りじゃない。


「あらぁ、スペースがないか? おらの尻すっこしでっかいからしゃーないべ、ほれ」


「ほれと言われても、どこに……」


「肩にだべ」


 肩!?

 流石にこの歳になって肩車されるのはちょっとなあ。


「俺は歩きか馬に乗るよ」


 そう言ってテイムクリスタルからノーチェを出すが、ブリアンは、


「もともとローレンドさが買ってきてくれたやつだべさ! だからほれ、乗ってみ乗ってみ!」


 なぜか譲らなかった。

 まあ、乗せたい気持ちもわからんではない。

 俺だって船を作ったり、魔導エンジンを積んだ時は人に運転させて見たい気持ちもあった。

 その時いたイシマルに断固拒否されたけどな。


「ならば交換しよう」


「ブルッ!?」


 ノーチェがうろたえた。

 珍しいな。


「おお、立派なお馬さんだべ? いいだか?」


「無論だ」


「わあ〜! 実家じゃ牛にはよく乗ってさいたが、馬は乗ったことないだべさ〜」


 よっこらせっと言いながら、ブリアンがノーチェにまたがった。

 ローヴォはため息をつきながらトラクターにまたがる俺の膝元に座ってトラクターのハンドルに前足をかけてくいくいと動かしている。

 なんだローヴォ、割と興味津々だな。

 今度戦闘以外にも、船外機の運転方法でも教えてみようか。


「ブルッ!」


 ノーチェは一瞬ふらつきながらも、鼻から息を大きく吐き出して気合をいれるとすぐに持ち直した。

 しっかり立っている、やればできるじゃないかノーチェ。


「おお! ごめんなぁ? おら他の人よりちょっぴり重たいキャラメイクだかんな〜? でも、難なく支えきるったぁ、ローレンドさ、この黒いお馬さんはよーく足腰鍛えられてるだなあ!」


「当然だ」


 テンバーからテージ。

 テージからテンバー。

 何度往復したと思っている。


 テージシティの草原を走り、俺と狩りを共にしたノーチェは名馬の中でもさらに名馬だ。

 心の底から朗らかに褒めてくれるブリアンの言葉を聞いていると、こっちまで嬉しくなってくるな。


「おお、最近の殺伐としたプレイヤー間の争いとは全く無縁なカントリーちっくな光景ですね」


 片付けを終えて出てきたミアンが俺とブリアンの様子を見ながらそう評した。


「あれだべ、おらはよくわかんねぇけど。農地は農地でみんな平和にやってただよ。揉めてるのは一部のプレイヤーと面白半分で見てるプレイヤーだけで、他のみんなは気ままに自分のゲームやってるだ」


「なるほど」


 深いな、そして一理ある。

 今プレイヤーの活動拠点となりうる場所は、テンバータウン、第一拠点、ノークタウン、ケンドリック町、テージシティ。

 ノークタウンは、テンバータウンに比べて広い街。

 さらにテージシティはそのノークよりもさらに大きな都市だから、わりかしプレイヤーもばらけているのだろうか。


 俺みたいに、特殊なイベントが発生して他の地域にいるプレイヤーもなんだかんだいそうだし、まだまだ知らない街もたくさんありそうだ。

 明日ツクヨイと王都へ向かうが、色々と街並みを見てみるのもいいだろう。


「ブリアンさんの言う通りですね。ふふ、今は殺伐さなんて忘れて、このカントリーな雰囲気を楽しみましょう!」


 風車の音が響く中、俺はブリアンの案内に従って、彼女が案内したいと言った場所へ向かった。


「ちなみに案内した先は何があるんだ?」


「それは見てからのお楽しみだべ! ローレンドさ、きっと喜ぶだ!」


「なるほど、楽しみにしよう」


「私もなんだか気になりますね!」


 ミアンもウェイトレスの姿に麦わら帽子をかぶって歩いてくる。


「……店は?」


「ローレントさんがいなくなったらもう誰もこないみたいですし、休憩ってことにしてクローズにしてきちゃいました!」


 ぺろっと舌を出して笑うミアン。

 それでいいのか、バイトよ。








ここ最近いろんなプレイヤーが出てきてましたので、今回は登場プレイヤー少なめです。





あとがき小話


毎日毎日うっとおしいほど更新されます拙作を、いつも読んでいただけて、さらにブクマ評価感想をつけてくださる皆様に厚く御礼申し上げます。


頑張って更新していこうと思います!


書籍版GSO2巻のキャラデザなどにつきましては、許可が取れ次第順次活動報告などにあげさせていただきますので、しばしお待ちください><






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