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「魔銀だ魔銀だ! ただで配布とか良イベントじゃねぇか!!!」
「普通の魔銀装備なのかこれ? にしてはいつも使ってる装備より強くね?」
「でも魔法職向けの装備じゃないのか?」
「いいや、つけてるだけで魔法職並みに魔法スキル系の異常状態耐性つくっぽいぞ!」
「うおおおおお!!」
「っていうかスキルの名前教えろ変な笑い顔野郎!」
「むか。でもまあ、特別サービスに教えてあげます。──魔の閃光と書いて【イビルヴィオ】と言います」
「かっけー!!!!」
とか、そんあこんな盛り上がるこの場はもはやPK、一般関係なくなってしまっていた。
魔銀勢、魔人勢、みたいな感じに別れていて、もうとんでもないったらありゃしない。
「だがこれで、他のプレイヤーを守りながら戦う意味はなくなった」
攻撃に集中できるということだ。
「対マンなら勝つ自信100%しかありえねェ」
「ではそれぞれご武運を」
三下さんも、モナカも、意気揚々とした面持ちでそれぞれ魔人に切り掛かっていった。
さて、体感だと次の視認転移まであと30分程度かな。
まだまだ奥の手として使うにはこの使用待機時間がネックである。
ただの移動魔法スキルとしてならば、十分だ。
だが、戦いに使うとなると、ここぞという時を選んで温存しとかなきゃいけない。
まあいい。
やりようは他にもある。
「テメェが一番強いっぽいなあ! 俺様が相手してやるよ!」
魔閃を放ったスキンヘッドの魔人が黒いガントレットを装備して俺の前に立ちはだかる。
俺は右手の刀を投げつけると、左手に六尺棒を両手に構えて捻り突いた。
「ハッ」
ガントレットで受け止められた。
「その六尺棒、中々の威力じゃねぇ──」
だが、武器は六尺棒だけではない。
すぐに銛銃の引き金を引いて、射出する。
「──カッ!?」
ピストル型スタンガンのような形状の銛銃から射出された返し付きの切っ先をスレスレで避ける魔人。
中々素早い反射神経だが、よければ後ろにはジョバンニがいる。
「ハザードさん」
「……やれやれ」
杖で打ち返された。
やはり魔人をかいくぐったとしても、後ろに控えるハザードが邪魔だな。
っていうか、
「戦わないんじゃなったのか? 約束が違うぞ?」
「……火の粉は振り払うもんだろう?」
そうか、火の粉か。
だがただの火の粉じゃないぞ。
魔人もろとも飲み込んでやる。
「オラッ! 殴り殺してやる!」
「単細胞相手だとまだやりやすいな、マナバースト」
「うおッ!?」
トモガラの一撃の方が、こいつの一撃よりも早くそして重たい。
大柄な魔人を弾き飛ばして、前進する。
「まったく情けないわね」
「む」
グラマラスな体型の雌型の魔人が黒塗りのレイピアを持って割り込んでくる。
黒塗りのレイピアは、俺が昔つかっていた物よりも鋭そうだ。
「イイ男ってやっぱり下僕にして串刺しにするのがいいのよ、叩き潰すなんて下品──ねっ!」
速く鋭い。
だが、点で攻撃するレイピアを顔面に向けるのはご法度だ。
反射的にビビる素人ならば通用するが、冷静に見極めて首を振って容易に躱せる。
「邪魔」
「くっ!?」
六尺棒にマジックエッジを乗せて片腕を切り落とした。
狙いはあくまで、敵の本陣。
ジョバンニとハザードだ。
飛びのいた雌型の魔人を無視して、そのまま真っ直ぐ駆け抜けるが、
「ウォール」
地面から石の壁が行く手を阻む。
「オラァッ! よくもぶっ飛ばしやがったな!」
その石壁を拳で砕きながらスキンヘッドの魔人が再び殴りかかる。
空蹴で上に。
「今よ!」
どうやら魔人勢はモナカと三下さんの相手をしている二人を残して。
後の七人で俺を止めにかかるらしい。
こうして見ると、魔人にもいろんな奴がいるな。
ガントレットのスキンヘッドやレイピア持ったグラマラスの他に、長剣、斧、鞭、ナイフ、大盾、様々な武器を持った魔人がいる。
もちろん体格もそれぞれ。
……だが、
『──ッ!?』
障害にはなり得ない。
残像を使用し一気に7人の魔人を置き去りにしてジョバンニたちに接近する。
止めたかったら魔閃撃ってこいよ。
もしかしてエナジーブラストみたいにクールタイムあるのかな?
ぬるいぞ、俺だって撃てる。
「エナジーブラスト」
「くっ! 俺の後ろに回れ!」
大盾を抱えた魔人がエナジーブラストを遮る。
だが、頭を過ぎったカウンターやブロッキングは来ない。
「なんだ、盾もろくに扱えないのか……」
一旦置き去りにしてやっても良いが、着地からの空蹴で一度魔人たちに肉薄して、スペル・インパクトを込めた蹴りをお見舞いして弾き飛ばす。
「ぐはっ!?」
そしてその反動を利用して前進し、俺はようやくジョバンニ達の前へと躍り出た。
「撃てる奴は魔閃を撃て! 誰でも良い!」
「リフレクト」
「ォアアアアア!?」
さらに派手にぶっ飛ばされていく魔人達。
これで少しは邪魔されない時間を稼げるだろう。
「あの魔人連中を簡単にあしらうなんて……やっぱり人外ですね、あなた」
「余計なおしゃべりはしない……黙ってその首置いていけ」
「ククク、まあ怖いこと怖いこと」
殺気を込めて睨み付けると、ジョバンニはこの状況でもまだヘラヘラしていた。
いいや、とりあえず魔人が来る前に首を切り落とそう。
「助けてハザードさん」
「……いや、今日はもう本当に戦わんぞ。ここまでクエストを進めてしまえば誰が犠牲になったところでお前のプランは止まらんだろう?」
「ええ、その通りです」
「……だったらその身を供物がてらに献上したらいい。流石にお前を守ってローレントの追撃をかわしながら逃げるのは今は無理だからな。要人はあの魔人がすでに街へ連れいっているし……うむ、街で落ち合おうジョバンニ」
見切りをつけて浮かぶ杖に飛び乗ったハザード。
「逃がさん」
ストレージに置いている予備の銛銃を手元に引き寄せて狙いを定めるが、
「おっと、あなたが狙うのはあくまで私ですよね? ククク、あなたのお相手は私がしますよ」
守られて、逃げの一手をずっと続けていたはずのジェバンニが銛銃の射線に体を割り込ませた。
「チッ、ならばさっさと死ね」
「いいえ、できる限りのことはさせていただきます。大盤振る舞いです」
刀を振るうよりも先に、予めアイテムボックスから取り出していたのであろう小瓶の蓋を開けて飲み干した。
「どうせ死んだらアイテムボックスから全ロストですからね、ここで激しく私の体も木っ端微塵に全ロスト? ククク、それもイイかもしれませんね。言うことは言いましたし、そろそろ幕引きといきましょう」
「……巨大化か? 面倒だな」
ハザードを逃したことはでかいが、ようやくこのムカつく野郎を一対一の状況に引きずり出せたので良しとしよ………………む?
「なん、だ……?」
ジョバンニの体が巨大化したリアードドの時とは違って、いびつな形に膨張していく。
「巨大化って思いました? ククク、でもほとんどの人がこう言う場面では膨張して爆発するって思うみたいですよ?」
ジョバンニの身体からとんでもない熱量を持った閃光が漏れる。
「お互い一緒に死に戻りましょうか」
──────まじか
煮え切らない終わり方だとは思いますが、当然のごとく彼らは今後登場します。
そしてローレント、久々のデス。久々デス。
あと、そろそろ掲示板回です。
感想いただけました方を登場させたいと思っているんですが、そう言うのがダメな方はメッセでも感想でも活動報告のコメントでもよろしいので、お申しつけください。
本筋ばっかり追っていて、バレンタインにできなかった話も、そろそろ幕間話として書きます。
もちろん本編も更新しないといけないのですが、もうすぐ発売ということで。
また、1日2回更新を頑張って……みたいなぁって……




