-501-
『さあ、NPCもプレイヤーも一切合切巻き込んだPKイベントの最終局面だああああ!』
『楽しそうですねGMベータ』
『お祭りごとは楽しまないとね!』
『その意見には賛成します。対局の注目すべきところは魔人軍勢をプレイヤーがどう対応するかですね。第一拠点の方で起こった事件然り、魔人の対処法は一定ランク以上のスキルもしくは、魔銀装備となります』
「おいおいおい! なに悠長に実況してんだよ!」
「イベントってレベルじゃねーぞ!」
『でもイベントとして名をうっとかないと、裏で散々かき回されていたはずだよ? それに、第二弾アップデートが過ぎたら、イベント名目での告知が一切合切無くなるから、告知もぜーぶんプレイヤーとNPCにお任せして公式HPじゃなくて、こっちの大衆掲示板を利用してもらうことになるしね』
『GMベータ、それネタバレです』
『もうどっちにしろ一緒だよ? なんかPK陣営の人アプデの内容一部知ってるみたいだし、ここはそうだね……運営側は公的広報機関としていっそ旗揚げしちゃう? GMデルタ!』
『GMベータ、管理権限はそこまで許されてます?』
『僕が上に立ってプレイヤーとNPCみんなで情報収拾とか掲示すれば何の問題もないのさっ! GMデルタは僕の右腕として……ね?』
『拒否します』
『……おかたいねえ! まあ、とりあえずイベントってことでみんな戦えー! 出合え出合えー!』
うーん、何となく締まりが悪いのだが、殺伐とした雰囲気に飲まれるよりマシだろう。
ゲームだからと言って意気揚々と対人戦ができるほど、人の心は強くない。
こうした自分視点のフルダイブ型じゃなくとも、対人戦は対AI戦に比べてストレスが多い。
銃の出現によって、殺人を犯す時の心の強い抵抗が薄まったように、イベントだと盛り上げることで戦いに対する抵抗も弱まる。
そう考えると安いよな、心って。
武術はそんな心を鍛えるためのものでもあるんだな。
「クソがあああ! いきなり手足切り落としやがって!!!」
なんて、思いを馳せていると。
だるまにした魔人が、口からバッドトーキシックを吐き出した。
魔人の瘴気。
抵抗力が低いプレイヤーだと、イチコロの劇毒みたいなものを、
「魔装」
掛け直した魔装で消しとばした。
そして脳天に刀を突き刺して、エナジーブラストで消滅させる。
「あと九人か……」
俺が知る対処法は、魔銀による中和。
もしくは道場6段の称号スキルと同レベルのものを用いること。
他にも色々あるかもしれんが、身にまとうだけで通用するのですごく楽ちんだ。
「油断しすぎですよ魔人さん方、そこの一人ははぐれ魔人といえど、対処策があまりわかっていない時に魔人を一人倒した実績を持つ方です。心してかかってください」
魔装を見て、やや身構える魔人たちにジョバンニが後ろから指示を出す。
「二、三人残してあとは対処法を知らないプレイヤーを蹴散らす側に回ってください。彼を凌げば、他のプレイヤーに残りの魔人はキツイでしょうから」
痛いところついてくるな。
だが、今は一人じゃない。
「ローレント一人だけ? ハッ、舐められたもんだなァ! 魔人イベントがあってから、まともなプレイヤーは自分たちで魔銀装備を作って隠し持ってんのが定石なんだぜェ?」
なあ、と言わんばかりの表情で三下さんが立ち上がった生産組諸君を見る。
だが、モナカ以外は苦笑いしていた。
「……えっと、その……ごめんなさい持ってないです。装飾品は確かつけてたかもですけど、魔人の攻撃食らうたびに耐久度がガッツリ減って消えちゃうんですよね? ……外しちゃいました」
「アホじゃねーのォ」
ツクヨイは外して大事にアイテムボックスに入れてるみたい。
十六夜は?
「私はそうですね。一言で言えば持ってますけど、残弾十発と言えばいいでしょうか、うふふ?」
「うふふじゃねェ、防御に使うもんをなんで攻撃アイテムにしてんだよォ」
「ほら、基本的に私は回避盾みたいなモンなので、前線に出張らないですし、火力特化で」
まあなんというか、理にかなっていて十六夜らしいと言えばいいのだろうか。
散々呆れ顔でツッコミを入れた三下さんは、豪華な魔銀製の小盾を持っている。
防御に使えて、さらに攻撃にまで転用できる。
三下さん最強説。
「魔人全員でかかってこいやァ、じゃないと止められねェと思え」
「そうですね、いつだかの魔人さんはやや弱めでしたので、今回は少し強めの魔人さんでお願いします」
「わ、私はブラウさんたちの加勢に回りますね! 常闇の杖を使う大チャンスです! ぶらっくぷれいやぁ馳せ参じますよ! おらー!」
「ふふふ、アンジェリックさんを引き渡すことを条件に、情状酌量の余地だけ残しましょう。ふふふ、あくまで魔人さんたちだけで、PKは殲滅しますが、ふふふふふふ」
頼もしい。
実に頼もしい。
残りの魔人、9人を前にしてあまり負ける気がしなかった。
「うーん、これはあまり良い状況ではありませんね。魔人さん方、気を引き締めてかからないと、食われてしまいますよ」
ジョバンニの言葉に、魔人が鼻で笑って返す。
「無論、さっきやられたバカではない。雑魚が何人いたところで一緒だ」
「ふん、所詮奴はあまり瘴気の扱いに慣れてない下っ端よ。じゃあ、まずは第一陣で俺様がかます──魔閃」
真っ黒なナニカが、大柄の魔人の手から放たれた。
「……は?」
意気揚々とPKたちと戦おうとしていたプレイヤーが随分と気の抜けた声を発した。
まるで目の前のものが理解できないと言った風に。
確かに。
と、俺も思う。
俺はギリギリでかわしたが、その後ろにいた大量のプレイヤーたちが、一瞬で蒸発したからだ。
魔閃のカタカナ表記はまだ考えてません。
何かいい案がございましたら感想もしくは活動報告のどこかに書き殴っていただきましたら幸いに思います。
セロはダメです。
ええ、絶対に。




