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 彼の、ジョバンニの言い分は、


 “レッドネームというPKの枠組みを廃止したものにしろ”


 というものだった。

 それもこれも、次のアップデートでどうやらログイン拠点を追われたPKをブチ込める施設が建築されているからだというのだ。


 誰がどんな場所から情報をこいつに横流ししたのかは知らないが、裏ギルドに身をひそめる状況で手に入れたのだろう。

 盗賊ギルドともズブズブの関係性を築いているみたいで、そう考えるとプレイヤーを扱う上でレッドネーム廃止は闇の中にいる連中にはかなり良き隠れ蓑となるだろう。


 自分の身になって考えてみれば、マフィアNPCは一応敵対モンスター認定として倒したところでプレイヤー側には何にも痛手はない。

 ある意味、レッドネームプレイヤーと同じような扱いなのだ。

 せっかく裏方でも暮らせるようにニシトモ達とコツコツ裏を整えていたのに、水の泡だな。

 いや、別に面倒な事をしなくてもよくなるって利点があるのかもしれんね。


 話が逸れてしまったのだが、ジョバンニが言うには、今回のPK有利イベントは敵対NPCから仕組まれたものらしい。

 “とある”クエストを遂行していく内に、クリア条件がかなり悪くなったり、PKイベントのトリガーを引き当ててしまったりと面倒ごとが多かったらしいのだが……俗に言う一般プレイヤー側が、他の珍事にかまけて裏側を見ないでくれたため、いたって有利に進めることができたのだ、とのこと。


 他の珍事ってケンドリックが盗賊ギルドやプレイヤーキラーと組んでレイドボス横取りしに来たり。

 あとは俺が躍起になって取り掛かっていた対マフィア抗争とかそんなんか。


 よくわからんのだが、とにかく、


「生産や狩りにかまけて誰も奴らのことを気にしなかったのが大きなロスを生んだ原因ですよ」


 とククツクツ笑っていた。


「ヒーロー気取りもいっぱいいますが、面倒ごとは誰かがなんとかしてくれるって人も、同じようにたくさんいますねえ、クックク」


 もう誰も何も言い返さないというのに、ジョバンニはただ一人で喋り続けている。


「ふう……さてと、とりあえず反論が来るのはある程度想定していた訳ですし? ええ、まだまだ私から語らせていただきますよ、ククク?」


「……させると思うか?」


 ジョバンニの話を聞いて。

 もう面倒だ。と思った。


 奴の言い分もまあ、わかる。

 PKイベントの救済措置として、プレイヤーが活動できる場所を拡張したり、賞金制度にさらに監獄エリアを立ててレッドネームをそこにブチ込めるようにしたりと、確かに一般プレイヤーからPKは良い的となりうる。


「どうしてです? デスした時にアイテムボックスからの強奪式、ロスト式は無くしてもいいんですよ? 殺されても、別にお互い痛手は無くなりますし、そもそも廃止したからといって犯罪をおかしたプレイヤーがお咎めなしになるようなことは全くなく、私たちレッドネームの立場は全く変わりませんよ? そしてあなた達も」


「いや、そうじゃない」


 刀を正眼に構えたまま、しっかりジョバンニを見据える。

 こんなところで大見得切って演説されるのが面倒なのだ。


 何かを廃止して平等にしたから前と一緒だとしても。

 逃げ場を作られたらみんなマナー違反に走る。

 ただでさえ、割とPK人口って多いのに、面白半分が増えたら均衡が崩れかねない。


 あとは、ニシトモ達と築いた一人勝ち路線を削られるのが無性に癪に触る。

 武術以外に面白いことだったのに、なんてことをしてくれる。


 あ……これが俺の本音なのかな、って今思っちゃった。

 まあいいや、こいつらが面倒なのには変わりない。

 ごちゃごちゃ考えるよりも、考えるよりもだね。


「別にPKをまとめるとか、自由で平等とか、そんなもの……勝手にしろ」


「ほうほう、私は許されたのですか? まごうことなくトッププレイヤーのローレントさんに?」


 クツクツ笑っておちゃらけるジョバンニ。

 食えない奴だ。


「そんな訳ない。例えクエストでもなんでも一度敵対したらどっちかが消え去るまで争いは続く」


「それを回避するためにこうしてGMのお二方の前でご説明させていただいてるんですけどもねえ?」


「俺を敵に回して、それは無いってことだ」


「……だ、そうですよ。ハザードさん、なんとかしてくださいよ」


「……今日は戦わん。魔人達にやらせておけ」


「ハザード、俺に負けるのが怖いのか」


 ジョバンニがおしゃべりしている間も、ずっとどこ吹く風のような表情をしていたハザードを煽る。

 だが、奴はそれでも戦わない姿勢を貫いていた。


「……負けるか勝つかはお互い次第。まあ、次に戦う時は100%俺が勝つだろう」


「面白い、なら今がその次だ」


 刀を構えて一歩前に出ると、ジョバンニが手をかざし、俺の前に十人ほどの魔人達が立ちふさがった。


「まったく、お互い融通がきかない人ばっかりですね。まあ、そういう“人種”であるのはもとよりわかっていましたし、少しばかりもったいないですが魔人達のカードを私からも切らせてもらいましょうかね。……プランはまだまだ、始まったばっかりなんですから」


「さっきからプランだのどうのこうのうるさいな。自由と平等を掲げるならアンジェリックを解放してから物を言え、そうすれば少しは話に乗ってやる」


「ククク……彼女には少しやってもらいたいことがありますので、まだ解放はできませんね。でも、こちらのクエストが済めば、解放はしますよ? まあ、本人が戻るか戻らないかは、私にもわかりませんが」


「なら死ね、ここで殺す」


 そしてネタバレしてくれた監獄エリアとやらに、全員まとめて叩き込んでやる。


「はいはい、交渉決裂ならそれで良いです。その策も準備してありますから。一応言っておきますが優位性はこちらにあるということをわきまえてお話しした方がいいのでは……と私は思いますがね」


「しらん」


「はあ、まあいいです。どちらかが折れるまで戦いが続くというのなら……望むところでしょう。あなた方のお好きなように、戦って、そして果ててください」









ご感想、読んでます!

ストレスがたまりそうな展開ですが、安心してください。












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