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23時分の投稿です。(予約投稿)


「斬った」


 杖と羅刹では、釣り合いが取れるはずがない。

 ハザードの杖を断ち、そのまま刃先を切り返して首を獲りに行く。


「……斬られたところで気にすることもない」


「む?」


 魔法陣が浮かび上がる。

 首獲りが先か、それとも魔法陣が先か。


「速さは互角か」


 発動、なかなか早い。

 斬られた瞬間から発動する。

 そんな仕掛けが施してあったのだろうか。

 後ろに飛びのいたハザードと同じ様に、俺もとっさに距離を取る。


「互角……? 威力は俺の方が上だ」


「ッ!?」


 突風が起こる。

 風属性特有の斬撃効果を持った風が上から下に突き抜けて行く。


「うおおおお!?」


「きゃあああああ!?」


「こ、これはダウンバースト!?」


 突き抜けた突風は、下で戦っていたものたちを一般、PK関係なしに襲う。


「……ようはく付きまといが剥がれたか」


「チッ」


 遠くなって行くハザード。

 俺は懐から素早く銛銃を取り出すと、発砲した。


「グッ!?」


 ハザードの方に命中した。


「気が緩んでいたか? お前も下にこい」


 ハザードと俺の体格は互角。

 だが、落下の重力を味方につけていて、さらに不安定な細い杖の上に立つと言う条件。

 引っ張れば、いともたやすく落とせる。


「……杖!」


 ハザードは手を伸ばして杖を呼ぶ。

 呼ばれた杖はスススっとハザードの手元を目指す。


 あれも魔人の力を持った武器か。

 ならばデビルクリスタルは?

 いないな。


 いったいどう言うことかわからん。

 だがそんなことを考えている場合ではない。


「取らせん」


 銛銃から伸びるハントスパイダー製のワイヤーを引っ張り邪魔をする。


「……これは返しがついてるのか。良いアイテムだ。なかなか抜けないぞ」


 ハザードはそう言いながら、空中で自分の剣を短く持ち替え、肉ごと銛を抉り出した。

 躊躇ないな、今PK痛覚設定できないから激しく痛いのに。


 だが、それでももう遅い。

 杖は間に合わない。

 俺とハザードは仲良く揃って崩壊した闘技場のステージへと降り立った。


「浮かぶ杖は取らせない」


 刀を正眼に構え、着地したハザードに向き合う。

 ハザードはじっと俺を見据えながら、叫んだ。


「……ジョバンニ! まだか!」


 すると、闘技場ステージへの入り口から、ほっそりと痩せこけた白衣姿の男が姿を表す。

 こいつがジョバンニか。元凶か。

 ジョバンニはクツクツと笑いながらハザードの隣へ。


「まだ役者が揃ってないんですが……さすがのハザードさんでも、彼をいなしながらパンピーさんたちを狩るのは難しいですか?」


「……馬鹿言うな。先時代のトッププレイヤーだぞ、中途半端なことをしたら俺が食われかねない」


「おい、お前らさっきから先時代とかなんとか、いったいなんなんだ」


 このハザードも不思議な男である。

 実際に拳を合わせてみた感触は、戦いを楽しんでいると感じた。


 それなのに。

 ブラウとの交戦を見る限り、トッププレイヤーだとかそれ以外には羽虫を殺す様な殺意を簡単に向ける。

 何かしらのこだわりがあるのだろうか。


「ククク、まあいいでしょう。少し早いですが……」


「──ローレント! どうなってるの!」


 ジョバンニが何かを語ろうとした時。

 ちょうど観客席に生産組の連中が色々プレイヤーを従えて入ってきた。


「ノークタウンを任されている身だ! プレイヤーキラーは倒し、NPCを救出しろ!」


「ハッ!」


 その後ろにはケンドリックの騎士隊を率いるブランドがいる。

 ゾロゾロとした大所帯。

 もちろんその中には三下さん、モナカ、十六夜、ツクヨイ。

 戦闘に長けたプレイヤーもいる。


 三下さんとモナカがいればまず負けないだろう。

 これはこっちの勝ちだな。


 と、ある種の核心を得てジョバンニに視線を戻した時だった。


「ククク、クックク……クククククク」


 気持ち悪いくらいに表情を歪めて、ジョバンニが笑っていた。


「実にタイミングが──」


「うわっ、なにあいつきも!」


 そこに、レイラの十八番。

 歯に着せぬ物言いが炸裂。


「ぐっ」


「確かに、なんだかみた瞬間にゾワゾワゾワゾワってしたわね」


「え? エアリルも? やっぱ生まれ持ってのキモさよね」


 同じ様に歯に着せぬ者同士が集結し、攻撃。

 いや、口撃を行う。

 なんだろう、地味に普通の戦闘よりもダメージ与えてる?

 飄々として食えないジョバンニのイメージが崩壊して行く様に感じた。

 さすが言霊、精神にダイレクトでダメージを与える。


「……ハザードさん、やり返してください」


「……ええ?」


「ハザードさん」


「……貴様が気持ち悪いのは今に始まったとこじゃないだろう。受け入れろ」


 敵ながら天晴れだな、ハザード。

 ジョバンニは眉間にしわを寄せてプルプル震えながら「くそアマどもが」と呟くと、すぐに元のニタニタした表情に戻った。


「はあ、せっかくのセレモニーなのに台無しです。まあ、プランには影響はないのでスルーしておきましょう」


 そう独り言ちながら、ジョバンニは腕を繰る。

 すると、彼の足元に無数の影が生まれ、そこから肌が浅黒い連中が姿を現した。

 十六夜、モナカの表情が暗くなる。

 出てきた奴ら、全員が第一拠点に現れた魔人と同じ様な雰囲気を纏っていたからだ。


「ふう、長かったクエストもこれにて大詰めですね」


 はあ?

 なんだろうな、こいつの口調。

 めちゃくちゃ腹がたつんだが。


「今後に及んでクエスト? お前、今俺の間合いにいることを忘れるなよ」


「あなたこそ、ハザードさんは戦わないと言ったら戦わないので置いときますが……これだけの魔人を前にして、何ができると言うんですか……?」


「喋るな、弱い犬ほど良く吠える」


「はあ、どうして達人連中はこうも話が通じない人が多いんでしょうかね。達人というよりは、もはやそういう人種だからこそ、その域に至ったと言っても過言ではないですかね」


 刀を構えて黙って睨んでいると、ジョバンニはさらに言葉を続ける。


「もう、こちら側のノルマはほぼ達成いたしましたので、改めて宣言を行いにきたんですよ。そう、セレモニーです、セレモニー。記念すべきこの日、皆さん、一旦戦いは辞めにして……私の話を聞いてください、ね?」


 そう発するジョバンニから、不気味な凄みを感じだ。

 それは理解不能な何か。

 ゾクゾクとした感覚が、背筋をなぞる。





レイラ最強説。

多分ローレントの心も容易にへし折ることができる口、舌を持っています。






(あとがき小話)



一日で裏ギルドとの邂逅編をぜーんぶ終わらせるつもりだったんですけど。

……終わりませんでした(爆)


次終われ、次終われ。

と、思いながら書いていると、ぜーんぜんおわんない。


むしろ、終わっていた。

と、思えるくらいの感覚で書いて見るのがいいかもしれませんね。





と、いうわけで次の更新は明けの十五日、0時予定となっています。

ただいまの更新は十四回目。


ハッピーバレンタイン。

読んでいただいてます皆様に、素敵なバレンタインプレゼントをお届けできましたかね……?

長い一日をお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。

これで今年のクリスマスの免罪符はいただきましたので、次は多分来年のクリスマスにやるんではないでしょうか。(今年ではない)



追記、十五日0時更新は無理そうでした。




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