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「エアリル!!」


 浮かぶ杖に乗り、突如として目の前に現れたハザード。

 エアリルは、蛇に睨まれたカエルの様に動けないでいた。


「……盗るか」


 プレイヤーキラーは、倒した相手からアイテムを奪うことができる。

 詳しくは知らないが、格上があればあるほど。

 キルによってアイテムボックスからバラけるアイテムが増えるらしい。

 もっとも、プレイヤーキラーは倒されれば問答無用でアイテム全ロストだが。


「──うおおおお!!!」


 ブラウはすぐさまエアリルとハザードの間に体を割り込ませて剣を振る。


「……クラントップを率いる……トッププレイヤーか。興味ある」


「トッププレイヤー? 冗談だろ、俺は雇われ店長みたいなもんだよ!」


 剣戟。

 だが、トモガラを下したハザードの方が何枚も上手の様だ。

 俺の見立てとしても、普通に剣を扱えるみたい。


「ブレイブスラッシュ!」


 攻撃力を大幅に高めた剣での斬りつけスキル。

 スラッシュの二段階上位に位置付ける攻撃スキルだ。


「ジャベリン」


 ブラウの攻撃を防ぐ様に、地面から石の槍が出現。

 ガギッと音がしてブラウの剣は弾かれてしまった。


「……偽物か、なら死ね」


「させるわけないでしょ! ウィンドバースト!」


「……無駄だ」


「──え……」


 ハザードが身につけていた数本の杖。

 そのうち一本を取り出し、そこから魔法陣が展開。

 すると、エアリルを起点にハザードをぶっ飛ばす様に巻き上がった突風がたちまち消えてしまった。


 あれは、はるかに威力のある魔法攻撃による相殺だな。

 俺も昔ツクヨイのダークボールを殴って相殺しまくった記憶がある。


「……神聖なクエスト遂行の邪魔をする者は、……死ね」


 そう言って魔法陣を浮かべた杖を振り抜いた瞬間──、





「──させんよ」




 彼らの間に石柱をアスポートした。

 急に出現した石柱に、ハザードが飛び退く。

 俺は上から下に空蹴を使い。

 ハザードに急降下、そして着地する。

 ついでに一発殴ってやろうと思ったが、躱された。


「ロ、ローレントさん!!」


「遅いわよ!! ってか増援は!? 今生産組の主要メンツでこっちに向かってるってレイラから連絡があったんだけど!」


「すまん、俺が先に来た」


 後ろで尻餅をつく二人にそう言って、俺はハザードを睨みつける。

 そういえば、こいつにあったらまず聞きたいことがあったんだった。


「一つ聞いてもいいか?」


「……む? まあ、構わんぞ」


「トモガラの相手はどうだった?」


 そう尋ねると、ハザードは口元を少しだけ動かして笑いながら言葉を返す。


「……無論、楽しかった」


「そうか、なら俺から言うことはない──」


 それだけ言って、俺はハザードに羅刹ノ刀を振り抜いた。

 避けづらい胴を狙って一閃したのだが、かすっただけ。


「……先時代の覇者の剣戟、なかなか鋭いな。よけ損ねた」


 本気で意表をついて振り抜いたと言うのに“よけ損ねる”と表現するこいつは何者なのだろうか。


「別に覇者でも何でもない」


「……謙遜だな。とりあえず、貴様を……おっと」


 六尺棒と刀を構えていた俺と同じ様に。

 ハザードも杖と剣を構えるのだが、すぐに何かを思い出した様に構えを解いた。


「……残念ながら貴様と戦うとジョバンニに怒られる。だから戦わない」


 ……。


 俺は問答無用で斬りつけた。

 トモガラと戦って、俺とは戦わない。

 こいつ、舐めてるな。


「……いきなり斬りつけるとは、さすが魔王と呼ばれる奴だ」


「うるさい、お前らのせいで迷惑してるんだ。殺すぞ」


「……ふむ、勘違いしている様だが」


 そう言いながらハザードは俺の攻撃をひらひらと避けて浮かんだ杖の上によって高度を上げた。


「……貴様と俺が戦えば、周りに大きな被害が出て、さらに時間がかかる。そうすれば神聖なるクエストに支障を来たしかねない。だから戦わないのだ」


「へえ」


 なんだよそれ、まるで。

 俺とお前が戦ったら、自分が勝つとでも言いたいのだろうか。

 笑止。

 だったらとことん邪魔してやる。


「だったらとことん、戦ってもらうぞ」


「……断る」


「断るな」


 高度を取るハザードに、空蹴で肉薄する。

 それでも高い場所に移動して回避しようとするハザードに、さらに足元に石柱をアポートして追いすがる。


「……チッ、面倒だな。ウォール」


 火と水と土の壁。

 どう言う原理か知らないが、壁ごとぶち抜く。


「エナジーブラスト」


「……足りないか、防陣」


 威力特化の無属性。

 三属性の三重防壁を飲み込んでハザードを射程に取り込むが、魔法陣から生み出された風によって方向を逸らされた。


「魔法陣……陣縁か?」


「……正解だ」


 リミテッド版だったら四属性、そして二つ縛りだったよな。

 だが、俺が知るのはあくまでイベント報酬のもの。

 正規の手段で取得しているとするならば、その制限はないと思っておいていいだろう。


 俺の契約魔法も、ぶっちゃけかなり強い効果を持つ。

 ならば陣縁魔法も、相応の効果を持っているはずだ。


「逃げるな、戦え」


「……恐ろしいな。だが断る」


 浮遊する杖は高度限界があるのだろうか。

 一定の高さ以上、上昇しなくなっていた。

 ハザードは装備していた杖を持ち替え、魔法陣を生み出す。


「ジャベリン」


 魔法陣から岩が出現する。

 そしてその岩を起点として、石の槍が盛り上がり俺に向かう。

 さらにどこからか生み出された風、火、水の槍も襲う。


 俺は空蹴で跳躍し全てを躱すと、槍の上に立ち再び跳躍した。

 空中でもう一つ石柱をアポートすると、そのままハザードの頭上にアスポート。


「くっ」


「ようやく、苦肉の表情が顔に出たな」


 さらにアポートでいくつもの石柱を連続して出現させると。

 手元から全てをハザードの頭上に転移させた。

 奴を見据え跳躍し、降らせた石柱を飛び移りながら肉薄。


「追いついた。マジックエッジ」


 斬撃補正が入るスキルを使用し、刀を構える。


「──ここで断つ」


「……チッ、一撃だけ相手してやる」


 俺の刀と、ハザードの杖が交錯する。








本日、十二回更新を超えて。

十三回更新と至りました。





\祝砲/






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