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ローレント視点に戻ります。
『グルアアアアアアアア!!!』
凶暴化した巨人の頭にスペル・インパクトを込めた蹴りを放つ。
そのまま後ろに体勢を崩した巨人は、右手に持った巨大な大剣を横薙ぎに振るう。
「三下さん!」
「任せろ、おらウサギ!」
ルビーがすぐに三下さんの元に飛び、つれて飛来する剣の通り道に運ぶ。
カキンッ、と音がしてカウンターが決まる。
無理な体勢からのおお振りをそのまま返されたリアードドは、身を捩りながら倒れた。
『グルアアアア! コロス、コロスウウウ!!』
「気持ち悪いくらい埒が明かねェなァおい!」
「頭を殴って起き上がりを阻止してくれ」
「オーケェー! 寝てろダボォ!」
首を起こして立ち上がろうとするリアードドの顔面を盾で殴りつける。
レイドボスも炎剛を完封した時と同じように、ここまでくればあとは喉仏を切り裂くだけだ。
かなり耐久値も高く、巨大化しても意識があった時よりも素早い動き。
俺と三下さん、ローヴォとルビーでもそこそこ攻めあぐねた。
「羅刹」
『はぁい』
餌として上質かどうかはわからんが、かなり上位のレッドネームプレイヤー。
そこそこの品質はあるはずだ。
首元から──
『──グルゥゥァァアアアアア!!!!』
「往生際が悪ィなおい! フルカウルガード!」
「助かる」
両手両足で争うように、そして全身も震わせて魚の様に暴れるリアードドを、三下さんが全部弾き、そしてローヴォが腱を食いちぎり、ルビーが心臓あたりに再び跳躍蹴りをかましていた。
「よし、首元から喰らえ」
『ルゥゥゥアアアア!!!!』
リアードドも俺の攻撃を気にしてか、必死に抵抗しようとしたが遅い。
スパッと一閃、首と胴体をさようならララバイ。
「……ふう」
「思ったより時間かかっちまったなァ」
動かなくなったリアードドの体の上で、三下さんと一息ついていると、遠くからブルーノの足に捕まった十六夜の姿があった。
加勢に来てくれたのか。
だが、もう倒してしまったんだよな。
と思っていると。
彼女の口から驚愕の事実を聞かされる。
「さ、さささ、さささささっき!!」
「落ち着けよ……」
さ、しかわかんないだろ。
だが、十六夜は顔を真っ青にして焦っている。
「──トモガラさんが、ハザードという男に負けました!!」
「………………………………は?」
トモガラが?
言葉の意味を噛み砕くまでにえらく時間がかかってしまった。
いやいや、間違いかもしれん、もう一度聞いておくか。
「トモガラ、が……なんだって?」
「──うっ」
「ああ、すまん、もう一回言ってくれ」
真っ青だった顔をさらに濃い紫色に染める十六夜。
いかんな、殺気が漏れていた様だ。
「……おィ、本当かそれ?」
殺気立つ俺を制して、三下さんが前に出て尋ねる。
「は、はい、さっき闘技大会にいるガツントさんからみんなに連絡が入ったんですが、予選最終グループにて、カイトーさんがおっしゃっていた裏ギルドのメンバー三人のうち一人、一番謎だと言われていたハザードとトモガラさんが交戦……結果、トモガラさんの敗北です……」
十六夜は悲しそうな目をしながら説明してくれた。
予選グループは、確か百人規模のサバイバル戦。
それを無視した様に、ハザードは98人の他プレイヤーを蹴散らしトモガラに一対一の戦闘を仕掛け、闘技場のステージが崩壊するほどの戦いが巻き起こったという。
「そこまでは普通の予選かもしれないんですが、予選終了後、ハザードが周りにいた観客たちを殺し始めました。……おそらくですが、トモガラさんは気付いて、止めようとしたんでしょう」
「……チッ、リアードドはただの囮だったってことかァ」
「いえ一概にはなんともいえません。おそらくどっちでもよかったのでしょう、プランがどうとか言っていましたし、こっちがダメならあっち、と別の手段を幾重にも準備している。そんな予感がします」
「食えねェ野郎だな」
舌打ちしてリアードドの死体を蹴っ飛ばす三下さん。
リアードドは行動不能になってはいるがまだ生きている節があった。
だが、それも狂人化が治ると同時に体格も元に戻り、そのままバツンと弾けて死んだ。
……結局拘束もとけ、デスペナルティで帰還されただけだった。
まあいい。
それよりも、だ。
「状況はどうなってる」
「ええと、ガツントさん筆頭に、混乱するプレイヤーをまとめてなんとか抵抗を試みる。とそれだけで、こちらからいくらメッセージを飛ばしても、返信はありません」
「ってかよォ、予選中って枠組みなら運営側が何も手を出さないのはわかるが、流石にイベントを台無しにされてんだぜェ? 動かねェのかよ、ベータとデルタのGM二人はよォ」
「……おそらく沈黙したままでしょう。動いていれば強制執行があるはずです。ですが、今回は色々と不可解なことも多く、とりあえず考えを煮詰める方向でレッドネーム進入禁止エリアとして確立された、テンバー隣接の仮設プレイヤー拠点にみんな避難した方がいいと、レイラさんたちの間では……」
「いや、遅すぎる」
「え」
レイラたちの意向を説明する十六夜に言う。
「それだと、遅いんだ」
今まで散々ごてごてに回って来た。
俺たちが先手を取ったつもりでいても、それもさらに予測済みといった風に、ジョバンニたちはひらりと身をかわして先手を取っていた。
確信していいだろう。
多めに見積もっても、ジョバンニ、奴は思考が働く。
ニシトモ並み、いやそれ以上にずる賢い手口にたけた奴だ。
奴が中核。
そう、肝だ。
「今まで散々逃げて来たみたいだが、闘技場に姿を現している」
だったら、一度対策を考えるために戻るのは遅い。
こっちが相手のタイミングに合わせてかち合うのが手っ取り早かった。
「そもそも、こう言ったまごまごしたやり取りは苦手だ」
ローヴォとルビーを側に呼び寄せ、テイムクリスタルからノーチェを出す。
「三下さんはノーチェに乗ってローヴォと共に生産組に合流して、そのまま闘技場を目指してくれ」
「……先に行くのかァ? だったら俺も連れていけよ」
「いや、相手が予測済みってことを考えて動く。俺は一人で十分だ。生産組の安全を第一に頼む」
「まあ、そうしたいならその案に乗るぜェ」
「いいんですか、敵陣真っ只中かもしれません。魔人の存在も気になりますし……」
心配そうにする十六夜。
「いや、逆に相手の思惑に乗る。そして真正面から蹴散らす」
俺はルビーを呼び寄せると、背中に乗って上空に跳んだ。
なんだかんだ、裏でこそこそ動くやつにはこの方法が手っ取り早い。
手っ取り早く、そして効果的なのだ。
「お、おっかないです……」
「ァあ? 俺は殺気ってのがあんまりわかんねェからなァ」
「い、いや……普通に感覚100%でやってる一般プレイヤーでも足がすくむのでは? っていうか、あれで平然としているって、なんというか図太いというか……さすが、ローレントさんから気に入られる訳ですね」
「はァ……」
「空跳んでても、ビリビリビリビリ伝わって来ます。なんというか、コーサーさんとカイトーさんを連れて帰って来た時よりも、さらに格段にピリピリしているといいますか……」
「まァ要するに……あいつブチギレてるってこった?」
「ええ、はい……まあ、その……それであってますけど」
「ケッ、だったら敵陣御愁傷様ってやつだ。普段キレねェ奴を一度ブチギレさせると、おっかねェぜ」
はっぴーばれんたいん。
本日十一回目の更新ですかね。
ひと区切りつくまで更新したい。
ローレント「…………………………はあ?」(俺のチョコが食えない……だと?)
\──ドッ!/




