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-491-※※※トモガラ視点※※※

トモガラ編次回で終わり。(たぶん)


「何かしらの小細工かけてっかもしれないけどよ……」


 ハザードを睨みながら、アイテムボックスから同じ大きさの戦斧を取り出す。

 ちなみにこの大会も例によって武器制限はない。

 回復アイテムやら人から武器を借りるとか、それは禁止だがアイテムボックスに武器を入れて戦いに臨むのはあり。


 唯一前回と違う点は、予選での本戦選出者が一人しかいないってことだな。

 前大会のシード選手や、強かったプレイヤーが軒並み参加しない状況。

 予選のプレイヤーは大きく膨らんで、二人選出から一人選出に急遽変更。

 だから最終予選までクソ時間がかかった。


 まあいい。

 もうこうなったら予選、本戦関係ない。

 今はこの目の前の舐めた野郎をぶっ飛ばす。

 それだけしか考えない。


「……驚くべき身体能力だな、驚異的だ」


 戦斧を片手に一つづつ持ち、感覚を確かめるように素振りする俺を悠長に見やるハザード。

 余裕かましていられるのも今のうちだ。


 ──ゴガッ!!

 闘技場の床材が欠ける程の踏み込みで一気に肉薄する。

 二本の戦斧を両手に一本に持った要領で構え、そのまま横薙ぎ一線。

 避けづらい胴元を再び狙って振り抜いた。


「マジックプロテクトで相殺された瞬間にぶった切ればいいだろうがよ!」


 タイミングは、利き手の戦斧をやや遅らせる。

 時間差で攻撃することで、致死クラスのダメージをマジックプロテクトで受けてMPが切れた瞬間を狙った。


「……なるほど、そっちこそ良い小細工だな」


 ハザードは俺がそうするのをわかっていたかのように、今度は肉薄するタイミングに合わせて後ろに飛びのいていた。

 そしてすぐさまアイテムボックスに杖を戻すと、代わりに剣を一つ、いや二つ取り出す。


「ますますわけわかんねえな」


 魔法職だろうに、ローレントの後追いか何かか?


「だったら余計に、バカ丸出しだぜ!」


 魔法職で近接戦闘なんて、ローレントか十八豪くらいにしかできない。

 十八豪も、どちらかといえばスキル頼りなところがある。

 ことガチもんの近接魔法スキル、魔闘系に関してはある意味あいつだけのユニークスキルみたいになってる。

 マジックプロテクト主体の防御サボり野郎ができるわけない。


「その剣ごと、今度こそぶった切ってやる」


 怒涛の勢いで踏み込んで、幹竹割り。

 もちろん、再びマジックプロテクトを使われた時の保険として、片方の戦斧のタイミングはずらしてある。


「……単純だが、強いな」


「ったり前だろ。近接戦はな、昔っから体格がものを言うんだよ。基本中の基本だ、それをしっかり押さえてんのが、身体強化オンリーなんだぜ!」


 ──ゴバッ!! 仕留めた!!

 それはわずかな手応えだったが、先出しした戦斧がマジックプロテクトに弾かれる感覚があった。


 そうだよ、全力での幹竹割りは重力を味方につけて音速に近い。

 加えて木樵の薪割りでこの動きは何千回、何万回とゲーム内でこなしてある。

 多分現実でもこの上から下に振り下ろす動作は、ローレントにも負けないだろうな。

 並みのやつが避けれるわけねえ。


『さすがゲーム初期からの木樵!!! 薪を割るような振り下ろしで闘技場の床材が激しく砕けたああ!! いや、実際は幹竹割りだろうけど、この際木樵ってネームバリューを加味して薪割りって技名にしようぜー!! 』


『──うおおおお! そのまんまじゃねえかああああ!』


(いや……やっぱなんかかっこ悪いから勝負挑まないでおこう)


 実況のGMベータと、それにツッコミを入れる観客の声を聞いて、俺は冷静にそう思った。


「しかし、威力が出すぎるのはたまったもんじゃないな。手応えがわかりづらいぜ」


 頑丈な武器と超パワーがあれば、振り下ろしの一撃だけで爆発したように破片の砂埃が煙のように上がるし、石材を砕いて突き刺さるほどの衝撃をこらえなきゃいけない。

 それも身体強化スキルオンリーの成せることなのであるが、しっかり相手が死んだか後で確認を取らなきゃいけない。

 もっとも、まともに食らえば三下やローレントみたいなカウンター系能力を持ってる奴以外は絶対に耐え切れないけどな……。


「……………………は、ぁ?」


 目を疑った。

 ハザードはその場から動かず、俺の一撃をまともに受けたはず。

 絶対に耐え切れるはずないのに、


「……これが奴に並ぶトッププレイヤーの一撃か、なかなかだな」


 左肩から、やや胸をえぐるように引き裂かれているのに、ハザードはまだ立って俺を見ていた。


『な、なんと!! ハザード選手ギリギリのところで躱していたあああ!!』


 煽りと歓声が響く。


「……次はこっちの番だな」


 そんな中、ハザードは俺をじっと見つめたまま、小さくそう呟いた。

 まだ繋がったままの右手に持った剣を、無造作に振るう。


「ッ!」


 とっさに戦斧を構えるが、奴はこない。

 その代わり剣がへし折れ、そこから魔法陣が浮かびハザードの身体を回復させていく。


「──おいおいおいおい、アリかよ、そんなもん」


「……誰がいつどこでこれが剣だと言った?」


『け、剣ではなく杖だったああああああ!!』


『──つええええええええええ!?』


 観客席のナチュラルなノリボケをまったく意に介さず。

 ハザードは言葉を続ける。


「……貴様の言った戦いの基本は理解できる。だが、古い歴史でも驚異的な武器の存在がいつだって戦いを変えてきたはずだ」


 たちまち回復していく部位欠損。

 ポーションでも、これほどの効果を持つものをプレイヤーはまだ作り出せないはず。

 少なく見積もって、俺はまだNPCのアイテム以外、まだそれを見たことがない。


「……そう、これからはその時代になる」


 ハザードは再びアイテムボックスから最初に持っていた杖を取り出すと自分に向けて使用した。

 なるほど、それがテメェのMP回復の正体ってことか。


「考えたな……回復ポーション系は持ち込めねえが、武器にしちまえば関係ない」


 こんな芸当ができるスキルといえば、


「ハザード、テメェ……錬金スキルも持ってんのか?」


 だが、俺の問いかけにハザードは首をかしげる。

 そして完全に回復した身体で、MP回復用の杖を捨て、あらかじめ出していたもう一本の剣を両手に握ると、今度は仕返しだとばかりに俺に肉薄する。


「……俺は生粋の魔法職だ」







ジョバンニ「いいですかハザードさん」


ハザード「……なんだ?」


ジョバンニ「ちゃんとセリフは覚えてますか?」


ハザード「……無論だ、任せろ」


ジョバンニ「ならいえますか?」


ハザード「……うむ。いくぞ?」



「……貴様の言った戦いの基本は理解できる」ゴゴゴゴゴ


「だが、古い歴史でも驚異的な武器の存在が」ゴゴゴゴゴ


「いつだって戦いを変えてきたはずだ」ゴゴゴゴゴ


「……そう、これからはその時代になる」ゴゴゴゴゴ



ハザード「こんな感じか?」


ジョバンニ「ウフフ、上出来ですよハザードさん」






はっぴーばれんたいん。

本日更新八回目です!




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