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「初めてきました!」
「俺も」
「あ、ローレントさんが素になってる!」
「……」
「この際ですが、敬語なんて良いですよ。トモガラさんと喋るように接してくださると、コチラとしても嬉しい限りです」
そうですか。
ならニシトモの言葉に甘えて。
これからそうさせてもらおうかな。
ちなみにツクヨイはニマニマしていた。
「普通だな」
「でしょう? 初めてきた時は、道中すごくわくわくしました。でも、来てみれば特に代わり映えしないというか、下手すればテンバータウンの方が生産職を始めたプレイヤーが増えて賑わっていそうですよ」
町に入ると、ちらほらプレイヤーを見かける。
だが、NPCも多かった。
自由市場と書かれた看板の通りを真っ直ぐ抜ける。
馬車がすれ違える程の大通り。
その両脇に様々な商店が並び。
外側の道を多くの人々が品物を求めて歩いている。
「ノークタウンの長所は、毎週固定で自由市場が開かれている所でしょう。品物も毎週順繰りしていますし、プレイヤーの間では掘り出し物市と呼ばれて、稀にですが黒鉄や、そこそこなレア素材が取り扱われてる事があるんだそうです」
「へえ、行ってみたいです自由市場。お金なら沢山ありますよ!」
主に、俺とトモガラから巻き上げたお金だったりする。
まあ、ギブアンドテイクで払ってるんだけど。
ツクヨイは他にも取引してるプレイヤーいるのかな?
「うーん、ニシトモさんとかには精算を頼む事が多いですが、新規プレイヤーがおよび出ないですね。主にレイラお姉様達を通した紹介でしか受けませんよ? だってめんどいし、私はぶらっくぷれいやぁ。影に隠れる、知る人ぞ知る、錬金術師がいいのです」
「おう」
本人がそうしたいならそうすればいいんじゃない?
俺は漁師だけど、漁師がしたいから漁師になった訳じゃないし。
「じゃ、なんでですか?」
「私も気になりますね」
「……川の魔物狩りたかったから?」
うん、それに尽きるな。
魚を食べたかったってのもあるけど。
漁師の知識がこんな所で思うなんて。
まさか、思うまいよ?
「なんか、らしいですよね。ローレントさんらしいです!」
「千差万別ってことですね。または十人十色」
そして俺達は一度馬車を降りる。
ニシトモはこれから荷物の積み替えがあるんだとか。
それが終わって、改めて水運を使う紹介の場所まで行くんだと。
少し空いてしまった時間。
ツクヨイたっての希望で自由市場に行くことに。
「と、言っても。あんまり良いの無いですね」
今回はぱっと目につく物はなかった。
あるとすれば、果物とか美味しそうだなって思っただけで。
それもツクヨイの。
「ブリアンさん、既に栽培始めてますよ」
の一言で。
じゃあ今日は良いやって気分になった。
「おい、もしかしてこの町は初めてか?」
ツクヨイと適当に談笑していると、右側から声がかかった。
振り向いてみれば、鎧を身に着けた男性プレイヤーだった。
久しぶりにプレートメイルってのを見た。
相変わらずガチガチしてて重たそうだ。
「ええまあ」
「だったら俺はとある最前線攻略組の隊長をやってるんだが、お前達はそこそこレベルが高いみたいだな。是非ともうちで一緒にプレイしないか? 今なら資金援助だったりパーティも組みやすい。お、どっちも生産スキルもってんのか、ならなおさら」
「お断りします」
ちなみに、即答したのは俺じゃない。
ツクヨイだ。
男の言い方が乱雑に。
そして俺らを物みたいに扱うような言い方。
そんな雰囲気になって来た所でバッサリ言ってしまわれた。
流石ぶらっくぷれいやぁとやら。
ブラックオブザブラックですな。
「言葉遣いってものを知らないのか? 俺らはケンドリックが率いる攻略最前線組だぞ?」
「第一の町で今の所間に合ってますので」
「ふん、第一の町だとかいったな。でもな、自由市も無いただの町じゃねーか。エリアクエスト解放とか言ってるみたいだがな? そんなもんより先に第二の町の俺達が、第二の町のエリアクエスト解放、そしてクリアしてやんよ。けっ、せっかく誘ってやったのに。もう二度と誘わねえからな」
言うだけ言って、こいつはおさらばして行った。
何だったんだと思っていると、次は反対方向の隣から。
聞いたことのある声が。
「彼等は、自由市場を仕切ってるつもりになっているんだ」
十六夜でした。
「…………」
「や、やあ、この間振り、……です」
正直こんな所で会うと思っていなかった。
少し固まっていると、ばつが悪そうな表情をする十六夜。
そこへ、ツクヨイが。
「ん? だれですか?」
「十六夜」
「私と名前が似てるです! もももしかしてぶらっくぷれいやぁを志す、闇の名前をもつ同士ですか!?」
「え? はい?」
「ちっちっち、金髪は頂けませんねぇ、闇にとける黒じゃないと!」
「いやこれは、元々なんですが」
そろそろ十六夜が困り始めているから。
助け舟を出すことにする。
「この間、東南東の森で野良パーティを組んだ。この人もテイムモンスターを持っている」
「あ、どうも十六夜です。よろしくお願いします」
「え? ツクヨイですどうも……、ってテイムモンスター!? ままま、まさかその肩の?」
「そうです、モリフクロウのブルーノです」
「梟です! 猛禽類ですよ! いいなあ私も白梟が欲しいですます! ね、ローヴォちゃ……」
「今、デスペナ中なんで」
「……すいません」
何故か十六夜が謝っていた。
別に気にしちゃいないよ。
例えば、誰かが連れて来てしまったプレイヤーキラーのお陰で、うちのワンちゃんが死んでしまったとしてモネ。
デスペナだし。
二十四時間の活動待機ってのが出てて、すごい安心したのはホント。
同時に、やられた瞬間心臓ギュッてされたようにビビったのもホント。
プレイヤーキラーは許さない。
「掘り出し物市場の独占って本当ですか?」
ツクヨイがすぐ疑問に思ったことを言う。
十六夜は頬をかきながら返す。
「はい、今ってほとんど第二まで進めたら一度戻って来て第一の町でのエリアクエスト解放に向けて皆動いてるみたいですよ。一度東の川のエリアクエストが解放された件で、まだ何かあるんじゃないかって思ってるプレイヤーほとんどみたいです」
「簡易的な謎解きみたいになってるんですね?」
「そうです、一応私もこの自由市場には毎週来ています。ケンドリックの息がかかったプレイヤーとかも多いですが、早い時間帯なら何かしら良い物が見つかる可能性があるので」
そりゃまた、大変なことで。
この町まで来るのにも、歩いてそこそこの時間がかかるんじゃないのかな。
以前トモガラが利用していた噴水のポータルは、未だに使えないままだという。
「いや、そもそも簡易的っていうかかなりの難題だとおもうんですが……、魔物倒しておわりーって感じでもないですでげす」
ツクヨイの語尾が狂っていた。
「げ、げす?」
対応に困る十六夜。
そこへ、ニシトモが戻ってくる。
「すいませんお待たせしました」
「いえ」
適当に返事を返すと、ニシトモはすぐに十六夜とその肩に乗る一羽の梟に気がついた。
これも、商人の眼力とでも言うのだろうか。
すぐに理解したようで。
「テイムモンスターですか? 興味深いですね。こんな所に二人も」
「どうも、初めまして。十六夜と申します。この子はモリフクロウのブルーノです」
「ああ、どうも。ローレントさんと懇意にさせて頂いてます。商人のニシトモです。戦いでは剣を使います」
「これはこれはご丁寧に。私は弓を使います。ちなみに猟師も心得てます」
「いやはや、漁師ですか? 女性であるというのに、海に出る知識もお持ちとは」
「海? 森ですが?」
丁寧に丁寧が重ねられて。
そして少しだけズレた会話が繰り広げられていた。
「狩人の事です」
話がこじれる前に補足しておく。
ってか鑑定すれば一発だろ。
マナーとかいって鑑定しない勢か。
わからんでもない。
「……是非、牛狩りに彼女も連れて」
ニシトモの目がきらりと光る。
そう、猟師である彼女は、牛の素材を余すことなく使うことができるのだ。
俺が魚をさばくのと同じように。
「う、うし?」
「ええ、ニシトモさん。私食べきれませんよそんなに」
「いえ、無理して食べろとは一言も。それに牛狩りに対して積極的に動いてるプレイヤーが余りいないですから。今の内に牛肉流通させておきたいとも思うので」
野心絶好調なニシトモである。
牛を狩ると言ってもだな、そこそこ人手がいるんだよ。
十数匹の群れで行動してる牛を崖上から綱引きしてHP削る。
対して経験値が美味い訳でもない。
いや、肉は美味しいけどさ。
「わ、私でよろしければ! 協力します!」
十六夜は、引くくらいの勢いでニシトモの手を握っていた。
それを端から見ていたツクヨイは、小さな声で呟くのである。
「ボッチっぽい?」
「いうな」
こないだも積極的にパーティ申請してくるし。
狩りでも積極的に行動してくるし、喋りかけてくるし。
気疲れしない友達というのが欲しいのだろうか。
でも、彼女は色々な視線が嫌で一人でいると言っていた。
矛盾しているのだろうが。
それでも寂しい物は寂しいのだろう。
現に、俺だって駄犬がいなくて寂しいの。
さて、何故かついてきた十六夜も伴って。
俺達四人は船を持つ商会へと脚を運んだ。
イーストリバー商船。
ニシトモから聞いた話をおさらいしておこう。
ここから川を真っ直ぐ北へ。
すると内海へ出る。
その内海をぐるっと囲うように、オルクカント王国という国があり。
船による流通が盛んに行われているんだとか。
海ルートですか!
少しテンションが上がったのは内緒。
「南の資源、ぜひとも我が商会の船を貸し出したい所ですが……」
ソファに座る商会の人は、唸り声を上げる。
南には大きな山がある、森がある。
草原には沢山の食料だって。
プレイヤーによって広げられたマップ。
商会の人の受け答えはかなり好感触だった。
だが、一つ。
首を縦に振れない状況があるみたい。
「名も知らない人に大事な船を貸し出す訳には……、近年魔物も多くなって、護衛に回す人手を増やしたし、その分人件費が嵩んでうちもかなりギリギリ一杯なのですよ……、プレイヤーの方々の提案は魅力的ですが、流石に信用無き者には」
「わかっておりますとも、立派な船じゃなくて大丈夫です。ボロ舟からでも、商いをスタートさせたいと思っておりますので、そしてここに東のピラルークを倒した漁師が一人います」
「なんと!」
いつのまにか、交渉の材料に使われていた。
いや、別に良いんだけどさ?
ボロ舟かりて、魔物に沈没させられたら目も当てれないと思う。
そこの所はしっかりして頂きたい。
「海、川を知る人がいるのは心強いですね。ちなみに、そちらの船着き場は整っているのですか?」
「いえ、まだです」
「ふむ、ならばそれが整い次第、前向きに検討したいと思います」
「本当ですか!」
商会の人も、長らく滞っていた南の取引になかなかの好感触を示していた。
そこで、ふと思ったことを聞いてみることに。
「その、水に浮きやすい木材って無いですか? バルサとか。最悪筏だけでも作れればなんとかなります」
「おお、うちで使っている木材を少し融通しましょう」
「ありがたいです」
話は滞り無く終了した。
これからも度々脚を運ぶニシトモに、資材の運搬は引き受けてもらった。
大雑把な予測だが、船を借り受けたとしてもなにか一悶着あると思う。
未だエリアクエストはだれもクリアしてない。
川を進んでみることで何か切っ掛けが生まれればいいんだけど。
まずは筏を作って川を下ることを考えよう。
帰りの馬車の上で思うのだが。
次から次にやることが増えると、段々自分でも管理できなくなる。
一々ログアウトしてメモ帳を確認するのも億劫だし。
……掲示板をメモ帳代わりに利用するのってどうだろう。
とりあえず、明日はローヴォも冒険に復帰する。
そろそろ挑んでみてもいいんじゃないでしょうか。
バトルゴリラ先輩。
ーーー
プレイヤーネーム:ローレント
職業:無属性魔法使いLv19
信用度:65
残存スキルポイント:0
生産スキルポイント:4
◇スキルツリー
【スラッシュ】※変化無し
【スティング】※変化無し
【ブースト(最適化・補正Lv2)】※変化無し
【息吹(最適化)】※変化無し
【フィジカルベール】※変化無し
【メディテーション・ナート】※変化無し
【エンチャント・ナート】※変化無し
【アポート】※変化無し
【投擲】※変化無し
【掴み】※変化無し
【調教】※変化無し
【鑑定】※変化無し
◇生産スキルツリー
【漁師】※変化無し
【採取】※変化無し
【工作】※変化無し
【解体】※変化無し
◇装備アイテム
武器
【大剣・羆刀】
【鋭い黒鉄のレイピア】
【魔樫の六尺棒】
【黒鉄の双手棍】
装備
【革レザーシャツ】
【革レザーパンツ】
【河津の漁師合羽】
【軽兎フロッギーローブ】
【軽兎フロッギーブーツ】
【黒帯(二段)】
◇称号
【とある魔法使いの弟子】
【道場二段】
【復讐者】
◇ストレージ
[スティーブンの家の客間]
セットアイテム↓
[カンテラ]
[空き瓶]
[中級回復ポーション]
[夜目のスクロール]
[松明]
※残りスロット数:7
◇テイムモンスター
テイムネーム:ローヴォ※デスペナルティ
【グレイウルフ】灰色狼:Lv5
人なつこい犬種の狼。
魔物にしては珍しく、人と同じ物を食べ、同じ様な生活を営む。
群れというより社会に溶け込む能力を持っている。狩りが得意。
[噛みつき][引っ掻き][追跡]
[誘導][夜目][嗅覚][索敵]
[持久力][強襲][潜伏]
※躾けるには【調教】スキルが必要。
ーーー
私の書き方がおかしかったみたいです。
称号の痛覚設定に関しては、起動させてから一発一発という形です。
痛覚設定は0%にしてしまうと、感覚パロもそれに合わせてパーセンテージが落ちて行きます。
と、言う訳で、設定状どうしてもゼロにする訳にはいかないものです。
別にしても良いですけど。
背後「そろそろ書きダメの時間です」




