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まともに始めなさいよ


「レイドだろうが、なんだろうが、関係ねェ。クズは殺すゥ、ただそんだけだァ!」


 レッドネームも真っ青になるほどの凶悪な三下さんの顔。

 だが、その表情が頼もしかった。

 戦えるメンツがもう少し欲しいところだが、三下さん一人でも並みの相手にはお釣りがくる。


 ただ、完膚なきまでに邪魔をするという一点で。

 十六夜、ツクヨイ、さらにはモナカが来てくれれば契約モンスターたちもいるし完璧だ。


 あとはそうだな。

 トモガラもこういう祭り事には積極的に首を突っ込んできそうだが……。

 なぜか連絡なし。

 メッセージも届いてないということで、闘技大会予選が忙しいのかな。


「ローヴォは三下さんと足元から切り崩せ。そしてルビーは俺と空」


 ルビーがいれば上空での自由度が増す。

 制空権をいただいて、リアードドの目の前にちらつくだけでもかなりの邪魔をできる。

 そう、今だけハエになってやろう。

 だが、俺がハエになったら手強いぞ。

 どこぞの古き漫画のように、飴玉になっても強さは変わらんだろう。


「ん? おい……待てよォ」


 契約モンスターたちとともに戦いにはせ参じようとすると、三下さんが待ったをかけた。

 顎をしゃくってリアードドを見ろと言う。


『チッ、またムカつく野郎が増えやがった……ァァアア、ムカつく奴がァアよぉおおお』


『あれ……リアードドさん?』


 リアードドの様子が、少しおかしかった。

 隣にいるジョバンニも「あれ?」と首を傾げたような動きをする。


『ま、まじでよお、マジまじま、マジでヨォオオ、テメェ覚えてるぜ、お、おお俺をご、ごう拷問しやがったクソ野郎じゃねぇかヨオ、おいテメェコラオイ、クソクソクソガ許さねえ絶対テメェだけは、こ、ころ、殺すスス』


「やべェなおい、頭ぶっ飛んじまったのかァ?」


「……デビルクリスタルの消費効果がもうきたのかもしれない」


「ああ?」


 首をひねる三下さんに説明する。


「悪称号持ちのレッドネームが使用できるとんでもない錬金アイテムのことだ。フェアリークリスタルよりもさらに数段良い効果を持っているが、その分使用しすぎると、凶暴化するような異常状態がつくらしい」


「へェ、そんなもんがあんのか……でもよォ」


 頷きながら、三下さんはリアードドを指差してセリフを続ける。


「ローレント、あいつの鑑定はしたか?」


「鑑定? したはずだ。ただの戦士だったと思うが……」


「ハァ〜、看破全然あげてねェのな」


 大きなため息をつかれてしまった。


「なんだそのため息」


「今だったらなんか知んねえけど看破なしで鑑定できるみたいだからやって見ろ」


「うむ」


 言われた通りにリアードドを鑑定する。

 確か、元はこうだったはず。




【リアードド】剛戦士Lv:80




 剛戦士とは、二次職の重戦士からさらに発展した重装戦士のことだ。

 騎士職だったり、重たい鎧や武器を持てるようにさらに筋力に特化した職業群である。

 トモガラが就いている職業で、この職業のプレイヤーは身体強化スキルオンリーである可能性がかなり高い。


 だが、改めて鑑定してみると……。




【リアードド】狂戦士Lv:80

・プレイヤーおよびNPCキラー




「……狂、戦士?」


「デビルクリスタルが暴走するんなら、こんなところで油売ってねェでさっさと闘技場まで移動するはずだろ? 悠長にくっちゃべってた野郎が首を傾げた反応をした、だから十中八九……この特殊な職業のせいかもしれねェなァ」


 三下さんめ、なかなかに鋭い指摘をする。

 そんな三下さんの言葉に、ジョバンニが返した。


『ククク、ご明察。なかなかに鋭い意見ですねェ? リアードドさん、頭に血が上りやすい性格が功を奏したのかなんなのかわかりませんが、なかなかレアな悪称号である“狂人化”をもってまして……何らかのトリガーがあると暴走しちゃうことがよくあるんですよねえ……ククク』


「ハッ、だったら都合がいいぜェ、血が上ってる方がよっぽと単純で戦いやすいからなァ!」


 確かに、三下さんの言う通りではあるのだが……なんだかジョバンニの余裕めいた口調が気になった。

 まさかとは言わんが、狂人化したらデビルクリスタルのタイムリミットがどうのこうのなくなるとか、そんなアホなことはないだろうな……。


『余裕ぶるのは勝手ですが、デビルクリスタルの暴走効果よりも凶悪で、さらに凶暴効果上書きされますから……こうなったリアードドさんを止めるのは私でも無理ですよ? いつもハザードさんにお願いしてましたし』


 悪い予感が当たった。


「……ならばバッド効果がなくなるのか?」


 一応聞いてみると、ジョバンニは頷いた。


『はい、そうです』


 はい、そうです。じゃないが。

 自滅するまでの時間稼ぎをしていたら、まさかの敵強化。

 なんだか裏目っている。


『ククク、それほど心に残る拷問でもしたんですかねえ?』


 そう言うジョバンニの言葉に合わせて三下さんを見る。


「チッ、うるせェな……どうせ結局倒す寸前で狂人化しましたっつーのがお約束みたいになんだろォ!? だったら先に敵強化しといた方がいいじゃねェか、逆転フラグへし折ってやってんだぜェ? ああん!?」


 逆ギレされた。


『ああ、恐ろしいですね、本当に。リアードドさんかわいそう。こうなったら私が加勢する必要もありませんね。好きなだけ暴れてください。今のあなたは怪物です、怪物、巨人の怪物……男のロマン……おっきいひと……』


『耳元でウルセェよ、消えろ』


 目を真っ赤に血走らせたリアードドが、大きな目をギロリとジョバンニに向ける。


『はいはいわかりました。それでは先に闘技場に向かっていますね?』


 ポンッとそんな音を残してあれだけくっきり象っていたデビルクリスタルが、フィーが使っていたようなぼんやりした光の玉と同じになった。


「チッ……あいつともう一人はもう闘技場行ってんだろ……? ヤベェな……」


 三下さんの言葉の意味はわかる。

 ジョバンニと同じように、ハザートとやらも闘技場に先行しているだろう。

 さらにカイトーの話やジョバンニの口ぶりから察するに、目の前のリアードドよりもさらにハザードは強い。

 ……なんとか奴らを抑えれるやつがいるとすれば、


「闘技場にはトモガラがいたな……メッセ送ってみるか……見るかわからんが」


「それがいいぜェ。まあ俺の予想だが、しけた予選なんかをやるよか、裏の中枢プレイヤーを殺す方をトモガラなら選ぶだろうよ?」


 それもそうか。

 もしかすれば、目下戦闘中ってこともあり得る。


「とりあえずこのデカブツは俺一人じゃさすがに無理だァ……手を合わせて先に倒しちまおう」


「うむ」


 トモガラならば、早々に負けることはないだろう。

 とにかく、ジョバンニがどこまで考えて動いているのかわからん以上。

 リアードドに時間を取られるのはまずい。

 だから、三下さんとタッグを組んで、討伐タイムアタックだ。








はっぴぃばれんたぃん(ハート

……ストックがやばい、もうない。

更新4回目。






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