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『ハローハロー、私がジョバンニです』


「……ジョバンニ……テメェ……」


 腹を破っての出現に、リアードドのHPが急激に減っていく。


「なんかファンシーなキャラクターがでた!?」


「……お前まだ規制いれてるのか、いい加減切れ」


「ほげっ」


 ツクヨイがファンシーなことを言った時は、だいたい規制入れて見てる時。

 なので、ゲンコツして切り替えさせる。

 すると、


「ほぎゃ!? キモ! なんですかそのキモデビル!」


「話がこじれるから黙ってて」


 うるさくなりそうなので、ツクヨイを手で制す。

 だがキモいのは同意だ。

 くるくると使用者の周りと飛び回る姿はデビルクリスタルのものと変わらんが、リアードドの腹から出てきたジョバンニの声を真似るこの小デビルは、改めてじっくり見るとかなりキモかった。


 表現するならば、

 血走った眼球の毛細血管がそのまま伸びてタコみたい。

 それがフヨフヨと浮いて脈打っている感じ。


『くくくく、キモいとはひどいですねえ。』


「ジョ、ジョバンニ……」


 苦悶の表情を浮かべるリアードド。

 そんな彼に、ジョバンニの情け容赦ない声が響く。


『だから言ったじゃないですか。ハザードさんの占いは当たるって。まったく自業自得ですよ。あなたは昂ぶるとすぐ言う事聞かなくなりますからね。こうしてあらかじめ尻拭い用のアイテムを渡しておいてよかったですよ。おかげでプランを少し変更しなきゃいけないですし』


「……はぁ? ……こ、これ、達人級の感覚になれる──」


『──薬であったことは確かです。でもいつの話を言ってるんですか? たかが“感覚が鋭くなる程度”のものでギジドラさんがやられるわけないじゃないですか?』


「……は? ……え?」


『──感覚が鋭くなるのは、同じステージに立つためのモノ。強いていうならそうですねえ、化け物が、化け物たる所以の世界へ入るための通行料みたいなものでしょうか? ククク』


 そうケラケラと笑いながら、目玉が俺の方を見つめていた。

 しかし……いったいどうやってこんなものを仕込むんだ。

 基本的に初期からブーストかけてきた俺たち生産組でも、まだこれほどの効果を持つアイテムは作れないと思うんだが……まあいい、まどろっこしいことは後で考えて、先に潰しておくか。


「目障りな奴だ」


 そう言って前に出ると、再びジョバンニは話し出す。


『おっと、話しすぎましたかね。リアードドさん、出番ですよ』


「……は、あ?」


 息も絶え絶えのリアードドにジョバンニは言った。


『せっかく拘束をデスペナで解いてあげるんですから、もうひと仕事してくださいね』


「な、ん──ッッ!?」


 触手とクネクネと動かしながら、そう告げるジョバンニの声の後。

 リアードドの体が大きく膨張した。


 ドクンッ!

 脈打つような力のほとばしりを感じる。


「おいおいおイオイ──ナンダヨコレ!!」


 縛られたリアードドの体がみるみるうち、歪に膨張していく。


『前提条件として、“人である時点”で達人の中でも一握りの上層クラスとでも言いましょうか、“超人”には勝てるはずがないのですよリアードドさん。彼らを怒らせてしまえば、スキルの有無なんか一切関係なしに簡単に食われてしまう、それがよーくわかったでしょう?』


「オイ……ナニがイイタイんだよ」


『ククク、簡単な話、私は思うんです。“人ならざるモノ”になることこそが、彼らに届き得るもっとも初歩的でそれでいて単純明快な結論ではないかと……』


 ジョバンニは愉快そうにクツクツと笑い声を漏らし、言葉を続ける。


『目みは目を歯には歯を……そして、人外相手には人外を』


 その途端。


「──ウオオオオオオオオオオオオ!!!!」


 リアードドの叫び声が耳を劈く。


「な、な……なんだこりゃああ!」


「や、やべぇよどうなってんだよ!」


 驚くミツバシとイシマル。


「……まるで特撮物を見ているかのようであるな」


 ガストンもやや動揺を隠しきれない表情で固まっている。

 正直俺も驚いている。

 何が起こったかって、膨張したリアードドがまさにガストンの言う通り、特撮アニメの敵みたいに巨大化を始めたからだった。

 バツンバツンと装備が弾けて、部屋にあった酒の陳列棚に命中しガラスが割れる音が響く。


「しのごの言ってる場合じゃないわよ! 建物が崩れる! みんな外に出て!」


 レイラの声でハッと我を取り戻した俺たちは急いで室内から外に出たのだった。





『……何だこりゃあ』


『達人のような感覚になれるのは言わば嘘ですね。いやホントですけど、巨大化する際の一つの効果にしか過ぎません。巨大化すると感覚も鈍るようでしたので、こうやって感度をあげておきませんと、体が追いつかないと言うことがギジドラさんの蟻で試して発覚しましたからねえ』


『騙したな……』


『くくく、敵を騙すならまず味方から。あ、言っておきますけど、ここから効果が切れたら死ぬのは決定事項ですよ? 流石にここまでの力を得るにはそれ相応の制約と対価を持たなきゃいけませんしね』


『……高い装備だったのによお……』


『まあまあいいじゃないですか。そんなもの、いくらでも作ってあげますから……とりあえずプラン変更です。もうすでに私たちは闘技場の予選会場に潜伏してますから、とりあえず大きくなったその足でそこを目指してください』


『ん? おうおう、それで?』


『その後は自由です。怪獣になったお気持ちで、闘技場にいるプレイヤーも、NPCも、レッドネームも、誰彼構わずワンコロではなく全殺ゼンコロでお願いします』








ではまた明日。





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