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「──ハッ!? なんっ、どこだここ!?」


 グラスに入った内容物を浴びせられたリアードドは目を覚ました。


「テメェ! ……えっと……」


 すぐに俺と目があった。

 表情を怒りに変えたリアードドはすぐに身をよじってもがく。


 だが、そんなリアードドを囲う。

 オレ、三下さん、イシマル、ガストン。


 俺と三下さんはともかく。

 ガタイが良くてさらに強面のガチムチ勢に取り囲まれて、縛られてるともなれば。


「はは……悪かったよ……なんだよ……そんな目するなよ……」


 と、さっきまでの威勢はどんどん小さくなって行った。


「ってか俺……なんで生きてんだ?」


 そう呟くリアードドにソファに座ったミツバシが遠くから言う。


「大事な情報源だからな」


 ちなみに、ミツバシは動き出したら恐ろしいからという理由で、基本的にこのリアードドから対角線場の一番遠い位置に座っている。

 ロープでガチガチに縛ってるのにな。

 俺が縛ってるんだから、縄抜けなんかもできないんだ。


「いや、そうじゃなくって……まあ、いいか」


 なんだか腑に落ちないようであるリアードドに、カイトーが思い出したように口を開いた。


「せや! ほんまやん!」


 周りにいたみんなも「はあ?」と首をかしげる。


「どういうことだ?」


「こいつが飲んだあの薬、服用した後は死ぬとかジョバンニ言ってたんや!」


 ……なるほど、強い効果にはそれなりにバッドステータスがつく。

 俺の悪称号とかもそうだけど、PK相手の効果はそれなりに高いが信用度が上がりにくくなるという少し厄介な効果を持っていたりする。

 っていうか外道攻撃すると、信用度減るしな。

 今は信用度が大事だから使ってないが、そもそも目利きが鋭いNPCは悪称号を暴いてくる。


 達人に近くなれる、いわば達人薬的なもの。

 使えば死ぬくらいのバッドな効果があるのは頷けた。


「けっ、まあテメェらに拘束されてるから意味ねぇけどな、死んだところでよ」


 悪態つくリアードドにレイラが上から目線で言葉を投げかける。


「そうね。キャラクターアバダーを拘束してる限り、ログアウトしても意味ないから。残念だったわね? 副作用ってので死んでいれば今頃デスペナでお仲間さんのとこに戻れてたのにね?」


「……チッ」


 珍しく本気で毒づいてるな、レイラのやつ。

 まあ、拠点を奪う上でレイラを殺した張本人らしき人物の一味だ。

 さもありなんと、思っておこう。


「……なんだよ、なにがお望みだよ?」


 俺らを睨みつけるリアードドに三下さんが蹴りを入れた。


「ぐはっ!」


「ハァッ? お望み? 立場がちげェじゃん? 情報吐きますからよろしくお願いしますだろォ?」


「ぜってー下手にはでねぇよ。……殺せ」


「俺ァ天邪鬼だからよォ、殺せって言われたらかえって殺したくなくなるんだよなァ」


「……殺せ」


「それしか言えねェのか?」


 ギョロリとした四白眼をリアードドに向け、盾を舐める三下さん。

 どっちかっていうと周りにいた生産組のメンツが引いていた。


「……どっちが悪党なんですかね」


「うーん、どっちもってことにしておきましょう」


 コソコソとソファの後ろに隠れるツクヨイに、モナカがそう苦笑いしながら返していた。

 何言ってんだよ、三下さんは“良い奴代表”だろ。

 これも、あれだ、あえてこう言った役割を担ってくれてんだよ。


「……殺しちまえ。どうせ敵に捕まっちまった俺なんか切り捨てだぜ」


「ハッ、イイゼェイイゼェ、戦闘はあいつに任せっきりだったからよォ、次は俺がテメェを甚振りたくて甚振りたくてしょうがなかったんだワァ」


「…………」


「チッ、まあいいや、ヘイ拷問開始ィ」


 反応の変わらないリアードドに、一度舌打ちした三下さんは光る盾を彼の顔面に突き立てた。

 そして、間髪入れずに魔石をつぎ込み、とんでもない閃光を生み出す。

 予期していた俺は、ローブで視界を覆った。


「ぐおおおお……ッッ!!!」


 至近距離でいきなりとんでもない光を浴びせられたリアードドの苦悶の声。

 の、他に。


「め、目がああああ! 目がああああ!!」


「うおおおおおおお! 先に言えやあああ!!」


「ガハハッ! いきなりすぎて目を隠すの遅れたぜ! ガハハ! ……前が見えねぇ!」


 ツクヨイ、ミツバシ、イシマルの3人がのたうち回っていた。

 ミツバシとツクヨイなら、盾を作った張本人たちでもあるわけで、魔石を入れる段階で気づけよ。


「クッハハハケカカカ!!」


 苦悶のリアードドを見ながら、三下さんはやべぇ笑い声を発する。

 どっから出してんだ、鳥類かよってくらいの笑い声だった。

 ……役にハマりすぎぃ。


「HPは減ってねぇけど、いてぇだろ? いてぇよな? ローレントに言われて俺も効果的な拷問尋問方法ってのをずっと考えてたんだけどよお、やっぱ視覚に訴えるのがイッチバンだわァ!!」


 みんなの視線が集まる。


「ローレント……」(レイラ)


「元兇にいつもいるであるな」(ガストン)


「トモガラ以上よね?」(セレク)


 ちょっと三下さぁん、俺にまで風評被害が来てますよ!

 確かに、拷問は相手の意表をつく、逆をつく。

 それを昔説明したことがあるから、何も言い返せない。


 恐怖を煽る。

 恐怖にある程度の耐性があるやつは他の恐怖。

 もしくは意表をついてダメージを与える。


 うむ、三下さんは確かに言ったことを実践している。

 というか自分なりにアレンジを加えて昇華させている様な。

 そんな気がする。


「さすが三下さん」


 ボソッと呟くと、再びみんなからの視線が集まっていた。

 甘んじて受け入れよう、どうせ、裏ギルドとのいざこざも俺が発端なんだろうしな。

 だから責任持って戦っている、戦っているんだ。

 開き直っていると、次は耳の穴に沸騰させたお湯を流し込む三下さん。


「ぐ、ぐああああ──ッ!!」


 なかなかえげつないことをしてるな、なんて思っていると。


『まあまあ、どっちが悪党なんですかねえ?』


 どこからともなく、リアードドのものではない声が聞こえて来た。


『みんなで寄ってたかって一人をいじめて、ほんと、影で噂されていた生産職の黒い部分も、全くもってその通りかもしれませんよねえ? ククク、大部分は私が流したデマですけど、ククク』


「この声、ジョバンニや!!!」


 カイトーが気づく。

 いったいどこだ、と生産組のみんなも辺りを見渡し。

 俺も気配を探るのだが、不審な気配は見当たらない。

 すると、


『ここですよ、ここ。リアードドさん、伝令役ありがとうございますね? ククク』


「ぐはっ! ……ジョ、ジョバンニ……テメェ、何を仕込んでやがる……」


 リアードドの腹を突き破って小さな何かが出現した。

 パラサイトしたエイリアンみたいに。

 見覚えがある、これはデビルクリスタルを使用した際に出現する小デビルだ。








2/14はバレンタインプレゼント更新です。

ツイッターでちょろちょろ書いてたら公式ツイッターで書かれて逃れられなくなってしまったので、がんばります。

12回連続更新になります。

もう、逃れられません。

来てしまうんです。

頑張るんです。





ちなみにちょっとした補足ですが、普通に使用した場合。

クリスタルの妖精さんは腹を破って出現しません。




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