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「なるほどね……何かしらの目的があって、裏ギルドの一味はアンジェリックをさらったってことなの?」


「そうだ」


 レイラの言葉にうなずいて返しておく。

 地下室で敵を倒した俺は、彼らを連れてそそくさとノークタウンにテレポートして、レイラ達の控える名もなきバーの一室に戻って着ていた。


 ちなみにだが。

 カイトーは設置型爆弾の威力を甘めに見積もっていたのかしらないが、ケンドリックの屋敷は半壊以上だった。

 くつろいでいたケンドリック陣営はてんやわんやの大騒ぎ。


 見つかったら俺のせいにされて、なんだかこじれそうな予感がしたので、力が抜けて腰を抜かしたカイトーと、両足をへし折られて歩けなくなったコーサー、そしてロープに縛られたリアードドを連れての転移となった。


 いや、テレポートがあって本当に良かったよ。

 鉢合わせとか面倒だしな。

 下手にケンドリックに関わるのは得策ではない以上、俺の選択は正しい。

 ……ハズだ。


「今頃大騒ぎの真っ最中ってことだな? なんだか笑えるぜ」


「ガハハッ! いい気味だなケンドリック! カイトーももっと爆薬仕掛ければ良かったのにな!」


 ミツバシとイシマルが悪ノリする。


「あかんて、あれ以上威力が強かったら流石にもろともやったわ!」


「屋敷半壊で、よく地下室が潰れずに済んだであるな」


 ガストンが鋭いところを突く。


「ハザードっていう男が、なんや魔法スキル呟いた瞬間、元に戻ったんや」


「ほう」


 リアードド以外の連中は、よくないことが起きると言いながら出て行ったそうだ。

 なんだか勘の鋭い奴がいるようで、カイトーに詳しく話を聞いてみると、あの薬を作ったのがジョバンニで、俺が来ることを予測したのがハザードだって話だった。


「神聖な儀式とか言ってトランプタワーつくとったみたいやけど……まさかほんまに当たるとは思わんかった」


「むむむ、中二ですか? なんだか同種類のような匂いがしますが……悪は許せないのが正義のぶらっくぷれいやぁなのです!」


 話を端で聞いていたツクヨイが入って来る。


「話が拗れるから後な」


「ぶぶぶー!!」


「なんだ?」


「そうやって大人ぶって難しい話にするのやめてくださーい! 私だってもう来年成人迎えるんじゃー!」


「……十六夜」


「うふふ、はいはいツクヨイさん甘いものですよ~」


「甘いものー! むぐむぐむぐ、こ、こんな甘いものに例え胃袋が釣られても、むぐむぐむぐ、子供扱いされたことは、むぐむぐむぐ、許しませんからね!」


「めっちゃ食ってるゥ……」


 どこから出したのか、十六夜が差し出したケーキに夢中になるツクヨイを見て、三下さんが呆れかえっていた。

 ちなみに、別に俺はあらかじめツクヨイの暴走をこうやって止めろとか指示した覚えはない。

 こういう時は十六夜をぶつければいいだろ、的な感じで適当に名前を呼んだら、十六夜が率先して甘いものを出してツクヨイを封じ込めたのだった。


 すげぇなおい……。

 手際良すぎだろう。

 人見知りする相手にはどうしようもなくポンコツだけど、こういう時は使えるな。


「まあ、たまたまタイミングが悪かったってこともあり得るし、カイトーが聞いた話だと、エキシビションマッチの時になにかでかいことをしでかすその“プラン”っていうのは変わらないんだろ?」


 ミツバシの言葉にカイトーが頷く。


「だったら話は早いぜ、待ち構えてぶん殴ってやる! ガハハッ!」


 そこにイシマルが豪快に力こぶを作った。


 それから。

 とりあえず敵の名前や諸々は判断できた。

 それとアンジェリックが密接に関わっていて、敵は闘技大会本戦最後で何かをする。

 だったら結局待ち構えるしか、方法はない。


 という意見で固まり。

 諸々の話は終了した。


「俺たちの情報手に入れるってことで、とりあえずブランドはまだいろよ!」


「そうだぜ、クヨクヨしてても何もいいことないからよ! 酒盛りだぜぇ!」


「ならサイゼとミアンは営業引き上げてもらって、ここ使って何かしましょ? お題はそうね、ブランド引き止める貴方達二人の奢りってことで!」


「はあ!? セレク何言って……まあ今日くらいは仕方ねぇな! ブランド元気出せよ!」


「そうだぜ、俺が奢ってやっから! ガハハッ!」


 ミツバシとイシマルは、アンジェリックが裏ギルドに連れ去られた件を聞いて失意に倒れるブランドを元気づけるために宴会を開くようだった。

 ほんと、お祭り好きな生産組だな。


 そんな準備が着々と進められる中、俺は一人、蒸留酒をチビチビ飲みながら、少し気になることに思考を向けていた。


「タイミングが悪かった……か」


 ただその一点だけなのだが、妙に引っかかる。

 あまりにもタイミングが悪すぎるのでは?

 俺の悪運の瞳とか、そういう効果みたいに、何か別の力が働いているのだろうか。

 いや、スキルでそれがあるとしたら、テレポート以上にやばい代物だと思われる。


「うーん」


「随分頭を悩ませてるみたいだけど、どうしたのかしら?」


 VIPルームみたいなこの室内には、バーカウンターもあって、そこで一人考え事をしていると隣にレイラが座ってきた。


「いや、ちょっとな」


「ちょっとって何よ。あんたほんとに喋んないわね、はっきり言いなさい」


「……占いの結果がどうとか言って、敵はあの場を離脱したみたいだったな」


「そうね」


「もし本当に当たるなら、俺たちがずっと先手を取られていたことに、なんとなく説明がつく気がして」


 クエストの優位性とか、PKに有利な魔人出来イベントだったり。

 そういう意味で先手を取られてきたのでは、と今まで思っていたけど。

 今回の件で“かなりの曲者”が敵対勢力にいることが判明した。


 神聖な儀式?

 聞けば中二だとか、鼻で笑えそうな言葉。

 誰だってツクヨイみたいな奴を想像する。


 だが、わからんぞ。

 世の中、不思議なことはいくらでもある。


「なるほど……そういう理論でいくとあんたも摩訶不思議人間側だから、あながち良い捉え方してるかもね」


「はあ? 誰が摩訶不思議人間か」


「あんたよ」


 ……なんでだ。

 まあいいか、とりあえずその線で考えてみようということで、俺は残っていた蒸留酒を一気に煽った。









知らんうちに犠牲になり、その当事者が消えるケンドリックの館。

メイド長は地震の時とりあえず自分の安全を優先して消えました。






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