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「ははっ、テメェらの息遣いとか、心音とか、筋肉の動きとか、手に取るようにわかるぜ。確か、達人って相手の動きの読み合いから、一瞬で決着がつくんだっけ? はは、ちっとこついがいるかもしれねぇけど、丸わかりだ」


「……面白いな」


 どう言う原理かわからないが、かねがねそれが正解でもある。

 相手の一挙手一投足から、長年の勘を持ってして先手を取る。

 それが“達人”と呼ばれる生き物であるが、一般人の考え方からすると、生物の発する全ての情報から動きを予測する、という形になるのか。


 うむ、かねがね間違いない。

 こいつは今、ある意味達人と同じような感覚の中にいるのだろう。


「パワーとかスピードはかわんねぇのか……まあいいけどよ」


 そう言いながらリアードドは身体強化スキルを積み始めた。


「コ、コンシリエーレ……」


 心配そうに見つめるコーサーに言う。


「大丈夫だ、見てろ」


 相手を“達人”だと仮定するならば、俺も本気を出せる。


「何が大丈夫だってんだ? さっさと殺して間延びしてる時間感覚の分も余すことなくテメェらを殺しきってやるよ!!」


 そう叫んで大剣を振りかぶり、横薙ぎに斬りかかってくるリアードド。

 狭い地下室内では避けづらい必殺の一撃。

 そんな中、俺は刀を片手に構えると、無造作に一歩踏み込んだ。


「そうやって動くのもわかってんだ──くアッ!?」


 片鎌貫手の親指をリアードドの右目に突っ込むと、リアードドは大剣を落として目を抑える。


「な、なん──」


 慌てて大剣を拾おうとするリアードドの言葉を待たずに、俺は彼の片腕を容赦なく斬り落とす。


「ぎ──ッ!?」


「どうしたリアードド、達人になったのなら動きが読めるんじゃないのか?」


 煽りながら詰め寄ると、リアードドもなんとか拳を構えて俺の動きに対応してくるが、俺に振るった片腕は空を切り、「ああ!?」と素っ頓狂な声を上げている。


「あ、あれ? 普通にいつもの無双じゃん? リアードド、薬の効果でめっちゃ強くなってるんちゃうのん?」


 カイトーがあっけにとられているが、別に疑問を感じるほどでもない。

 俺の技に、相手のありとあらゆる隙をついて攻勢に出る“未取”と言うものがあるが、この達人になれる薬、達人薬を使ってその感覚をつかめれば、誰にだってできそうである。

 だが、そのさらに先に、相手に動きを読ませない行動も可能なのだ。


 モナカが極める無拍子は、そう言った相手に動きをつかませなくするための一つの技なのだが、あえて相手に誤認させて行動を誘う……と言うことも応用で可能なのである。

 自分で作った技なんだ、それにやられないための対抗手段も考えるだろう、普通。


「達人同士の戦いではそれが常。ドーピングしたところで、歴が違う、歴が」


 と言うかスタートラインに立ったつもりでいても、全く持ってスタートラインじゃない。

 経験を飛ばして力を得る。

 それが、どれだけ危険なことなのかわからないのだろうか。


 さらに言えば。

 一日一日を大切にして来た、その礎の上に達人っていう存在があるのだ。





 それを、それを……、





「薬で同じ感覚? 反吐がでるな」


            《ドグシャアッ!》




 冷静に考え、最善手を出すためにドーピングしたことは評価に値するが……問題外。





「問題外なんだよ、お前らレッドネームどもはな」


            《ボゴァッ!》





 悪事を働くだの、なんだのは別に気にしてないが、周りに迷惑かけるのがいけすかん。

 確かに、本人よりもその周りに被害を出した方が、逆に本人にダメージがいく。

 そんな良心に浸け込で、後ろで黙って見て楽しむような奴は正直いけ好かん。





「いけ好かないったら、いけ好かないんだ、お前らは」


            《メメタァッ!》





 運営側もどうだ?

 いいところばかりがゲームの面白さではないが、どうしようもない状況ができかねない。

 第一拠点みたいに詰みかねない状況をなんで野放しにしているんだ。

 何かしらの告知だったり、色々とあってもいいだろうに。

 それで取り返しがつかなかったらPKが入れないエリアを作りますだ。





「バカか! そんなの求めてないんだよ!」


 しかも、プールに放りこまれたしな、服着た状態で。

 みんなの前で服着たまま落とされるとか、地味に恥ずかしかったんだぞ!


「──ロ、ローレントはん! 落ち着きやって! ちょっと! 落ち着き!」


「──コ、コンシリエーレ! も、もう大丈夫です! そいつもうくたばってますって!」


 コーサーとカイトーがしがみ付いてくる。

 気づけば、俺は武器も捨てて倒れるリアードドを全力でボコボコにしていたみたいだ。


「フーフー……大丈夫だ、俺はいたって落ち着いている」


 それもそのはず、だってまだこいつは死んでない。

 これだけ殴っても死んでないってことは、俺はうまく手加減できているから理性的だってことだ。

 俺を抑える彼らにそう告げると、


「ちゃうって! ローレントはん、まだスキルつかってへんやろ!? ノースキルで身体強化ガン積みの相手にここまでできる方がおかしいんやて! それも魔法職で!」


「そ、そうですコンシリエーレ! いったん落ち着きましょう! 落ち着きましょう!」


「……わかった」


 彼らに言われるがまま、まだ“死んてない”リアードドは重要参考人として硬く縄で縛っておくことになった。

 あと、なんだかわからんが、少しだけスッキリした。








残念、舐めプではござーせん。

癇癪回でした。笑






カイトー「ほなこというたかて、スキル使ってへん舐めプやん?」


ローレント「<●><●>」



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