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-476-※※※カイトー視点※※※


「と、言うわけで貴方は新入りということで口を合わせなさい」


「は、はいい……」


 メイド長に言われるがままに返事をすると、リアードドがごねた。


「おいおいおいおい!! おいおいおいおいおい!! それじゃ俺の気がすまねぇよ!!」


「……リアードドさん、仕方ないですよ。彼女も親衛隊と同じくらい実験を握る“メイド長”ですから。さすがにいうこと聞いて大人しくなってくれませんかねぇ……」


「なんだよもお〜!! どういうことだよ!! 殺したくてたまんねぇよ!!」


 ワイも殺されたくなくてたまんねぇ。


「では。話はついたということですね。さ、行きましょうか」


 リアードドの癇癪をさらりと受け流したメイド長は、ワイの腕を持つとすぐに道を引き返し始めた。


(あ、あかん……これだと、コーサーとアンジェリックさんが……)


 窮地はしのげたけど、ミッションは終わってない。


(覚悟決めたやろ、なんとか助け出して見せるって)


 それに、ここで根性見せとかな、見殺しにしたってことになる。


(……やるで、ローレントはん)


 心の中でそう宣言すると、すぐに谷間にしまっていた物を取り出して起動させた。

 その瞬間、屋敷全体が大きく揺れだした。


 ──ゴゴゴゴゴゴゴ!!!


「なんだ? どうしたってんだ?」


 コーサーの足をへし折って当たり散らしていたリアードドも、激しい音を立てて大きく揺れる様にうろたえているようだった。


「いったい何が……」


 メイド長もいきなりの出来事に足が止まる。

 それもそのはず、ワイが今しがた作動させたのはニシトモさんとトンスキオーネさんから貰った爆弾や。

 大事そうな支柱にいくつか仕掛けた物を爆発させた。

 屋敷の崩壊まではいかないだろうが、一部分を半壊させるくらいの威力はある。


(その一部分は、まさにこの地下室の周りのことなんやけどな)


「貴方、いったい何を……」


 おのずとメイド長の疑いはワイに来る。

 だが、それよりも先に地下室の崩壊が始まろうとしていた。


 メキメキメキ、ギシギシピキピキ。


 石材で作られた地下室の壁には亀裂が入り、破片が落ちる。

 さらにその亀裂がどんどん大きくなっていく。


(この隙や!)


「きゃあっ! いたーい!」


 メイド長の腕を、ドジなフリして振り切ったワイは転んだフリして部屋の中に入る。


「いたた……」


「いたたって……なんかとことんドジな人ですね。私が嫌いな人種臭がプンプンしますので、あまりにも目障りですと、ターゲットにしますよ? いい加減早く消えてください」


 転んだ拍子にジョバンニの前に出て、とりあえずお色気攻撃かますと、随分と見下したような目を向けられた。

 なんやこいつ……そういえばハザードハザードいっとったけど、もしかしてホモか?


(いるよな、こんな女を敵だって思うとる男……まあええか)


「は、はいいい! 今消えます!」


 ──ボンッ。


 焦ったふりして胸元から煙幕を取り出すと投げつけた。

 ボンッ、と密閉された地下室内に大量の煙が立ち込める。

 外でも使えるタイプの煙幕は地下室で使うとかなりの濃密な煙となる。

 毒性はないが、これだけ濃かったら息がしづらくて仕方ないわ。

 アイテムボックスから濡れた布を取り出して、口と鼻を覆うと、倒れているコーサーを肩に抱える。


(よし、あとはアンジェリックさんだけやけど……どないしよう)


 隣には魔人がずっと立っている。

 なんとか隙をついて助け出したいけど、いけるか?


(ええい、ままよ!)


 室内だから煙幕はまだ保つけど、考えている時間はない。

 すぐにコーサーを抱えたままアンジェリックを……、


「──ダクト」


 ハザードの呟く声が聞こえた。


「ッ!?」


 その途端、密室に満ち溢れていた煙幕が全て、すごい勢いで出口の方向に流され始める。

 煙が晴れて、部屋の真ん中でコーサーを抱えたワイを、ハザードの瞳がジッと見つめていた。


「……神聖な儀式が台無しだ、どう責任を取ってくれる」


「ハザードさん、重要なのはそこですか……?」


 ジョバンニの呆れた声。


「何人たりとも邪魔することは許されないのだ」


 ハザードはワイを見抜きながら杖を手に持ってゆっくりと立ち上がる。

 だが、ゴッ、と壁に亀裂が入ってさらに激しく地下室が揺れた。

 それを見て、まずはこの地下室から出ることをジョバンニが告げる。


「そういえば、こそこそ嗅ぎ回っていた元盗賊ギルドの一人がいましたねぇ……まあ、答えは捕まえて白状させればいいでしょう。リアードドさん拘束してください、一度この場所出ましょうか」


「それって男だろ!? 野郎はタイプじゃねぇが、まあ殺すだけならいいか」


「殺すんじゃなくて捕まえてください。どこから話を聞いていたのか、尋ねる必要がありますしね?」


「チッ」


 舌打ちするリアードド。

 あかんな、完全に行動が裏目に出てバレてしまった。

 コーサーを抱えた状態でこいつらから逃げれる方法は……方法は……一つだけある。


 一日一回の使用制限がある怪盗のスキル。

 その名も──【神出鬼没】や。


 効果は1分間だけ誰にも認識されないようになる。

 要するに姿を消すっちゅうことや。

 ローレントはんのテレポートと同じように、手が触れて持っていれば同じように姿を消すことが可能になる。

 まあ、ワイのは片手に一つだけって制限があるんやけどな。


(そのためには、まず……触れなあかん!)


 コーサーを抱えたままアンジェリックさんにダイブする。

 形はどうでもいい、触れるのが大事なんや。


「あっ! こいつ! また何か!」


「リアードドさん、大丈夫ですよ」


 慌てるリアードドに、余裕そうなジョバンニ。

 魔人は動かないようだし、このままアンジェリックさんに触れて【神出鬼没】を使う。


(やったで、これでワイの完全勝、利……ッ──!?)


 立ち上がってすぐに逃走を開始すると、何者かに腕を掴まれていた。

 魔人だった。


(な、なん──)


「ククク、消えるスキルですか……でも魔人の目は誤魔化せませんね?」


「……」


 クツクツと笑うジョバンニ。

 そして魔人を見ると、真っ赤に光る目がワイを見抜いていた。


 ワイはその瞳に心臓を掴まれたような感覚に陥り、動けなくなる。

 魔人の手は、そのままワイの心臓に……


「……待ちなさい」


 差し迫る、まさに間一髪で、なんとアンジェリックさんが今まで噤んでいた口を開いた。



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