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-475-※※※カイトー視点※※※


「えっと……お食事を……その……」


 わざとらしく震えながら血だらけになって倒れるコーサーに目を向ける。

 ほんま、ようやったでコーサー。


(なんとか、なんとか救い出したるからもう少し待ってぇな……)


「ああ? 頼んだ覚えはねぇけどな?」


「い、いえ……食べ終わった後の……片付けを……」


「だから頼んだ覚えはねぇっつってるだろ、いいからこっちに来いよ、俺と遊ぼうぜ?」


 鼻息荒く、リアードドは近づいてくる。

 やばい、あかんは。

 これ、二度とお嫁に行けなくなる展開なんやない?

 もっとも、ワイ男やけど。


「あ……そ、そこで倒れてる人……」


 とりあえず、幼気なドジっ子メイドを装ったまま、後ずさる。

 リアードドには正直半径三メートル以上近寄って欲しくない。

 男のワイでもこれだけ“ヤバいアカン奴”って思うんだから、本物の女の子やったらどう思うんやろか。


「くくく、まずいところを見られてしまいましたね。でも、あくまで私たちが保証してるのはケンドリックさんたちの子飼いだけですし、それも伝わってるはずなので大人しく回れ右して立ち去りましょうね? ククク」


「あ……あ……」


 そう言うやり取りをしとるのか。

 まだ情報が探れそうな気もするし、足が固まって動けない。

 そんな振りをして時間を稼ぐ。

 ついでにアンジェリックさんの反応も見ておきたい。


「コーサー様はアンジェリック様の付き人としていましたよね……? な、なのになんで……?」


 アンジェリックさんはそれでも黙っただけだった。

 少しだけ、顔に被せられた麻袋が動いたような気もするが、それだけでは表情はわからない。


(なんで黙ってんのや、コーサーがやられてんねんで!)


 ワイの問いかけに、ジョバンニが答える。


「むしろ、普通に出て来てくれれば穏便に済ます予定だったんですけどねえ? でも武器を構えられてしまっては、こちらとしても反撃に出るしかありません。むしろ約束を守らなかったのはそっち側」


 ジョバンニはクツクツと笑いながら言葉を続ける。


「大人しくしてくれているアンジェリックさんに免じて、殺すのだけは見逃してるんですよ」


(嘘やろ!? モルモットって言うてたやん!)


 反吐が出るような言葉を並べ立てるジョバンニ。

 でも、理由づけとしては向こう側に一理ありそうやった。

 今のワイはケンドリック陣営の一人のメイド。

 さすがにこれは回れ右して口をつぐむしかないんやろうな。


(でも、助けたる。何としてでも、や)


 これ以上迷惑はかけられん。

 根本的な原因がワイにあるから。


(ここで引いたら……一生顔向けできひん)


「おいおいおいおい、せっかく遊びに来てくれたのに追い返すのはあんまりだろ?」


「リアードドさん、ナンパ失敗してますし、さすがになんの罪もない彼女に粗相すると、こっちが下手に出るハメになりかねないので、落ち着いてくださいよ……」


 興奮して鼻息をさらに荒げさせるリアードドを、ジョバンニがやれやれと言うふうになだめる。

 そこで閃いた。


(一か八かや)


 男としては屈辱的やけど、今のワイは女……女……。

 リアードドはなんやえらい興奮しとるみたいやし、そこを突くことにした。


「あ、ぁあ……きゃっ……」


 思わず尻餅ついたふりして、太もも、そしてインナーを見せる。

 ……ドヤ?

 プライド削るワイのお色気シーンやで?


「チッ、もう我慢できねぇよ! さっき殺しのお預けくらったんだから、いいだろ一人くらい! どうせ闘技大会終わったらここもさっさとズラがるし、別にもういいだろうが!」


 めっちゃ効いてるやん!

 このままリアードドを撹乱して、逃げる振りしてコーサーとアンジェリックさんを連れてなんとか脱出したる。


「そ、その……あの……ひっ……」


 それからワゴンに縋って立つ振りして思いっきり転んだ。

 ケツとインナー丸出しや。


「リアードドさん……全くもう……本当に止まりそうもありませんね。少しプランが前後しますが、まあこれも誤差の範囲でしょう。好きにしてください」


 そんなジョバンニの許しを得たリアードドは、ケダモノみたいに笑いながらゆっくりと近づいて来た。


「いいぜぇいいぜぇ、好き放題できるから裏にいんだよ! 戦ったら最後はどっちかが死ぬまでやんねぇとな! そこの雑魚は殺せなかったし、まあ女で碌に戦えそうもないけどワンコロの数に数えとくぜええええ!」


「ひっ!? わ、わんころ……!?」


「一日一回殺しのことだよ。略してワンコロだぜ?」


 あかん、選択間違えた。

 欲情煽るんじゃなくて、殺意衝動煽ってもうた。


「テメェを殺して貪ってやるよ!」


「ひっ!!」


 もうあかんと思って、頭を抱えてうずくまる。

 だが、いくら覚悟を決めてもリアードドの攻撃は来なかった。


「──やめなさい」


 キリッとした声がする。

 ゆっくり目を開けると、ワイとリアードドの間にメイド長が立っていた。


(め、メイド長ううう!!)


 ってかさっきほんまもんの女の子みたいな悲鳴が出てしもうたわ。

 暴力振るわれる女の子って、こんな気持ちなんやな……。


「……あああん!?」


 おもちゃを取られ癇癪を起こした子供のように唸るリアードドに、メイド長はメガネの内から冷徹な視線を浴びせる。


「やはり、裏ギルドの方々は品が無いですね」


「チッ、今いいところなんだからどっかいけよ」


「契約ではこちら側の人間に手を出さないはずでは? 複合イベントで拠点での戦闘が解禁されている今、本来であれば貴方達のような危険な輩は、街にすら入れないところを匿ってあげているのですよ」


「…………おい、ジョバンニ」


 捲し立てられたリアードドは、言い返す言葉が思い浮かばないのか、すぐにジョバンニに視線を向けた。


「……はぁ……勝手にやっておいて面倒なことは私ですか……。時にメイド長さん、ここには誰も近寄らせない。そんな約束ではありませんでしたか?」


「そうですね。でもこの子は入ったばかりの新人で、さらには少し抜けているところがありますからね。私も貴方達の粗相は見逃しますから……ここは一つ、いかがでしょうか?」


「め、メイド長……」


 なんでワイが新人やって思ったんや。

 もしかして、バレてたんか?

 不安な表情が顔に出ていたのか、メイド長が顔を近づけてそっと耳打ちしてくれた。


「貴方が本当は新人でもなくただの部外者だってことは顔を見ればわかります。だってここのメイドグループは全て私が面接し、管理しているのですから」


 バレてたみたいや。


「まあ泳がせていたのですが、貴方はそれなりに使えます。親衛隊の皆様のところへ食事を運んだら、かなり良い雰囲気でいらっしゃいまして、メイドを褒めておられました。故に使えると判断しました。もしリアルで転職する気があるのならば、私の元へ来なさい。そしてこれからも私とウノ様の間をとりもつ役目をおいなさい」


 え……なんか知らんところで勝手に話が進んでるやん。

 どういうこと。


 メイドを褒めるって、多分親衛隊ナンバーズの人、食事ぶちまけたワイを哀れに思ってのことじゃ無い?

 多分和やかな雰囲気ってウノが持って来た猫画像見て癒されてただけやろうし……まあ、恋の前には乙女は盲目ってか?

 とりあえず、なんとかなりそうやしこのままにしとこ。


「と、言うわけで貴方は新入りということで口を合わせなさい」







コーサーよりも存在感あるメイド長。

雰囲気は、キャリアウーマン。


リアードドはコーンロウをボツボツに結んだ奇抜な髪型を想像してください。



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