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-473-※※※カイトー視点※※※


 親衛隊ナンバーズの元へ無事に食事を乗せたワゴンを届けたワイは、食べ終わる頃に片付けに伺いますと適当なことを告げて、空のワゴンを押したままそのまま地下室を目指した。


 食事を持って行って「あ、間違えましたぁ」なんてルートも存在したんやけど、時間がかかってしまった際、食事がいつまで経っても来ないと怪しまれる可能性がある。


 だから、可愛い可愛いドジっ子メイドの振りして、ナンバーズに媚びを売りつつ、「あれぇ? 迷っちゃいましたふぇぇ〜」と地下室に侵入する。


 なんや、完璧やん。

 ちなみにナンバーズにはもうタネは撒いてある。


 もし、地下室に行ったことを怒られたり、言及されたりする場面が出てきたら、さっき食事を持って行った時に予備の食材(ぶち撒けてもええやつ)を盛大にひっくり返してパンツ見せといた。


 ドジっ子パンチラ天然メイド。

 紳士的なナンバーズはワイを前にしてジェントルメン気どっとったで、なにが子猫ちゃんや。

 変態ジェントルメンか。


 細かな設定にこだわる、それが矛盾を生まない大事な要素。

 なりきるという一点においては、ワイの右に出るものはいない。

 そう、いないんや。


「……トランプでも占いってできるのか? 普通、タロットカードとかじゃないの?」


「できる」


 地下室の扉の前に音もなく忍び寄ると、そんな会話が聞こえてきた。

 上位の【潜伏】スキルは足音も消してくれてほんま便利や。

 それから、盗賊系特殊派生職業“怪盗”に許されるスキル【空間看破】を用いる。


 盗賊系職業には、宝箱の“中身”がどうなっているのか判断するための【判別】というスキルがある。

 怪盗職についてからは、そのスキル効果が大きく伸び、人の配置や足取り、までわかるようになった。


 地下室の人数は……1、2、3……4、5……5人……いや、もう一人おるな、6人か?

 その内黙っているのが4人で、残りの2人がえらい騒いどるみたいやな。


 箱の中に体操座りする奴、突っ立ったまま微動だにしない奴、その隣でじっと座らせられている奴、黙々とトランプタワーを作る奴。

 喋る二人以外からは、全く情報が探れん。

 つーか、なんやこいつら、頭おかしんちゃうか。


「これ以上近寄るとぶち殺すぞ? いいか? 近寄るんじゃねぇ」


「あなたたちが私の話を聞かないからですよ。でも安心してください、この飲み薬は飲むと三十秒だけ達人と同じ空間にいるような時間加速状態に入ることができるものですから」


「……それ、飲み物なのか? だからにじり寄ってくるなってば!」


 ガッチリとした鉄の扉越しからでも中にいる奴らの声はよく聞こえてきた。

 なんや、盗聴スキルもいらんくらい、敵さん油断してるやん。

 それにトラップの類も警戒していたが、そんなものすらないようだ。


「とりあえず試飲をお願いしますよ、リアードドさん」


 なにやらまだ話をしとるみたいなので、もう少し話を聞いて情報を得る。

 動画撮影機能を使用すると、最近だと撮影しています、されています的なメッセージが来るらしい。

 だから、撮影は行わずしっかりと記憶し、メモ帳か何かにすぐ記入していく。


「テメェ、こないだもそれでバッドステータス20個くらいついたんだけど」


「それでもHPもMPも十倍くらいになったでしょうに?」


「ピーキー過ぎるんだよ」


 確かにピーキー過ぎやろ。

 薬とか言っとるみたいやし、一人は錬金術師プレイヤーとかそんなんやろか。

 それでもう一人は実験役の苦労人。


 ってかさっきから二人で会話して、残りの四人は全く無反応。

 いったいどう言う空間なんや?

 ツッコミ役が足りてへんのちゃうんか?


「ちなみに適当な雑魚魔物で試してみたんだよな?」


「ええ、ギジドラさんに頼んで手伝ってもらったんですが、彼の制御を超えるくらいに蟻が強化暴走してギジドラさん殺されちゃいましたよ?」


「……あいつ、最近運悪いな。で、それだけ強化されたその後は?」


 ッ!

 何気ない会話を聞いていると、ワイもよく知るPKの名前が上がった。

 この間、ワイとローレントはんに蟻を嗾けて、そのまま武神の怒りを買って第一拠点ごと滅ぼされたあいつやん。


(ビンゴやな……これで100%ここが裏ギルドの拠点ってことで間違いないわ)


 予想が確信へと変わっていく。


「まあいいや、とりあえずそろそろ時間だからいくぞ。祭りだろ?」


「祭り……ですか……そうですねえ、そろそろ時間ですね、ククク、リアードドさんは先に行っていてください」


「先に? テメェが魔人を連れて来ないと始まらないんじゃないのか?」


 それからも彼らの話を聞けば聞くほど、この地下室に集まっているPKが裏ギルドの、いや今回の騒動の事の発端だってことがよくわかった。


(ほな、場所をみんなに伝えるか?)


 時間を見ると、すでに乱闘イベントが行われている真っ最中。

 確か今頃ローレントはんたちは乱闘イベントの参加したPKを叩きのめして情報を集めとる最中や。

 なら、こいつらの後を追いながら、もう少し情報を集めよう。

 余計な情報は、逆に混乱させるもんや。


 完全に、完璧に、正しい情報だと確信を得てからみんなに渡すんが、ワイのポリシー。

 そして……罪滅ぼしや……。


「なんか、こうしてみるとキモいうえにすごい悪い奴だな」


「私の評価は私とハザードさんが決めるので、なんでもいいのですよ」


「なんかすごい極論だな。まあ俺もそっち側だけど」


 そう言って適当に話を切り上げた一人が、扉に向かって歩いて来る。

 ここの張り込みもこれで仕舞いやな。


 扉らから出てきたところで鉢合わせたろ。

 そんで「あ、えっと、お客様ですかぁ?」的な感じで食事を取りに来たんですが迷いました、ってな具合でリアードドとか言われるツッコミ役の男に接近や。


「あ、待ってください」


「なんだ?」


 ジョバンニと思しき男の言葉で、リアードドの足取りが止まった。

 ついでに、ワイの心臓も止まりかける。

 こういうパターンって、確か発見された時やろなあ、なんて思っていると。


「モルモットが一人、いるみたいなのでそれを処理してからお願いします」


「へえ」


 ほら、来よったで。

 完璧な作戦やと思ったけど、しもうた、バレたわぁ。

 まあ一筋縄でいかんのは、すでに予測済みや。


 こう言う事態のために用意して追いた秘策のカードを切ろうと思ったが、その前に部屋の中で喋りもせず動きもせず、箱の中にずっと座っていた一人が立ち上がったようだった。


「チッ、見つかったからには仕方がない」


 その声は聞いたことがあった。

 確か、ローレントはんのところにおったコーサーっていうNPCじゃなかったっけ。

 なんで、こんなところにおるんや……?


「なんだぁ? いつからいやがった?」


 そう問いかけるリアードドに、コーサーは怒りが抑えきれないような声色で言い返す。


「外道に返す言葉なんかない。貴様らは大人しく拘束されているそこの女性を解放しろ」







コーサー久々に登場。





コーサー「ずっとスタンバッテました」

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