-472-※※※カイトー視点※※※
■時間は少し巻き戻って、カイトー潜入作戦です。
(ケンドリックはどっちかと言えば騙された側やったし、てっきり敵対しとると思ったんやけどな……)
イベント会場で売り子のふりして情報収集をしていたワイは、ついに裏ギルドの潜伏先を場所を発見した。
安い情報を持たされたPKのおかげでえらく遠回りすることになったのだが、ついにやったで。
(ほんま、ここまでたどり着くのに骨が折れたわぁ)
ノークタウンでの情報撹乱は盗賊ギルドの入れ知恵だろう。
元盗賊ギルドにいた身としては、一人でそのギルド相手に情報収集して辿っていくのは骨が折れた。
と、言うよりも監視の目が強すぎてなかなか上手くいかなかった。
ローレントはんやトモガラはん。
あと、モナカはん十六夜はんが、ノークタウンにいた監視の目をある程度潰してくれたおかげで、なんとかここまでたどり着けたって言うのもある。
もっとも、最終的には急に行われたケンドリック騎士団の配置替えから辿ることができた。
ナンバーズとかいうケンドリックの親衛隊が一部残してみんな拠点に戻って、ふと、一応ケンドリック街も調べてみようと思ったことが、糸口となったんや。
(こんな大きな一軒家を地下を貸すなんて、相互不干渉でも約束してるんかな?)
今、メイドになりきって潜伏しているのはケンドリックの拠点の中でも一番大きな屋敷。
たしか、ケンドリック自身が居を構える場所や。
なんやら、メイドとか、お抱えの騎士とかいっぱいおるけど。
噂のままで行くと全部ケンドリックのリアル従者達とかなんとか、ほんまかいな。
「あなた、いったいどちらへ?」
ワゴンを押しながら廊下を歩いていると、きりっとしたメガネに髪をまとめたメイドに呼び止められた。
確かこの人は、メイド長とかいう肩書きを持っているプレイヤー。
「休憩中の親衛隊の皆様のところです。お食事を運ぶように言われておりますので」
「そう、私が代わりに持っていきましょう」
「え?」
あかん、まずい。
ワイの食事を運ぶ振りして屋敷を嗅ぎ回る作戦がお釈迦になる。
「いやいや、メイド長様のお手を煩わせるわけには……」
「いいえ、私が持っていきます」
やんわり断ってるのになんてこの人、頑なに持っていこうとするんや。
普通にこう言う雑務は格下メイドに任せ溶けばええねんな。
「えっと、その……メイド長からの差し入れですってウノ様に言っておきましょうか?」
「……」
メイド長の目つきが変わる。
お高く止まったような、キリッとした鉄仮面。
そのメガネの内側がやや赤く染まったように思えた。
(ああ、なんやメイド達が噂しとったメイド長が最近ウノさんに惚れている疑惑はほんまやったんかいな)
「なぜ、ウノ様が出てくるのでしょう?」
メイド長はすぐに元の鉄仮面に戻って、ワイにそう言った。
さすがメイド長、手強いやん。
「あの……私……そう言うのがわかるんです……昔っから……」
適当に言い返しておく。
なんか人がくっつくくっつかないに敏感な女の人とかいるし、ごまかせるやろ。
ごまかせなかったら、バレた時を想定して用意しといたアレを使うだけや。
「ほう……あなた、素晴らしいですね。それが通用するのは女性だけですか? 殿方にも通用しますか?」
思った以上にメイド長が食いついた。
「男性にも行けます。私オリジナルの恋占いはかなり当たるって学生の頃評判だったんです」
だってワイ、男やし。
とか思いながら、適当にでまかせを言っていると、メイド長がピッとメモ帳を切って渡してきた。
「えっと、これは……?」
時間の書かれたメモ切れを受け取りながら首を傾げていると、メイド長がぐいっと顔を近づけて小声で言った。
「担当の時間が終わり次第、この場所で落ち合いましょう。作戦会議です」
「さ、作戦会議?」
「ちなみにこのことは私たちだけの秘密です」
なんと、リアルで会ってウノを落とす手伝いをしろと言うことだった。
「わ、わかりました! ちなみにお食事はメイド長様からだとウノ様に伝えますか?」
「そうですね、いきなりウノ様の分を私からと伝えると、周りに変な誤解を生んでしまうかもしれませんので、あなたは平然としながらそれとなくウノ様のことについて探ってください」
「は、はい」
「では、よろしくお願いします」
それだけ言うと、メイド長はスッと出で立ちを正してカツカツと廊下を歩いて行った。
「おっと、忘れてました」
そう言いながら振り返るメイド長。
なんや、まだなんかあるかいな。
「私、泥棒猫は許しませんよ? 私、猫アレルギーなので」
「は、はいぃ〜」
目つきが鋭くなって、このままいくと面倒だと思ったワイは適当に笑顔を返すと、すぐにワゴンを押してそそくさとこの場を後にした。
泥棒猫なんかするかいな。
男やぞアホ。
っていうか、恋する乙女はほんま怖いわぁ。
なんか、ローレントはんの周りにおる女性陣を思い出した。
ローレントはんも、よくあの中で仏頂面を保っていられるなって思うわ。
そしてその後は何事もなく親衛隊の元へ食事を運んだ後。
いよいよきな臭い屋敷の地下へと侵入した。
ちなみに親衛隊の皆さん。
ウノがこっそり集めている猫画像を見ながら和やかな空気で、
「あの猫可愛い」「キジトラだろ」「三毛猫だろ」
なんて会話しとったで。
ほんまメイド長、ご愁傷様。
メイド長「……来ないわね……あの子……」
あとがき小話。
口絵とか諸々のデザインラフをいただいてるんですが……正直めっちゃかっこいいし、すごいです。
ひええええ〜しゅごぉ〜いいいい!!
って感じの凄さといえばいいでしょうか?
とにかくイラストレーターさんに感謝感激の大嵐でございます。
早く活動報告にキャラデザ解禁されないかなぁ。




