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掻い摘んでブランドの話を要約すると、アンジェリック親衛隊解体とともに、そのままアンジェリックの連絡が取れなくなってしまったらしい。
厳密に言えばリアルで連絡を取ることは可能なのだが、アンジェリック本人は部屋にこもりっきりで理由を教えてくれず、上司であるケンドリック親衛隊のナンバーズも「命令だ」以外の言葉を話さなかったとのことだった。
話を聞いた生産組一同はみんな困惑している。
さもありなん。
ついさっきまで、闘技大会の前に行われる乱闘イベント。
それが始まる直前まで、彼らはアンジェリク親衛隊に護衛されていたのだから、話があまりにも急すぎるといったところだった。
「な、ナンバーズって何ですかね……?」
何となく重たい空気の中、ツクヨイがこっそり訪ねてくる。
「確か序列だった気がする」
ウノ、ドス、トレス、クアトロ。
重用する家臣みたいな連中は、プレイヤーネームの他にそうやって自分たちを呼び合っていた。
ちなみに第一拠点の村議会に潜入して来ていたやつらはセイスとシエテ。
本当にかき乱してくれたよ、あいつら。
結局盗賊ギルドに裏切られて殺されていたような気もするが……。
「リアルで大丈夫なら……そんなに心配することないんじゃないかな……?」
激情家のイシマルは、ブランドの嘆くような話しっぷりに感激しているっぽいが、割とロマンとともにリアリスト的なものも持ち合わせている、いわゆる肝心なところでビビりのミツバシは彼らの内輪もめに絡みたくなさそうにそう言った。
「いえ、我々はゲームのことはリアルに持ち込まないことを条件に活動しています。なのでゲーム内のことはゲーム内でしっかりカタをつけろということなのです」
「あ、ああそう……そんな感じなのね……」
「それに、上からの命令にしても私は未だに納得できません。アンジェリック様でしたら、事前に何か言ってくださるはず、言ってくださるはずなんです。それが……こんな……いきなり解散命令だなんて……」
ブランドは両膝をついて力なくうな垂れた。
小脇に抱えていた兜が床に落ちて、静かな空間で大きな音を立てた。
「何かしらのクエストなのか、何なのか……見当もつきません。なので私は失意の中、ノークタウン巡回中にあなた方を見つけて藁にもすがるような思いだったのです……」
「でも確かに、私たちのフレンドリストからも彼女の名前が消えてるわね」
「おいおい、俺のもだぜ?」
「わ、私もです!」
ブランドの話をあらかた聞いた後のレイラが呟く。
それを聞いた各々がフレンドリストを確認すると、ここにいる全員のフレンドリストからアンジェリックの名前がなくなっていた。
「……まじかぁ、いきなりぶった切られると……少し心が痛いな……」
ミツバシが寂しそうな表情をする。
確かに、割と傲慢で強引なところもあったアンジェリックだが、やることはしっかり責任を持ってやる。
思い返せば、至れり尽くせりで馬買ってもらったり、戦い手伝ってもらったりと、協力してもらえた。
そう考えると……ミツバシの寂しがる気持ちもよく分かる。
何だろうな、この気持ち。
あれだ、ローヴォがデスペナルティした時と同じ感じかな。
「何かあったのは確かなようね。さすがに全員のフレンドリストから名前が消えてるっておかしい話よ」
「このまま行くと、我々はアンジェリック親衛隊、さらに現実での従者の立場まで失ってしまうかもしれません。いえ、配置換え異動に関しては仕方がないことなのですが、受け入れるための理由がどうしても欲しく……その、何とか最後にアンジェリック様からのお言葉を直接聞きたいのです……」
ブランドは両手両膝をつき頭を下げながら言葉を続ける。
「私的な依頼になりますが、どうか受けていただけないでしょうか。アンジェリック様を探して欲しいのです。会えなくても、せめて事の顛末だけでも聞いて来てくだされば、それで我々アンジェリック親衛隊は満足できます」
「……お、おい……流石に土下座は……」
騎馬隊を指揮して、勇猛にマフィアやレイドボスに挑んて来たブランドの姿をしる俺たちからすれば、到底想像もつかないような光景だった。
「ナンバーズの監視が付いている現状。こうして頼めるのは今この場しかないのです。どうかお願いします。立場的に我々が見つけ出すのは非常に困難なのです」
ここまで頼みこまれたら流石に断れるほど冷徹な人間は生産組にはいない。
「おらぁやるぜ、上司を思ってここまで頭を下げれる人間なんてなかなかいねぇ! それに困ってる人間をほっとけないってのもある! 力になれるかはわからねぇが、石工所の伝手に色々聞いてみらあ!」
特にイシマルなんかは、彼の土下座に感化されて酒の入ったジョッキでダンッとテーブルを叩くと立ち上がっていた。
「……流石にそこからは情報は引っ張れないんじゃない? 見当違いを探しても意味ないわよ?」
セレクが冷静にツッコむ。
確かに俺もそう思う。
っていうかみんなもそう思っている。
「うーん、とにかく探すだけ探してみるけど……難しそうよ? ローレントがいたらフレンドリストからテレポートできて簡単に済むかと思ったんだけど、フレンド切られてる今となったら……うん、しらみつぶしに情報をかき集めるしかわないわよね」
テレポートと聞いて、ブランドが俺をすごいキラキラ眼差しで見つめるのだが、フレンドリストを切られてしまっている状況ではそれが使えないと聞いて、一気にうなだれて力なく床に突っ伏していた。
「三下さんどーする?」
「何で俺に振るんだよテメェ」
何となく後ろで興味なさげにちびちびオレンジジュースみたいなものを飲んでいた三下さんに話を振ってみた。
「なんとなく、良いアイデアないかなって思って」
「俺は生産組じゃねェから思いっきり蚊帳の外なんですけどォ?」
「そんなこと言わずに、さ」
生産組からはなんだかんだ一線引いたような態度を取っているが、三下さんならこういう頼みごとは愚痴りながらもやれやれとだるそうに引き受けてくれそうな気がしないでもない。
「チッ……」
予想通り、三下さんは気だるそうに舌打ちしながら案を出してくれた。
さすが三下さん。
「アンジェリックにはローレント、テメェの貧弱な舎弟が出向してたろ? そいつのところにテレポートすれば手っ取り早いんじゃねェの?」
「確かに」
「おお、そういえばコーサーさんいましたね! アンジェリック様の元で従者見習いをしていたコーサーさんも、同時期に姿が見えなくなったので、もしかすれば!」
ブランドがガバッと起き上がって目を輝かせるが……。
「すまん、テレポート対象外だ」
ブランドは再び突っ伏した。
すまんブランド。
ぬか喜びさせて本当にすまん。
「だが、人探しなら得意な奴がいるから、そいつに頼んでみるか」
「ニシトモかしら?」
俺の言葉にレイラが反応する。
続いてミツバシも、
「確かにニシトモなら俺たち生産組の中でも、いやプレイヤーの中でもトップクラスに顔が広いし、何かしらの情報を聞けるかもしれないな!」
と、言うのだが、違うな。
確かにニシトモも加えて捜索するなら格段に効率が上がるだろう。
だがそれよりも、もっと手っ取り早い奴がいる。
「カイトーとか、情報収集にかけてはニシトモよりも長けている」
何か知っていたらその場で聞けばいいし、わからないようだったら探ってもらえばいい。
生産組が動くと周りに広まる可能性がある。
俺が懸念するのは、もしアンジェリックが自ら彼らの元を離れたとか、そんな感じだったら、余計に目立つとアンジェリックの方からどんどん距離を取ってしまう悪循環に陥ることだ。
カイトーだったらソロで潜入したり裏からこそこそ動くことに長けていて目立たない。
「あんた意外とやるわね」
考えを伝えるとレイラに褒められた。
意外と、と言うのがどう言う意味なのかわからんがとりあえず褒め言葉として受け取っておく。
「よし、なら行ってこようかな」
フレンドリストを確認したら、まだログインしているのでカイトーの元へ転移しよう。
それに、裏ギルドのことで責任感じて、色々と一人で悩んでいるみたいだったし、ここいらで一旦裏ギルド関連から外して別のことを任せるのも気分転換になるだろう。
ローレント、動く。
っていうか、闘技大会やってるのに。
全く関係ないところで話が進む。
トモガラは一人で予選に出ています。笑




