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「ん、なんだなんだ?」


 みんなで話していると、闘技場外周の屋台群にいるプレイヤーやNPCの間を割って、物々しい集団が隊列を組んで歩いてきているのにミツバシが気づいた。


 進行方向には俺たちのたむろする席があって、すごく悪目立ちしていた。


「そのプレートアーマー……ケンドリックのとこのであるな……?」


 ガストンがすぐに気づく。

 純白の白いフルプレートアーマーは、まごうことなくケンドリック陣営のものだった。

 急に現れたある意味最初から敵対していたプレイヤー陣営に、ガタガタッとミツバシ、イシマルの二人が立ち上がって目つきを鋭くし警戒する。


「警戒しないでいただきたい。私どもはアンジェリック様の部下になります」


「……紛らわしいな。アンジェリックのところのか」


 発せられた声は聞き覚えのあるもので、アンジェリックが親衛隊として連れていた騎士隊の隊長を務める男のものだった。

 その声を聞いたミツバシはほっと胸をなでおろす。


 最初は、何処かの国の数字に当てた格付けがケンドリック親衛隊にはあって、そのいずれかの番号のプレイヤーが基本的にお付きのものとしてアンジェリックのそばにいたが、それはいつのまにかなくなり、アンジェリック親衛隊として新たに組織、そしてその組織の隊長として、レイドボス強襲の時やさらにはペンファルシオとの戦いの時に度々手を貸してくれていたのがこの男──『ブランド武下』である。


 みんなブランドとかブランドさん。

 もしくは隊長って呼んでる。

 誰も武下って呼ばないんだ。

 謎だ。


「……騎士隊の鎧は別のものだったはず。なぜ、ケンドリックの親衛隊の鎧を身につけているのである?」


 ガストンが彼らのいでたちが少し違うことに気づく。

 確かに、前まで身につけていた彼らの鎧は、地味にガストンが手を加えてアンジェリックの考案したアンジェリック紋をつけていたものだったのだ。


「それにつきまして、少しお話がありまして」


 そう言いながらブランドはガストンに顔を近づける。


「ここでは話せないことなので、少しご同行をいただけますでしょうか……?」


「同行? ……まあ、なんだか物々しい雰囲気だからとりあえずいくか?」


 彼らのことを生産組は信用している。

 ミツバシは同行という言葉に一瞬訝しむような表情をするがすぐに戻り快く頷く。

 レイラ達も、この場は確かに人が多いということで承諾した。


 それを聞いたブランドは、立ち上がって周囲を何度か見渡すと、


「おい、連れて行け!」


「ちょ!? はあ!?」


「痛っ! 乱暴しないでくれる? 今イベントで街中でもキルおっけーなんだから!」


 配下の者に指示をだして俺たちを荒々しく連行するように指示した。


「チッ」


 三下さんが面倒くさそうに立ち上がる。

 俺も、寝返りを警戒して武器をすぐに取り出せるように構えるが、


「……誠にすいません。今だけは、信じて私どもに従っていただければと思います。あとで、あとで話しますから」


「…………」


 何か事情があるのだろうか。

 三下さんも同様に小さく耳打ちされて、舌打ちしたまま素直に連行されることを決めたようだった。

 その気になれば俺と三下さんで全員返り討ちにできるだろう。

 十六夜もモナカもいるし、とりあえずこの手荒な歓迎の理由はあとで聞かせてもらおう。







「そのまま中へ連れて行け」


「ちょっと、痛いわよ!」


 俺たちはノークタウンの裏路地へ入り、ずっと奥へ進んだ民家のような場所に連れてこられた。

 ぐいっと無理やり中に入れられたレイラが抗議の声を上げるが、部下の者にさらりと無視される。

 民家の内部は小さなバーになっていて、そのカウンターの奥の頑丈な扉の先にはかなり広めに間取りが取られた隠し接待室みたいな場所が作られていた。


「よし、私以外のものは全て外で待機だ」


「しかし、それでは隊長が危険ではありませんか?」


「いや、大丈夫だ。私は彼らに少し縁があるからな、必要な情報はこっちで掴める」


「しかし!」


「そのための条件が、私が一人で会話することにある。だから黙っていうことを聞いて外で待機しろ!」


「ハッ!」

 

 ブランドは付き従っていた配下の連中を適当に丸め込んで外に出すと、俺たちをソファに座らせ、


「本当に申しわけありませんでした!」


 すぐに腰を九十度に曲げて謝罪をした。

 彼は兜を外し、小脇に抱えている。

 ケンドリック陣営の騎士は滅多に兜を取らないから、それが最大限の礼なんだそうだ。

 兜を外したブランドは、髪型をしっかり整えたイケメンである。


「……理由が先よね? とりあえず謝罪はこの店の酒でチャラにするわよ」


「まあ、俺もそれでいいぜ」


 ワーワーわめていたレイラとミツバシは、あっけらかんとした様子でブランドの謝罪を受け入れていた。

 どうやら先ほど、この二人にはブランドがメッセージを簡単に送っていたらしい。


 ガストンは持ち前の洞察力で何かあったのだろうと察したそうだ。

 鎧の件で一番付き合い長かったから、ある意味当然っちゃあ当然だな。


「紛らわしいぜェ、俺にもメッセしとけよォ?」


「確かに」


 事前にそれさえあれば、わざわざ気を張る必要なんかなかったんだ。


「すいません。あの会話の一瞬だと、メッセージを送るのに時間が取れなくて。最大戦力であるあなた方には私が直接説得した方が早いと思いまして……すいません」


 断じて説得では無いのだが、それだけ彼が切羽詰まっているというのがよくわかった。

 手荒な真似をしたことを深々と謝罪するブランドは、事前に配下の者を全て外に出して


「この鎧を見て分かる通り……アンジェリック親衛隊は解体されました」








更新遅れました。

すいません。





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