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「そういえば、お前らダンジョンの一番奥のボス倒してたよな? お宝ゲットの瞬間は写せないっぽいから見れてないんだけど、何かいいものあったのか?」
「ハァ? どこで誰が見てるのかわかんねェのに、教えられるかよォ?」
「えぇ、せっかくダチになったんだからいいだろぉ? なあなあー?」
「誰がダチだよ! チッ……、ヒントだけだ。宝箱からの取得アイテムは、それぞれが一番欲している物になる傾向がある。それから察せんだろ?」
ミツバシの言葉に、適当に寛いでいた三下さんは、耳をほじりながら悪態をついて面倒臭そうにしながらもきっちりと返事をする。
ちなみに俺は倒していないが、なんだかわからんけど中ボスであるPKを相手したってことで倒した仲間内にいれられている。
俺とフィーの戦いももちろん映像に映されていたらしいのだが、NGワードが入ったからとかそんな理由でぷっつりと切られてしまったらしい。
それと同時期くらいに、ダンジョン最奥の巨大ガーディアンが出没したらしく。
みんなそのガーディアンを討伐する三下さん、モナカ、ツクヨイ、十六夜に関心を奪われたようだ。
まあ、こっちとしては変に悪目立ちしなくてよかったかな。
カメラがあるってことで、PKの活動にも色々と支障をきたせばいいのだが、上位にいるPK陣営はカメラで映されていても平気で、居心地が悪いとは感じないだろう。
むしろ悪目立ちした方が、活動拠点がでかくなるにつれて生きやすくなるかもな、裏からのスカウト合戦が始まるぞ。
この闘技大会は、もちろんNPCだって見ているのだからな。
テージシティの内乱は魔人が作用していたにも思えるが、その本質は人間の邪悪な部分を少し揺さぶったにすぎない、そして魔に取り憑かれたように悪事を働く。
ゲームの世界も、現実とそう変わらないもんだ。
現に、俺もトンスキオーネ達と共に、ナガセを裏からPKの囲い込みを行なっている最中だったりする。
同じ穴の狢なのだろうが、敵戦力を削るにはこっちで溜まり場を準備して徐々に放り込んでいくしかない。
……足りるかな、PK軍団をマフィアとして一丁前にカッコつけさせながら活動させる場所を作る資金。
お金が足りないような気がしないでもない、がニシトモに粘ってもらおう。
実を言うと、そっち側に立ちたいプレイヤーが実は多い。
PKじゃなくても、興味本位にやってみようかってプレイヤーも多くいる。
日頃のストレスとゲームで対人にぶつける人は多いからなあ。
そう考えると、フィーが言っていた裏ギルド側が何か大きなことをしでかす。
これは、いかんともしがたい。
今はPKは取引とかあまり普通のプレイヤーやらNPCに相手してもらえない現状があって、その上でニシトモの経済制裁がテンバータウンで成り立っているのだが、彼らの活動拠点ができたらどうする。
仕返しの意味がなくなって大損だな。
「まあ、どうでもいいか」
そっちのことは考えても仕方がない。
と、言うよりもすでにできているだろうってこともありうる。
裏ギルドに、ケンドリック陣営に。
PK側に手を貸す奴らは多いだろうし、うーん。
面倒だから出会ったら適当にぶっ倒す。
「これでいいか……」
「……何さっきからブツブツ独りごと言ってんのよ?」
レイラがジト目で俺を睨んでいた。
思考が漏れていたようだ、失敬。
「ちょっと! 兄弟子のくせに私の新武器のお披露目を見守らないなんてどう言うことでやがりますか!?」
「……その杖、もう見たしなあ」
三下さんは教えてくれなかったが、ツクヨイ、十六夜、モナカは教えてくれた。
「ほぉ、エピッククラスアイテムであるか……」
ツクヨイがゲットしたアイテムは【常闇の杖】という闇属性に大きな補正を持つ杖である。
「ですね、本来はユニークとかレジェンド、もっと強いアイテムが眠っているそうなのですが、あくまでお試し版ということで、取得アイテムは格下げされていたらしいです」
「ふむ」
興味津々でツクヨイの杖と十六夜の手に入れた【大鷹長弓】を触るガストンのつぶやきに、十六夜がそんな言葉を返していた。
ちなみに俺は、なぜか【壊れた魔核】というものを手に入れていた。
エピッククラスのアイテムではない、倒してないからしょうがないのだが、ガーディアンより絶対フィーの方が強かったんだから、せめて何か武器とか装備をくれと言いたかった。
【壊れた魔核】
迷宮の守護者であるガーディアンの動力源。
壊れているため、今のままでは動かない。
別称で、《???帝国》では鉄の心臓とも呼ばれている。
またよくわからんアイテムだ。
鉄の心臓……?
そして《???帝国》だって……?
全然知らん。
だが、ある意味武器より面白いかもしれん。
現状武器なんて、爆発物と羅刹ノ刀、そして戒人の六尺棒で事足りている。
地味に控えとして魔銃と組み合わされた弾機銛の最新版。
その名も銃銛。
っていうのも、ある。
銃槍ではなく、銃銛だ。
拳銃の先からハントスパイダーの糸を限界までセレクが強化したしたものと同時に、ガストンお手製の高レベル貫通属性を持った銛先と、突き刺さったら中から返しが展開して外れないようにする機構をミツバシが作る、まさに、釣りがスポーティなハントと化してもいいくらいの、とんでもない合作なのだ。
どういう原理か知らんが、引き金を引いたら射出。
そして引き金をもう一度引いたらシュルシュルと戻る。
限界対応重量1トン。
さらに引き戻しは300キロまで可能だということで、虎の子のアイテムとなっている。
使う機会はまだ訪れんが、いつか来るだろう。
隠し持っておこう。
「壊れた魔核……であるか……さすがにわからないのである」
「ガストンでもか」
「すまないのである。だが、闘技大会が終われば王都であろう? 図書館の規模も大きくなりそうである、そこで知識は貯めておくので今しばらく待って欲しいのである」
「了解」
この魔核に関してはガストンに一任してもいいだろう。
ガストンなら、いい仕事してくれるって信じてる。
今しばらくのほほん回をお楽しみください。
ちなみにレアリティ的には……。
レア・エピック・ユニーク・レジェンド
的な感じを想定しています。
羅刹ノ刀は一応????クラスだったような……。
フィーの武器はレアとエピックのあい中くらいですかね。




