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ご報告:バレンタインに向けた準備を進めています。


「まあいいよ、探りたかった情報は別なんでしょ? PK倒して情報かき集めてるらしいけど、特別に教えげあげる」


 ジャラと鎖分銅の音がして、斬られた腕が彼女の元へ戻る。

 厄介な武器を増やしたな、俺の隙をついて攻撃を行うレベルまで、暗器慣れしている。

 さすが、妹弟子といったところ。


「……」


 様子を伺っていると、彼女の周りを小さな悪魔のようなものが飛び回った。

 なんだ、あれは?

 挙動から察するにフェアリークリスタルだよな?


「驚いてるね? これは悪称号持ちにのみ許されたアイテムだよ?」


「……なに?」


「その名も、──デビルクリスタル」


 デビル……クリスタル?

 フェアリーとは違って、良くない雰囲気のイメージが浮かんだ。

 効果はなんなのか、それもフィーが語ってくれる。

 それはフェアリークリスタルよりもさらに強い効果を秘めるアイテムだとか。


「その分、長時間使用するとともに、代償は増すみたいだけどね?」


 そう言いながらフィーはさらに速くなった動きで俺の視界から消える。


「まあ、速攻片付ければその代償なんて関係ないから?」


 後ろか。


 身を翻して避け、補助スキルを使って魔装の効果を向上させる。

 魔装状態でも追いつかない速度だ。


「ナート・エスカレーション、ナートマジックアームズ、マジックブースト」


「無駄だよ? ぶっちゃけ今回のイベントはPK有利。裏ギルドを通した魔人の力が、一部のPK達に渡されている……アタシの鎖分銅がそうだよ!」


 ジャラ、と鎖が脈打つようにうごめいた。

 まるで自らの意思を持っているかのような挙動を見せる。


 明らかに物理法則を超えた挙動。

 あり得ない状況だと戦慄した。


 だが、同時に俺の羅刹ノ刀も大概同じようなものだなと思って冷静にもなる。


「おかしな武器だな」


「ジョバンニは契約した悪魔の魂を一部使ってるだとかよくわからないことをいっていたけど、なんにせよ使い手の意思に合わせて動き成長していく武器ってことでいいみたい?」


 もう全部話したかな?

 と首をかしげたままの体制で、再び音速以上の速度で踏み込むフィー。

 一分ほどのクールタイムも無くなっているようだった。


「くっ、連続使用できたのか……」


 避けても分銅が顔を掠めそうになる。

 それでもなんとか首をひねって頭部の破壊を防ぐ。

 さすがに、あの大きさの鉛玉が頭にヒットすると陥没どころか頭に穴が空くだろうな。


「暴走のスクロールだよ? スキルレベル上限を超えたり、ある程度のスキルはカットタイムをなくすことができる禁断のスクロールだってジョバンニは言ってたかな? その分、使った後のデメリットも大きいから、速くアタシに殺されてよ老害」


 ろっ、まだ30だぞ。

 ナイスミドル、もしくはヤングミドル。

 っていうか、肌の若さで行ったらまだまだ現役だ。


「さっきからそのジョバンニって誰だ? そしてスキルも!」


 攻撃を躱しながらなんとか情報を探る。

 聞き方的に、敵が教えてくれるはずないのだが……。

 運のいいことに、暴走のスクロールとデビルクリスタルを使ったことによる興奮効果か何かわからんが、ややテンションをあげたフィーが簡単に教えてくれた。


「さっきから質問が多いなあ!? ぶっ殺すよ!? ジョバンニは武器作った人……おっと、これって言っていいんだっけ? 悪いんだっけ?」


 感情の起伏が激しくなったフィーは、立ち止まって首をかしげる。

 だが、すぐに顔をニヤリとにやつかせて攻撃に移る。


「まあ、アタシも詳しく知らないけどジョバンニにはいっつもハザードがついてるから大丈夫だよね? アタシの初撃を避けれる数少ない人だし?」


「ハザード?」


「うるさいなあ? もうたくさん教えたからいいでしょ? サービスタイムは終わりだよ?」


「ラスト! ラスト!」


「はあ……なに? 欲しがりおじさん?」


 立ち止まり、ため息をつきながらどことなく恍惚とした表情を浮かべるフィーに向かって、


「この──、一瞬で間合いを詰めるスキルはやはり歩幅系のものか?」


 俺もスキルを使う。


「ッッ!」


 空蹴を三歩ほど用いて、タタタッと距離を詰めてみた。

 音速を超えるまでもいかないが、とりあえず亜音速くらいは出てるのかな?


 何度か彼女のスキルっぽい踏み込みを受けてみて、自分の中で仮説を組み立てていた。

 身体を強制的に動かすスキルは【踏み込み突き】とか【スティング】がある。


 あの異様に長い足ならば、一歩がでかい分踏み込む大きさもでかいのかな。

 という、勘なのだが……。


「アハッ! 正解かな?」


 どうやた当たっていたようだ。


「一歩の踏み込みで三歩分の距離を移動する強襲系スキルの【三倍歩】……のさらに正当上位三次スキル【三倍三歩】だよ? 攻撃スキルではないから、ただの移動用、しかもカットタイムが一分っていうクソスキル認定を受けてるみたいだけど……アタシの手足はそれを音速越えの域にまで飛躍させる!」


 身体強化スキルを上乗せしている分も上昇するとのこと。

 強制的な歩行故に届かなかった時の隙が大きいことや、普通のプレイヤーには攻撃スキルと単純な身体強化スキルが好まれる分、全くもって使うプレイヤーがいないというスキルだった。


「……そんなスキルがあったのか」


「このゲーム、ピーキーなスキルをいかに上手く扱うかが肝なんだよ? それはおじさんがよく知ってるでしょ?」


 確かにそうだ。

 頷いておく。


「もういいかな? サービスタイムは終了したから……大人しくアタシに殺されてね?」


 鎖分銅を繰りながら、フィーは肉薄する。

 マナバーストもリフレクションも一度使ってしばらくは使えない。

 さて、どうするか?


 鎖分銅は意思に従って動くみたいだが、ただそれだけの効果とも思えない。

 フィーはまだ何かを隠し持っている可能性がある。


「逃げてないでかかってきなよ? さっきまでの威勢はどうしたのさ?」


 ……わからんな、不確定要素が多すぎる。

 こういう時は、相談だ。


 羅刹。

 羅刹はいるか。

 ラセツエモン!


『なに? っていうかラセツエモンってなに?』


 聞いたらなんでも教えてくれるロボットらしい。

 だいぶ昔のアニメだったらしいのだが、AI先進国みたいになった日本ではすでにその青い古きロボットよりもさらに高性能なロボットが都会でコンシェルジュまがいのことをやってるらしいぞ。


 って、そんな話はどうでもいい。

 海外武者修行から帰ってきた俺がめちゃくちゃ近代化した日本に取り残された浦島太郎状態とか。

 そんな話はどうでもいいのだ。


 羅刹、力を貸せ。


『やだ』


 ……俺の片目は、美味しかったか?


『……羅刹の姫を相手に交渉するなんて、すごいねマスター』


 羅刹はクスっと笑いながら言葉を続ける。


『食べた分は教えてあげる。あの武器は魔人の力を一部埋め込んだ物で、あの女の説明は間違いではない。でもまだ未完成、意思に反応することはできるけど成長も途中で特殊な効果は持ってない。だから左腕ちょうだい』


 ……ほう。

 ってことは羅刹の劣化版だということか。

 語尾はあえてスルーする。


『そう。だけど私は長い時間と膨大な代償を用いて進化した。無理やり当て込んだだけのなまくらと一緒にしてもらったら困るから、とりあえず右腕ちょうだい』


 断る。

 何かにつけて欲しがるな。

 この欲しがり屋さんめ。









あれだいぶ前の話で、雪山から帰宅した時になんかそれっぽいのが出ていましたね。

ようやくあの伏線を回収。(忘れていたわけではないが伏線にしてはお粗末なもの)

さらには謎の武器まで登場。(それでもローレントのお下がりみたいな仕様)

他にもなんとジョバンニとハザードという、ようやく裏の主要人物っぽい名前も登場。


あれ、ハザード……?

そうです、処女作の方からキャラ一部持ってきました。





ツクヨイ「これは舐めプですね」


ローレント「え」


十六夜「戦いの最中ベラベラ喋る相手も舐めプでは?」


ローレント「みんな舐めプだ、俺だけじゃない」


羅刹『ギルティ』



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