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「ロ、ローレントさん! 一人で残るんですか!?」


「行くぞチビ!」


 三下さんが小盾でツクヨイの頭をどつきながら、場所を移動させていた。

 地味に痛そうだ。


「あ、ちょ! なにしやがるんですかバカ語感! 最高峰のぶらっくぷれいやぁである私の頭をどついていいのは兄弟子であるローレントさんだけです!」


「バカ語感ってなんだァ? バカ語感ってェ?」


「そんなことはいいですから放してください! 放しやがれくださいいい!!! むぐうう!!!」


 ツクヨイは抵抗するが、十六夜とモナカにあっさりと捕縛されローブやらスカートやらを少しアカン感じにギュルギュルと結び縛られ連れて行かれる。


「むががー!!」


「お、ォい……さすがに猿轡は……やりすぎじゃねェの……?」


「まあまあ、その小盾でつつかなければなし崩し的に避難できてたんですよ、盾職人さん」


 モナカにそう言われて、三下さんは素直に黙ることしかできなかったようだ。

 ため息をつきながら。

 せめてもの情けにと、十六夜に担がれるツクヨイの……いわゆる“見えちゃってる部分”に布をかぶせ、後に続いて歩いて行った。

 そんな彼らを見送って、俺は改めて強烈な殺気の持ち主と対峙する。


「フィーとか言う奴か?」


「へえ、それならお兄さんはローレントとか言う奴か?」


 質問に質問で返された。

 ややおちゃらけたような声色はかなり若い女性のもの。

 だがそれに引き換え背は……高い。

 ブリアンにも届きそうだ。

 だが、それでいて体格自体はかなり細め。

 なんと言うか、かなりチグハグなスタイルが異形感を醸し出している。


「質問に質問で返すな」


「へえ、でも質問に質問で返しちゃダメなの?」


 首をかしげる、フィーに言っておこう。


「社会の常識だぞ」


「へえ、お兄さんでも社会の常識知ってるんだ?」


 なんだこいつ。

 知ってるに決まってんだろ。


「あたりまえ」


「ならさあ、どっちかが譲歩しないと解決しないよね? お兄さんが譲歩してよ?」


 会話にならないな、素直にそう思った。

 強烈な手合いは頭の思考回路が一つずれていることが多い。

 今まで幾度となくこう言う手合いとの死線をくぐり抜けてきて学んだことでもある。


 武術家は、戦う時は、サイコパス。

 厳密に言えば全くもって違うのだが、あくまで一般の人からすれば倒すために命を惜しまないと言うことは、十分にサイコパスだと言えるらしいな。


「……そうだ、俺がローレントだ」


 無論、俺は真っ当な人間なので譲歩する。

 いい歳した大人だからな。

 精神がクソガキちっくなこんな手合いの一歩先を行くのだ。


「へぇ──」


 名前を告げた瞬間、ボッと音がして目の前の長身女が消えた。

 それは地面を蹴った音、そして音速並みの移動により空気を無理やり切り裂いた音でもあり、音声の動きとともに歪な体の女は俺の後ろで腕を振り上げていた。


「──アタシも答えるね。アタシがフィーだよ。バイバイ?」


「そうか」


 暗器と思われるナイフを背中にアスポートさせた羅刹ノ刀で受ける。

 すると、フィーは大きく表情を驚かせていた。


「──ッ!?」


 何度か斬り合うことが予想できたが、ナイフと刀の斬り合いを嫌ってか、フィーは後ろに飛んで大きく距離を取る。


「どうした? 急に距離なんか取って?」


 後ろに飛んだ際に、初手ほどの瞬発力がなかったところを見ると、先手必勝のスキルか何かなんだろうな。

 今度は俺が、空蹴で肉薄しながら刀を振るうと、フィーは長い腕を器用に動かし受け流す。

 ならば、と刀から手を離してすぐに手元に引き寄せて切り結ぶが、フィーはガクンと力を抜くように俺の刀の軌道から逃れると、細長い手足を丸めてコロコロと後転しながら距離を取る。


 面白いな。

 追撃しても良かったが、回転しながらも鎖分銅とか九節鞭色々飛んできて近づけなかった。

 暗器使い……それも本物だ。


「驚いたなあ……初撃が通じなかったのは、このゲームではお兄さんで3人目だよ?」


「ふむ、ならば初撃を躱してさらに追い縋ってきたのは?」


 そう聞くと、彼女の顔がニヤリと笑う。


「……お兄さんが初めてかも?」


「そりゃよかった。ちなみに一人目と二人目は誰だ?」


「へえ、そんなこと聞いちゃうんだ? お兄さん、女心がわかってないね?」


「知ってるぞ?」


 王都に連れて行けば、機嫌良くなるってな。

 あとはなんだろう、貴重な薬草持って行けば機嫌良くなるし、美味しい食材持って行けば機嫌良くなる。

 えっと、えっと、他には酒呑ませれば機嫌良くなる女に、野菜が美味しいと言えば機嫌良くなるデカブツ。


 やべ、俺めっちゃ詳しいな。

 近くの女性を適当に槍玉に挙げてみたが、わりかしうまく付き合えてるってことだな。

 アンジェリックはメッセたまに送って、適当にお金せびれば地味に機嫌良くなる……やばい。


 唯一わからんのが十六夜とアルジャーノ。

 どっちもあんまり表情とか心が読めんので、何をするかわからん爆弾たちだ。

 ツクヨイもたまにとんでもないことをしでかすが、それは兄弟子としてしっかりケツを拭いてやるもの。


「うん、知ってるな」


「……へえ随分と誇らしそうにしてるね? なら、楽しませてよ?」


「よしきた」


 再び音越えの踏み込み。

 体感時間で使用待機時間が大体1分くらいのスキルだと見た。


「自慢じゃないが、楽しませるのは得意だ」


 戦闘的な意味で。







やっぱり優しい三下さんと。

鬼畜な女性陣でした。








あと、見た目が歪な女の子キャラクター出して見たかったので、出しました。


味方にいるともうしっちゃかめっちゃかになるんで、とりあえず敵役キャラクターが増えると思います。

基本的にローレント以外のキャラクター描写はあまり書かずにやりたいので、突拍子もなくいきなり展開になる可能性があるんですが、なんとか伏線とかいう高等技術を駆使して、それっぽく仕上げたいところ。(むずい)


いつも楽しく読んでいますだったり、感想いただけて励みになります。

これからも頑張ります。頑張りますよ。



あ、そう言えばあと二十日くらいでバレンタインデーですねぇ……?




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