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「作戦はどうするゥ?」


「うーん、各個撃破で」


『了解!』


 三下さんの言葉にそう返すと、三下さん他、十六夜、モナカが返事とともに武器を構えて前に出る。

 ツクヨイは「へ?」と取り残された。


「あの、……え? 私も戦うんですか?」


「もちろん」


「えええええええ!!!」


 何をそんなに驚いているのだろうか。


「いやその、この人たちっていわば──ガーディアンを倒せる実力を持ってさらにダンジョンの下層を探索できるプレイヤー3人を相手にしても互角にやりあえるほどの実力を兼ね備えたプレイヤーってことですよね?」


 ……長い、がそれで大方合っているのでうなずいておく。


「だ、だったらガーディアンすら倒せなかった私が倒せるわけないじゃないですか!!」


「知らん、倒せ」


「いやいやいやいや! だって、ガーディアンすら単騎で倒せないプレイヤーである私が、ガーディアンを倒せる実力を持ってさらにダンジョンの下層を探索できるプレイヤー3人を相手にしても互角にやりあえるほどの実力を兼ね備えたプレイヤー相手に──」


「──長い、うるさい、もうみんな敵と戦ってるからほらさっさとしろ。二対一の状況を作られたら、最悪負けてしまう可能性だってあるんだからさ」


「ど、どっちにしたって──ほぎゃっ!? ほっほっほおおおぉぉぉおおおうううう〜〜ッッ!?」


 しつこく食い下がるツクヨイにゲンコツ。


「目が覚めたか?」


「目が覚めたって!? 寝てませんけどね!?」


「いや、視野が狭くなってるってことを忘れてないか?」


「……へ? 視野?」


 そうだ。

 さっきからずっと慌てふためいていたツクヨイに言っておく。


「ダンジョンでの強さの基準がガーディアンになっていたようだが……今の相手がPKだと言うことを今一度考えてみろ……そしてこの場所に明かりはないぞ」


 三下さんに目配せする。


「チッ、まあなんとかやってやんよォ! ま、それも練習の内だってなァッ!」


 三下さんは淡く光らせていた盾から魔石を抜き取り、俺は持っていたカンテラをPKに叩きつけて火を消した。

 罠の先にあるこの地下深い処分場というか、そんな場所は、光苔のような都合のいいものは存在せず、完璧な闇が空間を支配した。


 当然ながら、夜目のスクロールは使えない。

 光源がないからだ。


 また原理の違う暗視のスクロールなんかも、もしかしたら作られるかもしれんが……暗視ゴーグルなんか、着け慣れてないとまともに使えないぞ。

 人は夜になれば道がわからなくなるほど、認識力に差が出る。

 常日頃から使ってないと、意味などない。


「チッ!? 今すぐ夜目のスクロールと、なんでも良いから光源用意しろ! どんな小さな火でも良い! おら、火属性の“さん”野郎!」


 暗視は持たないようだな。

 すぐさま夜目のスクロールを起動して、火属性の魔法使いがスキルを詠唱しようとするあたり、なかなか機転が利く奴らだと思う。

 強いのにも納得だが──


「一足遅かったな」


「ッ!?」


 火属性魔法使いの支援が来ないことに気付いた一人が、自分も喋れなくなっている状況に気づく。

 闇の中で、狼狽える姿が良く見えた。


 ツクヨイの沈黙だな。

 闇属性の状態異常がもろに相手を包み込んだのだろう。

 ダークサークル、そしてブラックカーテン。

 他にもいろいろ使っているのかもしれんが、どれも無詠唱。


「使えたのか無詠唱」


「十八豪さんからついに聞き出して取得しました! ふははーッ! 私だって、ローレントさんの妹弟子で居続けるために、一応少しづつ自分の強化を進めてるんです! ぬふふ、褒めて褒めて!」


「ああ、いろいろことが済んだらまた王都に連れて言ってやる」


「やったーーーーーッ!!!」


 まさかPKの魔法使いごと沈黙を決めてしまうなんて思ってもみなかった。

 魔法職は魔法抵抗が強く、ちょっとやそっとでは沈黙しない。

 更に言えば、魔法スキルによる状態異常から、抜け出すのも早い。


 それは俺が瞬殺してどうにかすれば良いな。

 俺はローヴォの力が影響して、全くの闇の中でも容易に動けるし。

 空蹴を用いて前衛のPKの頭上を跳躍し、空中から空転猿臂打ち。


「ッ!?」


「……マジックプロテクトか」


 パリンと何かが弾ける音がして、俺の攻撃は弾かれた。

 そして、すぐに魔法使いも異常状態から脱したようだ。


「くっ、一撃でMPを……ッッ!」


「絶対に殺せる急所攻撃を打ち込んだからな」


 なるほどなるほど、とりあえずもうMPが全損したことは確かなようだ。

 MP切れを起こしてややフラついている。


 死亡を回避するほどのMP消費。

 それ以前にダンジョン内でPK行為を率先して行なっていれば当然だろう。


「まず一人」


 顔を隠していたが、声で女だと言うことがわかった。

 だが、容赦はしない。

 羅刹ノ刀を袈裟斬り、そして素早く斬りあげて三分割。


「〜〜〜〜〜〜ッッ!」


 闇雲に攻撃を行うリーダー格の男は、どうやら身体強化優先型で、魔法抵抗が少ないタイプだった。

 他の者たちはちらほら異常状態を抜け出して応戦しているにもかかわらずまだ闇雲に剣を振るっている。


「誰か光源を!」


「させねェよ」


 三下さんは、フルカウルとプロフェッショナルムービングを使用し、神経研ぎ澄ませながら“闇雲にふるってたまたま体に当たった”PKの攻撃をはじき返していた。


 この人、実際見えてないし、技術も持ち合わせてないくせに、とんでもない反射神経である。

 さすが、モナカも認める鬼才。


「うーん、さすがに闘志とか使っちゃだめですよねえ?」


 モナカはそう言いながら、暗闇を音もなく移動しPKの一人をあっさり投げ倒していた。


「使わなくてもなんとかなるだろ?」


「まあ、そうですけど」


 っていうか、そうか。

 闘気や闘志、それに魔闘や魔装なんかは輝きを纏うエフェクト故に、自分が光源になってしまうからこの場合使わないほうがいいのか。


「道場スキル持ってなくてよかったな」


「でも四段以上からは条件キツイですし、地道に道場通い詰める方法しかないので、普通の人にはなかなか取りづらい称号ですからねぇ……?」


 モナカの言う通り、黒帯はまだしも。

 そこから段位称号を上げていくに連れて、条件は厳しくなる。

 もともと経験していたり、元の才能があれば割りかし楽に取れるのだが、好き放題生きるPKが果たしてわざわざ道場で鍛錬を積むかって話である。


 クラフトあたりなら、生真面目に通いそうな気もするよな。

 なかなか居ないタイプのPKだったし。


「こっちの処理は終わりました」


「うおおお! ぶらっくぷれいやぁもPK戦勝利いいーー!!」


 どうやらツクヨイは三下さんの加勢に向かい、とどめをさすことに協力したようだ。

 一人だけ残して、この場のPK達は殲滅した。


「ふははーーーッ! なでなでしやがれください!」


「はい」


 とりあえず褒めておく。

 不本意だが、素直に言うことを聞いてやれば、このちんちくりんは大人しくなるからだ。

 

「……なんだ?」


 目の前に十六夜がいる。

 近い。


「あの、私も……」


「断る」


 さすがにそれはシャレにならんと思う。

 良い歳こいた大人が、良い歳こいた大人の頭を撫でる。

 いや、ちょっとそれは……なんかダメな気がしてきた。


「うう、そ、そんな……」


「ぬはははーーーッ! 十六夜さんに勝利ーーーーッ!」


「十六夜はそこまで子供じゃないだろ」


「ぬはっ、は……?」


 ツクヨイがピキッと固まった。

 うるさくなくて助かる。


「まあまあ、よかったですね十六夜さん。なんというか、よく分からない戦いでしたけど一応勝ちですよ? ある意味、ある意味ですけどね?」


 そんなモナカに十六夜が唇を噛み締めて泣きながら言葉を返していた。


「うぐふ、試合に負けて、勝負には勝ったということでしょうか……? ぬぬぬ、なんというか頭頂部が名残惜しいですが、とにかく私の花の人生初勝利ということでやっほい?」


「花の人生? 初勝利? 十六夜の実力なら大体どんな相手にも勝てると思うけどな」


 実際PKの粘着をずっと回避してゲーム活動を続けてきてたわけだし、ソロで。


「……私、本当に勝ったんでしょうか?」


「まあまあ、美男子様は何事も戦基準ですからねえ、あまり深く考えない方がいいですよ」


 戦基準ってなにぃ。

 助けて三下サァン。


「ふふふ……ふふふふふふふ、そうですね、ふふふふふ。あまり深く考えないようにして、とりあえず妹ルート一つしか存在しないツクヨイさんよりはマシだってことで納得しておきます。ふふふふ」


「ぬわぁーーーーーッ!!! ぶらっくぷれいやぁ、なんたる失態かあああーー!!!」




「さんs──」


「俺に話を振ってくんじゃねェ」


 ぐすん。











いつも読んでいただいてありがとうございます。

最近はまっているものは3Dモデリングです。

モン○ンも楽しみです。





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