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 おそらく、盗賊ギルドの連中も同じダンジョンに侵入している可能性がある。

 そして懸念されていたトモガラの強襲はないだろう。

 あいつがいたら、もっと大きな騒動になっている可能性が高い。


 イベントなのだから、もっとみんなはしゃいでいいと思うのに。

 不自然なほど、罠が解除され、そして小部屋に設置されている小さな宝箱は空になっていた。


『階層を下へ下へ行くほどに、アイテム等級がグレードアップして行くよ! でも、ガーディアンの数、種類も増えて行くけどね』


『今回に限りまして、魔物のネタバレがない代わりに本来ならば階層一番下にいるガーディアンをダンジョンの各階層内に出没するように調整して降ります』


『そうそう、本当はダンジョン内にはとても危険な魔物が沢山いるし、外からダンジョン内に入り込むことだって可能だから、今回みたいに短時間で下の階層にまでアタックするにはかなりの労力を備えが必要になってくるからね!』


『そして、闘技大会イベントが全て終わり次第、おって運営からいろいろなご報告や追加要素の発表。いわゆる第二弾大型アップデートに関しての説明がございますので、是非ともお聞きください』


『公式サイトに詳細は記載されてるけども、生でしか聞けない情報もあるかもね?』


 そんなGMたちのアナウンスに耳を傾けながら、ダンジョンを降りて行く。

 ガーディアンの数は多くなる。

 立ち往生するプレイヤーや、怪我をおって動けなくなったプレイヤー。

 数を揃えたら、確かに攻略困難になってくる硬さを持ってるからな。


「た、助け──」


「もう一度スタートからやり直せ」


 一般プレイヤーかもしれないが、怪我をおって動けなくなったら一度デスペナして最初からやり直しした方が手っ取り早いだろう。

 それでも縋るような目を受け流して痛くないように首をへし折った。

 ま、これも一応ポイントゲットだ。


「数が多いってことは……やり過ごしてるプレイヤーも多いんだろうなァ、もしくは、やられちまったかァ」


「だろうな」


 盗賊ギルドの連中ならば、やり過ごすことはわけないだろうとも思う。

 俺だったら面倒な相手は基本的に回避行動、そして倒せる奴に倒してもらいながら後をこっそりついて行くだろう


「……ってことは、ほえええ! ダークサークル!」


 ツクヨイが後ろを振り返りながら身構えスキルを詠唱した。

 パーティ組んでないからこっちにも状態異常が来てしまう。


「私がとりあえずパーティ申請しておきますね」


 空気を読んだ十六夜から飛んでくる申請に許可を出して、杖を構えて後ろを警戒するツクヨイに言う。


「その可能性はほぼない」


「へ?」


 まず、俺とモナカがいる時点で、怪しい動きを見せるものがいたら察知できる。

 さらに斥候に長けている十六夜がいれば索敵は申し分ないと言ったところ。

 下手に警戒しても気疲れするだけだ。


「な、なんだぁ……」


 安心するツクヨイ。


「だからと言って気を抜いているとトラップにやられますよ」


「──わっ!」


 踏み出したツクヨイの腕をすっと引っ張って前のめりにさせるモナカ。


「な、なにするんです!」


「足元をみてください、ほれほれ」


 つっかけながらモナカにそう声をあらだてるツクヨイ。


 だがモナカが指し示した場所に小さな足踏み作動のスイッチがあり、踏むとガゴンと床材が回転し、引っかかった奴が底が見えない穴に落ちてしまうトラップだということがわかると、閉口していた。


「できるだけ、私の歩いた後を正確に歩くと良いでしょう」


「……ひええ、は、はいですぅ。でもなんでわかるんですか?」


「うーん、勘もありますけど。だいたい見てればわかりますね」


 少し考えてから口に出されたモナカのセリフに十六夜も同意する。


「そうですね。私ならどこに仕掛けるか、で大体予想はつきます。こういう落とし穴トラップは古典的というか、まあ最悪踏んでもつっかえ棒か何かがあれば防げますね」


 対処策はあるが、ツクヨイの体の細さだったら終わりだろうな。

 それにぼけっと杖を持っていたら気づかず視界が落とし穴で真っ暗だ。


「……質問した私が馬鹿でした。私の仲間は三下さんだけですぅ! 口調もなんだか厨二くさいのに似てますね? なんかのアニメキャラクターのモノマネですか? えへへ」


「癖に決まってんだろォ……ってか仲間にすんじゃねェよ」


「ええっ! そんな殺生なこと言わないでくださいよ〜! 絶対厨二だと思ってたのにぃ!」


「すり寄ってくんじゃねェ!」


 その特徴的な喋り方はやはり癖だったのか。

 いったいどこでどんな教育を受ければそんな喋り方になるのか謎だ。


「っていうか、ツクヨイと同じだったらトラップ避けれなくないか?」


「……確かに……なんか秘訣があるんですか……?」


「いんや、作動したら目で見て弾くだけだ」


 バケモノだな。

 反応速度がやはり尋常じゃない三下さんだった。

 ツクヨイはもう何も言わずスススと距離をとってモナカの後ろに回ってどんよりした顔を作る。


「……みんながおかしいだけです……わ、私は……ごく普通の……専門学生ですよ……? トラップなんか……避けれるわけないじゃないですか……ぶつぶつ、ぶつぶつ……」


 ダークボールを常時展開させて、弓矢トラップなんか打ち落とせばいいと思うんだがなあ。

 でもそれを言ってしまうようじゃ面白くないので、自分で気づくまであえて待つことにしよう。

 それが、兄弟子にできることなのさ。


「ちなみに、この罠の下はどうなってるのか気にならないか?」


「……ま、また何を言い出してやがりますかね、この人は……」


 大きくため息をつくツクヨイだが、実際に気にならないのだろうか。

 真下に続いているならば、これに便乗してダンジョン最下層くらいにまでショートカットできないか、すごくきになるところだったりする。


「よし」


「な、なにロープ出してやがりますですか!」


「ん?」


 適当に重しとなる石材の下にロープを潜り込ませて、降りてみようかとするところでツクヨイが袖を引っ張って止めて来た。


「危ないです!」


「大丈夫だ、問題ない」


「そんな装備で……って大丈夫じゃないです!」


「ツクヨイさん、落ち着いてください。ローレントさんだったら、最悪のことが起こってもなんとかなりそうですし、テレポートで帰還できるじゃないですか、うふふ、ここは優しく見送るのができる女ですよ」


「そんな問題じゃなくて、もし降りることが可能になったら降りるんですよね!?」


「そうだが?」


「そうだが、じゃねぇですよ!! た、高いところはさすがにもうこりごりというか、なんというか、絶対に嫌です! お師匠様との超高度での戦いに巻き込まれて以降、高いところ苦手なんですよ!?」


 ……そうか、トラウマになってしまっていたのか。

 かわいそうだ、だが、むしろトラウマを克服するチャンス。

 それだけ告げて、俺は三下さんに床のトラップをずっと踏み続けてもらってロープを使って下に降りることにした。

 わずかに光が灯るダンジョン内とは大きく異なり、真っ暗な奈落の穴の空気はどことなくひんやりしているなあ、なんて思いながら。









乱痴気イベントの後には、闘技大会も控えています。





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