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「PK総数はわからないが、裏ギルドに雇われたPKの集団は百を超えるのかァ……チッ、面倒だな」
尋問して聞き出した情報を噛み締めながら、三下さんは舌打ちしていた。
なんともアバウトな情報だが、どうやら本当にその程度の情報しかもらってない。
あとは賞金かけられてるから見つけ次第狩ったもん勝ちだってことらしい。
「尻尾切りばっかりだな」
「そうだなァ、煙幕のだけはうまいもんだぜェ」
そろそろどこかで足取りがつかめてもいいはずなのだがな。
内部で情報を流しているナガセあたりも、このPKとあまり変わらない立ち位置らしい。
もっとも、ノスタルジオとは違うファシミの陣営だったからさもありなん。
裏ギルド側からすれば、ただのいち臨時戦闘員でしかないのだという。
奴らは楽なもんだ。
懸賞金をかけてれば自ずとPK達はそいつを狙って勝手に動くからな。
やはりしらみつぶしに叩き潰していくしかないのか。
「レイラさん達は、もう拠点替えするからほっとけばって言ってましたけども?」
十六夜の言う通り。
第一拠点が奪われて、奪還するめどが立たず、さらに言えば俺は完膚なきまでに破壊し尽くしたから、もう未練はないとのことである。
だが、それだと腹の虫が収まらん。
「新たな拠点に移るのはいいが、せめていっぱい食わせてやりたいところではある」
また奪われた第一拠点が活気を取り戻したところで、蟻従えて強襲して逐一削ってやるか?
それでもいいな、二度と日の目を見るような活気は取り戻させんぞ、ニシトモと一緒に経済制裁は続けるのだ。
「しゃ、喋ったからもう放してくれ! もう仲間と一緒に手は出さねぇって誓う! 誓うから!」
「……うるさいぞ」
素直に喋れば開放すると言っていたが、デスペナ開放に決まっている。
羅刹ノ刀で首を切り落として、体を石柱でゴリゴリに潰す。
その様子を黙って見せたのち、頭も同じように潰してデスペナしていただいた。
「相変わらず容赦ないですねぇ……見てるだけでゾッとします……」
あっさりと処分されるPKを見ていたツクヨイが渋い顔をしながらそう言ってきた。
「慣れろ、裏ギルドの連中全てにこうするつもりだ」
「ローレンとさん……えげつないくらい怒ってます?」
「……いや、怒ってない」
「な、なんですかその間……怒ってる? 怒ってますよね? 怒ってますですね?」
しつこいなあ。
だが彼女なりに心配してくれているということにしておいて、無駄に殺気立ってしまった心を落ち着かせる。
「怒ってない。でも苛立ってはいる」
「気持ちはわかるぜェ、掲示板の連中みてェに、安地からグダグダ物言ってるやつは好きじゃねェ」
罠を弾きながら、ダンジョンを先へ進む三下さんが、やれやれと言った風に語る。
「ローレントがガンストとか言うアホを引退に追い込んだ時は腹を抱えて笑っちまったぜェ? ハッ、因果応報ってあんだよなァ?」
不正を行い闘技大会予選で俺の前に立ちはだかって、そしてそのまま消えない心の傷を負って引退してしまったガンストの噂はガツントの出現によって大きく広まった。
酔っ払った異常状態のまま、ベラベラベラベラ俺との戦いがいかにすげぇ戦いだったかを語るもんだから、それが尾ひれ付いて広まってしまって、なんかよくわからないけど……、たまに魔王とか呟かれる。
……敵側だろそれ。
って、いつも思いながら、俺じゃないことを信じてシカトしている。
だけど、どう見てもみんな俺に言ってて、少しだけ傷ついてる。
話が蛇足したが、俺らよりも先に進んだPKは多いとのこと。
さらに言えば、一般プレイヤーもさることながら。
PK同士での食いつぶしも起きているということらしい。
どうせなら、上位陣に入っておくかということだった。
「いかんな、早いところPKを刈り尽くさなければ」
「……お宝じゃないんですね、目的。まあ察しはつきますけど」
ツクヨイの言葉もよくわかる、レアアイテムは欲しい。
だが……もちろんそれもだが……先んじてPKを狩り尽くすのが醍醐味だろう。
ノークタウンの街中では達人二人と遭遇したのだが、それっきりってのもおかしい話だ。
まだまだ何かがくるという心構えをしておいたそんはないだろう。
「お宝だからと言ってあまり浮かれるな」
「へ?」
「一応ダンジョンだから一時的にパーティを組んでいるが、本来であれば敵同士」
「そ、そうでした。忘れてました。でもさすがに、殺しませんよね?」
「優先度はPKが先。だがトモガラみたいにかかってくると容赦しないぞ」
「モ、モナカさんと一緒に行動しますう!」
ギロリと睨むと、ツクヨイが俺の腕を放してそそくさとモナカの後ろに隠れてしまった。
「まあまあ、落ち着きましょうみなさん。それに、遊撃は美男子様方に任せて、私たちは専守防衛の立ち位置でいましょう。幸い、スキル構成も定点防衛・迎撃に即してますしね」
「そうですね、ノークタウンの一番高い場所から情報収集の折、みなさんを見ていましたが、ローレントさんやモナカさんを襲っていた、また毛色の違う人たちが出てくることも予想できますし、そうなるをこの狭いダンジョン内だと私はあまり活躍できそうにありません」
「見ていたのか」
頷く十六夜。
どうやらあの衆動兄弟との戦いを確認し、危なくなればいつでも遠弓で狙撃できる体制をとっていたらしい。
俺の本気の気配察知の外側からだそうだ。
「……なかなか色の濃い人たちでしたので、これから先もそんな人が出てくるとなると、ワクワクします。同時に……うふふふ、また私のキャラが薄くなるというか、ふふふふ」
絶対にそれはないんだろうけど。
あえて口には出さないでおこう。
変に勘違いされても困るし。
「え? また私だけ仲間外れですか? ぐぬぬー! 一体何があったのか教えてもらわないと!」
「まあまあ、ツクヨイさん、あとでお話ししてあげますよ」
「おい、階段だぜェ」
話を割りながら、三下さんが顎をしゃくって前を指し示す。
二階層から三階層に繋がる階段がそこにはあった。
「ペースを上げるか」
「そうだなァ、小部屋も入り尽くされてっから、先に行ってる奴をおいこさねェとなァ?」
毎日更新なんとかできてるぞー




