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 いったいなんの音だろうと、慎重に階段を降りていくと、数人のプレイヤーが死に物狂いの表情で遁走しているところだった。

 ゴシャアゴシャアと何かをすり潰すような音が逃げ惑うプレイヤーの後ろ、俺らからすれば視線の先から響いてくる。


「なんだ……?」


 ただならぬ状況ゆえに、気を研ぎ澄ませて確認すると特に何も感じない。

 機械のような摩擦音やらなにやらが響くのみ。


「新手のトラップですかね……確認します……え……」


 そう言ってスキルを使い目を凝らした十六夜の表情が固まる。


「な、ん……ですか……あれ……」


「ああん?」


 三下さんが魔石を込めて光を強めると、向こう側にこの騒動の正体が浮かび上がった。

 大理石のようなピカピカの石で作られた角ばった人型のナニカが、プレイヤーを両手でドスンドスン、ゴシャアゴシャアと潰しているところだった。


『あー言い忘れてたけど、魔物は出ないけど守護者ガーディアンは存在するから気をつけてね。ま、これもトラップの一部ってことで理解しといて〜』


 GMベータの声が響いた瞬間、ダンジョン内で怒号が巻き起こる。


「──ふっざけんなあああああああああああ!!!!」


「先に言えやあああああああああああ!」


「クソボケぶっころがすぞおらああああああああ!!!」


 この階層にはそこそこのプレイヤーが居てこのガーディアンに苦戦しているのだろうか。

 激しい罵り声が反響している。


 そんな怒号にツクヨイが「ひょえっ」と体をビクつかせながら俺の腕をネズミのような動きで登って顔にしがみついて、それを見たモナカが「あらあらまあまあ」とニコニコ顔を浮かべていた。


 ……激しく邪魔なんだけど。


「でも、そのまま歩くんですね。美男子様」


 ツクヨイ程度の体重なら、別に平気。


 一応言っておくが、初期ではブーストを多用して大剣を背負っていたくらいだ。

 ゲーム開始時より、野山を駆け回り地道に基礎筋力のアップは心がけている。

 テンバータウンの路地裏の空き地でレンガ、石材と徐々に持てる重石の量を増やしていた。

 その結果、少しずつではあるが改善が見込まれている。


「そもそもゲーム内で修行とか考えるやつはいねェ」


「まあ、プレイを続けていれば自然と慣れていくようにこのゲームはできてるからな」


 三下さんの言葉にそう返しておく。

 長距離移動に慣れないと、未だ移動手段であったポータルが早々と使えなくされ、徒歩もしくは馬車を強要されたプレイヤーが長続きするはずがない。

 プレイをするに従って、自然と足も速くなるようにされているのだよ。

 それをさらにスキルで補正して、身体強化オンリーのバカはトップスピードに乗れば亜音速でる。

 あくまでガチで走ればだけど。


「っていうかモナカ、美男子様はやめろ」


「まあまあ、呼び方はどうだっていいじゃないですか、それよりツクヨイさん、そろそろ代わってください」


「させませんよモナカさん、次は私の番ですから」


 ……十六夜を運ぶのはさすがにめんどいっていうかなんていうか。

 モナカとツクヨイのちんちくりんさだったら別に気にとめる必要ないが、十六夜なら話は変わる。


「体格が違うからダメだ」


「……せめてスタイルと言ってくれればいいものの……心に深く突き刺さりましたうふふ、うふふふふ」


 そう言いながら俺の足元で膝を抱えて丸くなる十六夜。

 ショックを受けているのか?

 顔が笑ってるっていうか、本当に不気味だからやめてくれ。


「ふはははーッ! いけー! 闇のローレントロボー!」


「好き放題だな、お前も降りろ」


「えええー! いやだー! こわいー!」


「うるさい降りろ」


 っていうかお前ら、ふざけてる場合じゃない。

 ガーディアンが、そんなやりとりをしていた俺たちに狙いを定めて、わりかし素早い動きで走ってきている。

 うん、石でできているくせに意外と早い。

 石でできた魔物とは何度かやりあってきたが、それよりも動きはカクついているが非常に軽快な足取り。


「ふざけてる場合じゃねェみたいだぜェ?」


 三下さんはそういうと、俺たちの前に躍り出て、ガーディアンに向かって叫んだ。


「守護者ってェと、盾役ってことかァ? ハッ、イイネェイイネェ、どっちの盾が強いか確かめようぜェ!」


 ──ガギンッ。

 当たり前のようにカウンターの音が響いて、ガーディアンは大きくすっ飛んで言った。

 相変わらず質量やら諸々をそのまま無視して弾き返すカウンターは本当にえげつない。


「ハッ! ザマァねェや!」


「……吹っ飛ばしたはいいが、有効打は与えられるのか?」


 ガーディアンは重たい音を立ててダンジョンの通路を転がったが、まだ立ち上がってくる。

 それを見た三下さんは、素直に後ろに引いた。


「俺の片手剣じゃ歯が立たねェだろうしなァ、とりあえずカウンターはノーコストだからきたら弾いてやる。その間に壊す方法を考えろォ」


 なるほど、攻撃は丸投げといったところだった。

 ツクヨイも降りてダークボールを何度かぶつけるが、やはり見た目通りの硬さを持っているらしく、魔弾が当たっても構わず突撃してくる。

 十六夜も弓は通らないと首を振っているし、とりあえず大火力でHPを削り切って終わらせるか、と思ったところで、不意にモナカが弾こうと構えた三下さんの目の前に躍り出た。


「ここは私が相手取りましょうか。第一ステージの密林ではあまりいいところも見せれませんでしたしね」


「んだァ? このちんちくりん二号はァ……」


 ちんちくりんだが柔道の腕前は指折りなんだよなあ。

 チビに行けるのかと訝しむ表情をする三下さんだが、とりあえず見れば早いだろう。

 彼のカウンターの新たなる使い方にもある意味寄与すると思うし。


「まあ、見ていてください──デリケートモーション」


「そのスキル……」


 同じスキルを使うモナカに、三下さんも黙って見ていることに決めたようだ。


「はいはいガーディアンさん、足元がお留守ですよ」


 そう言いながらモナカはスッとガーディアンの隣に移動してデカイ腕を取り引き込むと、右足でガーディアンの右足を払った。

 明らかに重たそうな巨体が一回転する。

 そして頭から真っ逆さまに落ちて、自重で首は簡単にへし折れた。


 一部始終を目の当たりにしていた三下さんは、ため息をつきながら呟く。


「……テメェと同じ人種かよ」


「そうだな。投げ技に関しては同レベルだと思っていい」


 そういうと、いつものニコニコ顔から少しだけムッとした表情をつくモナカが戻ってきて言い返した。


「まあまあ、投げ技に関しては私の方が上ですけどね? 寝技は隙を突かれて負けましたけど、忘れてませんよ? あんなに恥ずかしい思いをしたのは初めてです」


 ……まーた紛らわしいことを。


「ッ!? 寝技!? 恥ずかしい!? ちょ、ちょっといったい何があったんですか!」


「そうです、聞いてません。とりあえず検証のため私にその技をかけてください」


 ほら、ツクヨイと十六夜が過剰反応する。

 一人ダークネスの方が意味のわからん供述をしているが、スルーしておく。


「ちょ、なんで私なんですかぁぁぁああああ! ひやあああ!!!」


「……確かに恥ずかしいですね……スカートだったら丸見えです」


 せっかく手強そうなガーディアンを倒して、次に進めるというのに。

 この体たらくはいったいどういうことなんだろう、誰か教えてください。

 頼む、真摯に頼む。


「しまんねェな、おいィ」


 三下さんの呟きに、激しく同感だった。











あとがきは本編と関係ありません(が、二巻にゆかりある人たちです)


ツクヨイ「ふははーッ! ついに予約開始されましたです!」


十六夜「とうとう……私にも出番が回ってきたのですね……うふふ、うふふふふふ」


三下「おい、はしゃいでんじゃねェよ」


十八豪「ほんとにさ、そろそろウェブ版でも出番が欲しいところだけどねぇ」





そういうみなさんのおかげで二巻まで出させていただけるなんて、嬉しい限りです。

これも全て、応援してくださる皆様のおかげでございします。

少し休憩時間が長かったにもかかわらず、再び読んでいただきまして、誠にありがとうございます。

刊行まで毎日更新続けることを誓います。(モンハンきても)

発売したら一ヶ月は二回更新して、休んだ分を取り返したいなとも思っています。


なので……引きつづき応援を……宜しくお願いします!

感想は毎回皆様の見て、励みにしています。

掲示板回で使うのNGでしたら、僕にわかる書き込みで一言添えていただければと><

それでは。



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