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『ちなみに時間拡張はしてないから、早めに探索しないとステージ切り替えの時にお宝回収されちゃうよん』


 GMベータの声が聞こえて来た瞬間。

 あたりで「うおおおお!」とけたたましいプレイヤー達の声が聞こえた。

 砂丘の裏側かな?

 とりあえず伏せて進みながら闇討ち可能か確かめる。


「……広すぎてさすがに無理か」


「この状況でもまたプレイヤー蹴落としにかかりやがるんですね……みんなもうお宝目当てに参戦してるっぽいのに……」


 ツクヨイが俺の後ろでそうつぶやいている。

 何を言っているんだか。

 基本だろ、お宝獲得のためにはまずライバル蹴落とさないと。


『ちなみに、探索に関しては盗賊やハンター関係のスキルを持つプレイヤーがやや有利な部分を作っております』


「──私が必要ですか?」


「うおっ」


 砂の中からなぜか十六夜が出現した。

 今までどこにいたんだろうってくらい、存在感を感じなかったのだが、一体どこにいたのだろうか。


「実は近くにずっといました」


「……まじで?」


「はい、猿拳の時はぶっちゃけヒヤヒヤしてましたけど、プレイヤースキルとスキルの気配消しでなんとか凌いで、地味に皆さんの近くにいました」


 …………。

 まじかよ。


「ストーカーのプロだなァ」


 三下さんの言う通りである。

 いるなら出て来て助けろよ、と思った。


「私の探索スキルが役にたつ、つまり出番だと思って」


「……そっか、助かるよ」


 十六夜は俺もある意味一目置くほどの凄腕だ。

 一目置くけど、一目置いて距離を取りたい。

 そんなニュアンス。


『さらに、遺跡ダンジョンにはたくさんのトラップが仕掛けられていますので、ご注意くださいね』


 その瞬間、我先にと目の前の砂丘を走るプレイヤー達の足元が爆発した。


「ひょえ!?」


「ピッ!?」


 けたたましい衝撃に、モナカとツクヨイが抱き合い飛び上がってビビる。


「……ド派手なトラップだなァ」


 三下さんのつぶやきの通り。

 どうやらトラップを踏んで大爆発したと、そんな具合。

 俺の手榴弾よりもすごい爆発だった。

 そしてその衝撃によって、あちこちで流砂が生まれる。


「な、流される!」


「大丈夫だ、とりあえず乗れ」


 ストレージからゴムボートを出す。


「ハッ! 便利屋だなァ!」


「だ、大丈夫ですか? 沈まないですか?」


「沈んだらもう一個出す。こういう消耗品の類は大量生産してもらってるからな」


「まあまあ、雪山の洞窟を思い出しますねぇ」


 エンジンは砂上でも使えるのか心配だが、もともと水流を押し出して推進力を得るタイプのものなので、なんとかなるだろうと思ったら、なんとかなった。


 まあ、無理やり使ってるけどね!


「うおおおお! た、助けて! 乗せてくれぇ!」


「お願いだー! 助けてー!」


「なんでもするわよ! なんでもいうこと聞くからお願ああいい!」


 レッドネームではないが、流砂に巻き込まれたプレイヤーが目の前にいた。

 推進器の舵をとるのは俺だが、一度止めるとスピードに乗るのに多少時間がかかる。


 ……面倒だ、轢くか。


「ぺぎっ!?」


「ああっ!?」


「いやぁっ、砂が!?」


 3人仲良く埋まってろ。


「……ロ、ローレントさん……?」


「なに?」


「あらまあ、美男子様ってば有無も言わさず無言で轢いちゃいましたね」


「いやいやいや、普通助ける流れなのでは!?」


「うるさいぞツクヨイ、死んでも時間をおいて復活再チャレンジできるから、さっさと死んだ方がいいだろう」


「ドラゴン○ールかッ!! 死んでも生き返らせればいい発言をリアルで初めて聞きましたッ!」


「ヒャハハハッ! 海賊プレイか? イイネェイイネェ! こういうの一回やって見たかったんだぜェ!」


「こ、こっちはこっちでなんか凶悪なツラしてるうう!!」


 ヒャッハーな三下さんを見て、ツクヨイは頭をゴムボートにガンガンとぶつけていた。

 むしろツクヨイの中二病キャラの方が、海賊チックというか、こう言うヒャッハー系に向いていると思うのだが、このちんちくりんはやはり悪になりきれない。

 さてさて三下さんの言う通り海賊か、それもそれであり。


「今より賊になるぞ、砂漠の海賊──砂賊だ!」


「むぅう! も、もうどうにでもなりやがれってんです! ダークサークル!」


 ツクヨイは覚悟を決めたような目をしながら、俺のゴムボートをコーティングしてくれた。

 真っ黒になったゴムボートの耐久度はかなり上がる。

 更に言えば、魔力依存の推進器も強度が増すので、スピードが上がった。

 無い胸を張り、風にローブをなびかせて、もはや黒いインナーが見えてしまっても御構い無しのお家芸をしながら、ツクヨイは叫ぶ。


「ふぅはははーーーッ! これよりこの砂漠海賊闇のツクヨイ団は修羅の道に入るですよぉ!」


「まあまあ、とても痛い名前ですけど、いいでしょう船長」


 ……船長、俺じゃ無いの?


「さあ舵取り! 目につくやつらを全て蹴散らして進めー!」


 彼女の一言で俺の立ち位置が舵取りになった。

 まあ、あながち間違いでは無い。


「ケヒャヒャヒャ!! イイゼェおいィ!!! 邪魔なやつらは全部そのままぶっ飛ばしてやんよォ!」


 戦闘員その1である三下さんは、目の前から切りかかってくる障害物プレイヤーを次々ぶっ飛ばし。


「1kmほど先に大きな建造物を見つけました。あれが遺跡ダンジョンですね、そのまま進路はまっすぐお願いします」


 目がいい十六夜は航海師の役目を請け負って、モナカはゴムボートの橋から手を出して砂を掬って遊ぶ。

 うん、なんだかんだ、無駄にバランスいいぞ。

 戦闘員である俺、三下、モナカの力量はある意味拮抗していると言える。

 そんな俺たちをサポートする中二病闇属性使いと、ダークネス弓使い。

 船強化に固定砲台。


 ……これ、負けないんじゃ無い?








どこにいたんだ十六夜。


ツクヨイ海賊団です。

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