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■ノークタウン/乱闘イベント/ステージ:密林/プレイヤーネーム:三下
「──ッ!」
衝突。
そして、蹴り、突き、噛みつきが同時に飛んで来る。
こりゃ、盾一個じゃ処理しきれねぇ量だ。
身体強化のブースト系譜。
現時点でフルポテンシャルの上にあるフルドライブ。
それが超人的な亜音速の機動を可能とするならば。
デリケートモーションを起点とする身体強化系譜。
ハイクオリティムービングとプロフェッショナルムービングは、一味違う。
行き過ぎた身体強化スキルはある意味、自己現実との乖離が進む。
それを制御できる人間じゃないと無理だ。
だから一強時代でも、攻撃スキルである程度火力の上乗せをする、オーソドックスタイプが生まれた。
その点、俺の使うスキルは外からの刺激をより捉えることができるようになる。
そんな玄人系スキル。
圧倒的なパワーは生み出せないが、合わせ、受け流し、その点については群を抜いて精確な動きが可能となる。
「エナジーブラスト」
「サロウレジストォッ!」
弾かれたローレントは空中でくるくると身を翻しながら、魔法スキルを放つ。
フリップディレクションで弾く方向を変えるのもいいが、今回はそっくりそのまま返してやる。
弾いてもなお、自分がその放射の軌道上にいる場合を想定して取得したサロウレジスト。
ポイントであるカウンターのはじき返しを間延びさせるスキル。
なんで取ったんだっけなこのスキル。
ああ、レイドボス炎剛の火炎放射みたいなのを想定して取ったんだったな。
マナズマ戦でも一応起動してはいたが、本格的に使ったのはこいつが始めてだ。
「おら、テレポートしてこいやァ、石柱攻撃してこいやァ!」
「……」
ローレントは首を傾げながら腕をくる。
すると、石壁が周りを取り囲んで俺を閉じ込めた。
さらに上から巨大な尖った石柱が落ちて来て押しつぶそうとする。
「なめんじゃねェ!!!」
全部弾く。飛来する手榴弾も全部だ。
全部、全部、全部、フルカウルガードが発動している間は無敵になれる。
カウンターのタイミングを合わせればの話になるが、練習量甘くみんな。
もともとプロフェッショナルムービングがなくても、レイドボスクラスにはブロッキングとカウンターが成功していた。
ってことは俺もある意味、“そっちの野郎達”に近くなったってことか?
「ハハハハ! イイネェイイネェ!」
「マナバースト」
「それも相殺できんだよバァカ!」
接近する俺を吹き飛ばすスキルを使うローレント。
だが、カウンター同士がぶつかれば相殺できる。
全ての攻撃に乗り出した斬撃属性。
マジックエッジか、それも意味ねェよ。
ローレントは驚異的な動きで俺の視界から消えた。
いつのまにか後ろを取られて背中に手を当てられる。
──スペル・インパクトか。
間に合うか?
こいつの必殺技みたいなもんで、無詠唱スキル。
タイミングが掴みづらいが、サロウレジスト中ならブロッキングは容易に間に合う。
「俺も近づきたかったぜェ、ローレントォ……」
そしてそれで十分だった。
「今までのダメージ、そっくりそのまま返してやんよ! グロッジ・リバース!」
サロウレジスト中から適応されていた蓄積値も申し分ない。
左手に持った盾で殴りつけると、とんでもないエネルギーは解き放たれる。
その衝撃は、周りで俺たちの戦いを見ていたPKも吹っ飛ばすほど。
正直俺も、こんなレベルまで貯めたことなかったから驚いた。
「ヤベェ……やり過ぎちまったか……?」
「いや、なかなかいいスキルだった」
「あん? ……正気に戻ってたのかよ……てかどうやって避けやがったァ?」
なんだか知らねェけど、すげェ満足した表情を浮かべるローレントがいた。
ダメージは特に受けてそうな感じがしない。
一体どうやったんだと、睨みながら考えていると。
「テレポートで打点をずらした」
「チートだな」
「いや、俺にテレポートを使わせるまで至った三下さんの方がチートだな」
「いやいや、結局倒せてねェからテメェがチートだろォ」
「いやいやいや、テレポートの待機時間を考えたらそっちがチートだ」
「いやいやいやいや──」
「み、味方同士で何やってますですかああああああ!」
「「ん?」」
中二病患ったクソガキが、髪に草とか枝とか絡ませて飛び込んで来た。
「イタタタ、さすがに受け流しきれずに腰を痛めました」
モナカもツクヨイに続いて駆け寄って来る。
「ってことで、今回の戦いは次回に持ち越しましょう。この戦いの余波でPKの方々もだいぶ巻き添えになってやられてしまったみたいですからね」
「ここはあれですか? 私のために争わないでくださいーー! ってやつですかね? ふはは、ぶらっくぷれいやぁは味方同士の争いを体を張って止める、実はいい心の持ち主なんです! フハハーッ!」
何言ってんだこのクソガキ。
ローレントは、三下さんの天賦の才を認めています。
カイトーと三下さんには一目置いているわけです。
自分にない強さを持っているから。




