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■ノークタウン/闘技場
ノークタウンに設営された闘技場は、テンバータウンに建設されたものよりも大きかった。
何せ、久しぶりにイベント。
GSOのプレイヤー総人口も伸びている、初期あった第一陣第二陣。
そんなくくりではもう到底表せないほどのプレイ人口。
俺の知らないところではすでに別の街とか都市にプレイヤーが移っているとの噂も。
王都に行けるプレイヤーの情報はまだないが、テンバーから西側や、ノークタウンとテージのさらに先のマップへと足を運んでいるプレイヤーはいるだろう。
ここ最近いざこざでずっとテージ、テンバーの往復だったから、俺としてはそろそろ南の方へ山越えを果たしたい。
そんな心持ちです。
でも、行商馬車に第一生産組のメンバー乗っけてみんなで王都へ行ってもいいかもしれんね。
っていうかその線が濃厚というか……闘技場はすごく魅力的だし……。
『それでは最終予選を開始します!! およそ百人でのバトルロワイヤルは様々なドラマが生まれて来ました! というか、今回諸事情により予選出場プレイヤーの数が尋常じゃないくらい増えてしまったんで、GMたちは頑張ったぜーーー!!! ちなみに、ステージギミックは本戦でも有効だーーー!!』
GMベータが実況席で叫ぶ。
その煽りを受けて、観客席が大いに沸き立つ。
これだよこれ、この熱気がいいよね。
果し合いは誰も見てないところで密かに行われるもんだと今まで思っていた。
さらに言えば、スポーツに出ることを爺さんから一切禁止されていたので、俺にはある意味新鮮だった。
第一回闘技大会でもう病みつきになってしまったと言っても過言ではない!
『GMベータ、あなたはシステム担当ではないから、基本的に裏でゴロゴロしていたはずでは?』
『もうGMデルタってば、ほんっと空気読まないよねーーー!!!』
GM達が話しているギミック。
これは後で聞いて知ったのだが、今回の闘技大会からふるい分け用のギミックが追加されたらしい。
基本的にはNPCの日々の生活を公式HPで垂れ流し、イベントごとでしか顔を出さないGMだが、今回から参加人数の増大化に伴って、会場設営に大きく介入。
地面がどんどん消えて行くステージや、森林ステージ、砂浜に海の巌流島ステージなどと言った面白い遊び要素を追加して来た始末。
そんなんずるい、俺も予選に参加すればよかったと思ったのはつい先ほどのこと。
「あれやろな、先に発表しとったらあんさんどんな手つこうてでも出場しにいっとったろ?」
「……否めない」
「でも拒否られたら終わりじゃないですか? そんなことできるもんなんですかねえ?」
闘技場の入り口と通路の境目あたりでそんなことを話す俺とカイトーの間に、モナカが苦笑いを浮かべながら口を挟むが、カイトーはそんなモナカの話を聞いてため息をつきながら首を横に振っていた。
「あきまへんは、替え玉でも仕込みますやろ……ってかわいがいの一番にその片棒つかまされますやん……?」
「そうでしたねぇ……」
そんな目で俺を見るな。
でも確かに、替え玉を使えばいいか、なんて自分でも思ってしまった。
カイトーめ、よくわかってるじゃないか。
そうこう話していると、観客席からこちらに向かって声がかかる。
「おねえちゃーん! 飲み物なんか売ってないのー?」
「はいただいまー! ウチはなんでも扱ってますよー! うふふ、いっぱい買ってくださいね! サービスしちゃうから!」
カイトーは関西弁をすっと切り替えて、トーンが一つ二つも上がった声でそう返事をすると腰を振りながらドリンクサーバーを背負って観客席へと走っていった。
「え、まじで? ちょい、たくさん買うからどこのNPCかだけ教えて」
「えへへ、そうですね、ここの飲み物全部買ったら教えてあげますよー!」
「え!? マジで? かうかう! ちょっと待って、いま友達からお金借りてくっからさ!」
「はぁーい!」
……よくやるぜ。
っていうか、すっかり板についてるというか……女の子より女の子らしい。
やっぱり、男が好きな特徴って男がやっぱり詳しいのだろうか。
「はぁ……しんど。まあ、これがわいにできることやししゃーないわぁ……」
「私から見ても女子以上に女子してますよね、怪盗さんって」
「そらそれが得意分野やからな?」
さも当然という風に真顔で言い切るあたり、リアルでも精通しているのだろうことがうかがえた。
なんか、周り変態ばっかりで辛い。
でも何かを極めるってそういうことだよね。
鍛治然り、薬師然り、石工然り、商人然り、細工師然り。
俺の周りって本当に一癖も二癖もある連中ばっかりだ。
飽きないよ、飽きない。
「ほんで、話の続きやけど。わいの視線ストリーミングしたるから見てみ」
「ふむ」
「あ、私もいいですか?」
カイトーの視線を俺とモナカで共有する。
すると、仕込まれてる仕込まれてる。
第一生産組のメンツを会場から離してよかったと思えるくらい、そこそこの数のプレイヤーキラーが紛れ込んでいた。
単純に観戦してるだけなのか、なんなのかわからない。
だが、危機感は持っておくべきだと思った。
予選が終わったらこの会場はGMの宣言通り、乱闘区画へと様変わりする。
もっとも、俺もそれ目当てでこっそりいるっていうのもあるんだけど、適当に要人っぽいのを捕まえて尋問しておくことも検討している。
強そうなのは予め蹴散らしておかないとね。
「ひええ、全部集めたっていうのは本当なんですねえ……」
「せやねん、わいと同じようにメイドにも何人か女PKが混じっとるし、同業の匂いもする」
「同業? 盗賊ギルドか……」
盗賊ギルドと聞いて、俺の頭の中にはあの男の顔がちらついた。
「…………デリンジャー」
まんまと逃げられた、策中に嵌められた相手だ。
見つけたら狩る、もう決定事項だ。
「……わいも探しとくで……」
カイトーの表情がばつが悪そうになったので、この話はもうよしておこう。
こいつのことだ、見つけ出したら必ず教えてくれるだろう。
というか今現在もずっと盗賊ギルドや裏ギルドの要人の情報を追っているはずだ。
「そう言えば、レイラさんをPKした犯人はまだ見つかってないんですよね?」
「せやね……今探してんねん」
ここまで出ないってことは、敵も相当慎重に動いているのだろうか。
「レイラが名前を見ていなかったのが悔やまれるな」
「ですねえ、でもなってしまったものは仕方ないと、割り切るしかないでしょう」
「そうだな」
「生産組の方々の方がそういう面では大人ですねえ」
ニコニコと笑顔でそんなことを言われるのは少し心にきた。
まるで俺が大人じゃないみたいじゃないか……。
「あかんて……わいがしでかしたことや……ローレントはん、その責任は、ケツはしっかり拭くから、情報収集は任せてな……」
「ん? あ、おい──」
少しだけ歯を食いしばった表情をするカイトーは、そう言うとすぐにドリンクサーバーを背負って会場の奥へと言ってしまった。
「あらまあ、少し余計はことを言いすぎましたかね?」
「いや、モナカの言葉がどうこうじゃないと思うが……」
多分発端を起こしてしまったと自分が知ってたから、カイトーもカイトーなりに十分悩んだのだろう。
故に、俺の誘いにもついてきてくれてたり、色々と尽力しくてくれたのだろうし。
それでもなかなか足取りがつかめない状況で、焦燥感に苛まれているのか、カイトー。
少しだけ、あの表情を見た俺も心配になってしまった。
「お、お金作ってきた! ……って、おーい? どこいっちゃったんだ売り子のお姉ちゃーん!」
カイトー、なんか、フラグたってませんかねぇ……。
少し心配になってきましたけど、事の発端はこの男なんですよねえ……。
タフのお必殺技は再登場時に叫ばせたいと思ってます。




