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■ノークタウン/裏路地の変


「この後、どうします?」


「同じことの繰り返しかな……」


 リストに載っているPKの名前はまだある。

 タフとヤマトの名前が載っていないということは、ナガセもそこまでは踏み込めなかったらしいな。


 表向きは、俺と対立しPK集団側についてノークタウンに潜伏という形。

 でもここまで闇討ちの情報が出回って行くと、警戒するだろう。


 情報収集は盗賊ギルドに任せて、穴に引きこもるのだろうか?

 どうだろうな、血の気の多い連中がそんなことするか。


 目下の目標として、できればレイラを殺した犯人を叩き潰したいところなのだが……。

 今更ながら、ナガセにもらったこのリストにレアキャラなんて載ってない気がしてきた。

 クラフトが中堅PKだとしたら、後の野郎どもはコモン確定か。


「うーん……」


「お悩み中ですか。まあ、こっちから動かなくても敵さん向こうから勝手にやってくるとは思いますけど」


「それもどうだかな……」


 敵の目的ってぶっちゃけ何なんだろう、拠点を奪った時点ですでに達成されているのか。

 それとも、単純に街を混乱に陥れて本能に身を任せて殺しを楽しむのが目的なのか。


 こっちは色々と警戒しているけど。

 空回りする可能性だってある。


「とりあえず見晴らしのいい場所に移動する」


 監視の目を探ってみるが、こちらに向けられる視線は感じない。

 そもそも網を貼るとしたら街中、NPCにまぎれるだろう。

 裏路地はすでに彼らの庭みたいなものなんだから。


「そうですね」


 モナカの返事とともに、空蹴を用いて壁を駆け上がって行く。


「相変わらず便利ですねえ、そのスキル」


「ついてくるお前もどうかと思うがな」


「こんなの、達人なんて関係なしに、近接職の身体補正効果なら簡単ですよ」


 トントントンと、苦もなく俺についてくるモナカはそう言いながらいつもの笑顔を向けていた。

 尋問とかもこの笑顔のままやるから怖いところだ。


「とりあえず、体を動かして考えよう」


 考えてもまとまらない、そういう時は身体を動かして、ノイズが入った思考に一本筋を入れてやるのがいいだろう。

 大きめの建物の屋上へと向かい、適当に鍛錬の続きでもやろうと思っていたら、


「武術家らしい考え方ですね、お手伝いしますよ」


 モナカから魅力的な提案が。

 彼女であれば、相手に不足なし。

 どうしようかな、久々に柔道の確認でもしてみようかな。


「寝技にします?」


「寝技か、よし柔道対プロレスの押さえ込み合戦とかどう?」


「柔道ならば、私の方が何枚も上手ですよ? ではかかっていらっしゃい」


「よくいう……──」










■ノークタウン/とある屋上


「──ここにおったんかいな!」


「ん?」


 しばらくモナカとの寝技乱取りを行なっていると、屋上のドアを開けて、メイド服に身を包んだ女が入って来た。

 だが、その言葉遣いがとてもじゃないがこのゲームの給仕NPCに似つかわしくない。

 っていうか聞いただけでわかる。


「カイトーか」


「って何やその状態!?」


「あの……あんまり見ないでください」


「いや、見ないでって言われてもあきまへんわ。逆にこっちが見せないでもらえます? モナカはん」


 恥ずかしそうに顔を赤らめるモナカに、カイトーはすごく冷めた視線を向けていた。

 でも俺はどっちかというとカイトー、お前の際どいメイド服の方が恥ずかしい気がする。


「お前のその格好とかどうなんだ」


「これは潜入捜査やで! あんまり触れんといてな!」


「そうか」


「って、そんなことよりなにしてはるんや!」


「ん? 柔道対プロレスの異種格闘技戦?」


「調子に乗っていたら不意を突かれてしまいました。お恥ずかしい限りです」


「あ、その格好じゃなくて試合内容が恥ずかしいっていうとんの?」


 それもどうかと思うけどなあ……。


 十回乱取りやって、やはり寝技では分が悪いみたいで、何度も固め技を決められて調子こき出したから【残像】使って無理やり恥ずかし固めを決めてやった。


 この状況でも気を抜けば返し技を使おうと重心移動攻撃仕掛けてくるモナカが超怖い。


「スキル“なし”じゃなかったんですかねえ!」


「“なし”とは言ってない」


「卑怯者〜〜〜〜〜〜!!!」


 卑怯で結構、勝負事は裏の読み合いが全てだ。

 先に勘違いしていたモナカが悪いのだ。

 俺は断じて悪くないのだ!


「あの……時間ないから話進めてもええ?」


 カイトーがなにやらげっそりとした顔をしていたので、とりあえず乱取りを一旦やめにして話を聞くことに。


「仕入れて来た情報やで」


 カイトーは仮想画面を開くと、それを俺らに見せるように手を動かした。


「なにやら潜入してもろとるナガセはんも呼ばれて、どうやら観客として闘技大会の会場にみんな集もうとるみたいなんや……、一応マップをコピペした情報と、看破で見つけて来たPKの情報を照らし合わせとるもんや」


 参加プレイヤー総数はかなりのものだ。

 特に、俺が出場しないとわかってから、参加するプレイヤーの数は大きく増えた。

 二日の闘技大会工程で終わるのか心配したが、今日は予選を早回しで行なっているという話。

 また、バトルロワイヤルでもやってるのだろう、次は30人とかじゃなくて100人生き残りとか、そんなレベルだ。


「……奴さん、作戦大きく変えたみたいやで?」






次、闘技大会の様子。

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