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■ノークタウン/路地裏の空き地/




 ヤマトがミサンガを装備しているとなると、自ずとタフも同じようにミサンガを所持しているだろう。

 と、言うことはお互いがミサンガ所持した状態での戦いとなる。


 面倒だ。

 とは思ったが、致命傷を二回ほど与えれば済む話か。

 裏ギルドもある一定ラインより下の格下層にはミサンガを配布していない。

 なかなかに本気度が伝わってくるじゃないか。


 そこまでして、俺を殺したいのか。

 ……面白い。


「昔を思い出すよね」


 大太刀を構えながら、タフはそう呟いた。


「昔?」


「あんたは、それはもう強かった。僕たちも戦いを挑んで破れてる訳だし」


「そうだったな」


 武者修行からの帰路の山中。

 確か野宿しているところをいきなり挑まれたのが、出会いだったかな。


「ミヤモト君と同じように、僕も二度と武器を持てないようにされたし、男としても生きて行く事を諦めざるを得ない状況に追い込まれた」


「……ええ?」


 確かに、挑んでくるやつには容赦しなかった。

 ミヤモトの腕を切り落としたように、このタフも例によって同じ運命を辿らせた。


 兄貴の方は弱かったから、派手にぶっ飛ばして片がついたので、五体満足だったみたいだが……このタフの方はミヤモト並みにそこそこの腕を持っていたので、そうせざるを得なかったと思っている。


 あくまで武人、俺の命を奪いに来たのだから、逆に命を奪われるほどの覚悟を持っていて当たり前だろう。

 だが、利き腕を肩から切り落としたのは覚えているが、どうして男をして生きて行く事を諦める結果になるのだろうか?

 そこが不可解だった。


「話がわからない、みたいな顔をしているね」


「……いや実際に話がわからんのだけど」


 そう言うとタフは額に青筋を浮かべて笑顔のまま斬りかかって来た。

 飛び上がり空中で前転しながら遠心力と体重を使った大太刀の振り下ろしは、その小さな体躯からは想像もできないほどの威力を生む。


 受け流せるか?

 いや、手首をへし折られかねない。

 半歩足を引き、ギリギリで身を躱す。


「あの後! 僕はっ! 全身血まみれになりながら山の中を這いずり回り、生死の境を彷徨った!」


「生きててよかったな」


「だが、力尽きたところ地に引き寄せられた猿たちに……猿たちに……!!」


 ……集られたのか。

 あそこはかなりのエテ公が生息してるし、奴らは雑食。

 そして好奇心も強いもんだから、さもありなん。


「クマとかじゃなくてよかったんじゃないか? もしそうだったら腕と武器をなくした状態で到底太刀打ちできるとは思わんからな、ほんと、生きててよかったな」


「あんたが元凶だろう!」


 ……元凶は山中でいきなり挑みかかって来たお前ら兄弟だと思うんだけどな。

 家に帰って正式に試合の申し込みとかしてくれればまだ相手した可能性がある。

 まあ、殺し合いを望む相手がそんな面倒なことをするとは思わないけど。


「だいたい、覚悟の上だろう」


 斬り結ぶ大太刀が、感情とともにややおお振りになっていたので、手甲で受け流しそのまま鳩尾に肘鉄と決める。


「ぐふッ!!」


「一度落ち着け、太刀筋が鈍ってる」


「──チッ!」


 タフは腹を抑えながら身を翻して距離を取った。

 そしてデカイ太刀を肩に担いで“担肩勢”という構えに。


「まあ、確かにそうだね。男を失って、目玉をえぐられそうになった時、ギリギリで兄さんに助けられて……僕らは真の愛に目覚めたんだから……」


 ……猿拳の恐ろしさは雪山の時に語ったと思うが。

 野生のエテ公ってのはいかんせん、人が思いもよらるようなエグいことを平気でする。


「あの、マジで、ごめんな?」


 こいつが猿に襲われて男に目覚めた理由を少し聞いて、なんとなくだけど想像がついた。

 そしてタマヒュンした。


「今更謝っても遅いけど? まあ、悪いことばっかりじゃなかったからね……」


 タフはゆらゆらと動きながら近づいてくる。

 ……なるほど、ある意味モナカの使う無拍子にも近いこの動き。

 全身を柳葉のように動かして、攻撃のタイミングを悟らせない気か。


「ホルモンが影響してるのかな? 全身の筋肉という筋肉に今までみたいに力が入らないんだよ。でも、もともと僕は力が強い方じゃなかったから……」


 そう言いながら、タフは倒れこむ力を使って担いだ刀の刃を向けた。

 トンッ、と重力に逆らわず飛ぶ。


 たったそれだけの動作だが、動きのタイミングを悟らせないようにそれをやった場合。

 いきなり転んだ人間が、視界から消えたと錯覚してしまう時と同じような状況に陥るだろうな。

 それがあくまで一般人であれば。


「男でも女でもないけど、そもそもの話、もともと武術に男も女もない。これって、真理だよね?」


「……そうだな」


「そして、種を超えた男同士、そして兄弟の愛も、真理だよね?」


 それはしらねぇ。

 頭沸いてんじゃないの。


「とにかく」


 後ろにステップを踏みながらタフの動きを警戒し、先んじて回避行動を取る俺を、まるでどこぞのグラビアアイドルみたいな少し惚けたような視線で見つめると──。


「しなやかさにプラスして、目も良くなったんだよね」


「──む!?」


 タフは、俺の三手先を読んで大太刀を振るった。

 トン、トン、トン、と彼の予測を準えるように、俺はその攻撃範囲へと足を踏み込ませてしまう。


「……ふふ、それ、面白いスキルだよね」


 アポートで刀を転移抜刀させてなんとか凌ぐ。

 投擲による絶対の先手を用いてきたこのアポートというスキルだが、その本壊はやはりこの後出しジャンケン並みの応用の速さが武器だな。

 チャージの吸い付くような仕様がなければ目の前に刃物を振りかざすだけで、防御がぬるいやつは死ぬ。


 っていうか。

 そんなこと置いといて、


「視力の向上? 体つきが変わるのは……わかるけどな」


「僕にも詳しくわからないけど、ただ一つだけ言えるのは、色彩感覚がはるかに増して、以前よりも細かい部分を無意識のうちに認識することができるようになったのかな?」


「……観の目か」


 通常は、拳を振り上げてそして振りかざした腕を見て軌道を予測するのが動物の常だ。

 だが、観の目は全体からものの動きを捉え予測する。

 その分脳が処理する情報量がしこたま多くなるので、ある程度鍛えないと難しい。

 達人でも鍛えてようやく体得できる、そんな視力を……、


「そうさ、僕は絶望の淵から掴み取ったのさ。希望の心理とともにね」


 タフの話が本当なら、相手の動きを細かく予測できるのもなんとなく納得できた。


「未来予知だな、ハハ……」


 そんな笑いが思わず口から漏れてしまった。

 タフの技は、ある意味、相手の全ての隙と死角を読み取る俺の“極意”と似ているな。


 相手のありとあらゆる無意識を刺す技と。

 相手のありとあらゆる動きを予測する技。


「どっちが勝つか?」


 矛と盾とは言わんが、互いに相応の技をぶつけ合うとどうなるか気になった。


「僕に決まってるでしょ! 性質的には僕の未来予測の方が上だ!」


「ほう……なら、──予測し(やっ)てみろ」


 全身を脱力させ、タフの目を見る。

 いい目だ、よくぞここまで……と言えるだろう。

 だが、この世界が武術だけが全てではないと知れ。


「──エナジーブラスト」


「なっ!? そうか、てっきりリアルのあんたの印象が強いから、この世界じゃ魔法使いだってことを忘れていたよ!」


 極太の放射をギリギリで躱すタフ。

 至近距離で躱しただけでもかなりの反応速度を持っている。

 だが、その一手が命取りだ。


「くっ……なッ!? き、消えたッッ!?」









ホモショタではなく、ホモカマショタでした。笑


まあ、普通ありえねぇことですけど、もしかしたらそんな難病奇病があるかもしれませんしね……?

ほら、えろどうじんびょうとか、なんとか。笑


未来予測の目の名称を考えてたんですけどなんかいいのが浮かばなかったので、感想とか活動報告コメント、メッセージで良い案がくればその中から選びたいと思います。


未取みどり」も実は読者募集で決まったものだったりします。

例えば、この話にあるこの技、こっちの方がかっこいいぞ、とか自然だぞ。とか。

スキル名これよかこっちのほうがいいだろ、とかあれば。

つけて置いてくれれば、もしかしたら今後の話で変えることも一つ、ありうるかも知れませんな!


次次回くらいから、第二回闘技大会編へと移ります。

こういうネタがキツかったら感想かメッセで一言下されば、自重いたします。

そろそろ掲示板回くるからアピールどうぞ。


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