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■ノークタウン/路地裏


「……ふぅ」


 残りの三人を片付けて一息ついた。

 追跡して来る奴がいるってことは、裏で色々とやってるのがそろそろバレた頃合いだと見て良いだろう。


 脅して手に入れた情報はそこまで多くない。

 追跡要員に大事な情報は持たせていないようだった。


 それもそうか、と納得しながら。

 羅刹で首を切り落とした屍の上に座して待つ。


 案ずるな、待てば来る。

 その思惑通り、路地の先からこちらへ歩いて来る足音が二人分、聞こえてきた。


「兄さん、出なくて良いの? 闘技大会なんて面白そうじゃん?」


「素人の集まりに出る必要はない」


「確かに素人だけど、ゲームに関しては僕たちの方がずっと素人じゃない?」


「弟よ、俺とお前は達人の域に上り詰めた玄人。げえむに置き換えたとて、その事実は覆らんのだ」


「ふ~ん、まああえて戦ってエキシビション狙わなくても、こうして道端でエンカウントする分……こっちの方が手っ取り早いから僕も賛成かな?」


 む……?

 背よりも短い黒塗りの大和槍を持った大柄な男と、緩やかな湾曲を描く背丈より大きな大太刀を背負った小柄な男。

 チグハグな二人が、そんな会話をしながら近づいて来る。


「ほう……悪鬼羅刹とはまさにこのこと……」


「噂はかねがね聞いているっていうか……ゲームの世界でもあんまり変わんないんだね、あいつ」


 なんだ、俺を知ってるような口調だな。


「……誰?」


 首を傾げながらそうたずねると、大柄の男の方がひたいに青筋を浮かべながら言葉を返した。


「貴様、よもや俺たちの忘れたとは言わせんぞ……ッッ!」


 そう言われてもなあ、顔もいじれるゲームだから。

 人相に頼ったところで信憑性は薄いだろう。


「ねえ、そのやりとり面倒だから……普通に名乗っちゃおうよ?」


「それが良い」


「覚えてるかな? 野伏兄弟って、少し前々武術界隈では有名だったんだけど……?」


「……野伏」


 ああ、思い出した。

 短槍の大和と、大太刀の太布。


「なんかそんな呼ばれ方をしてる武器使いの兄弟がいたっけな……」




【ヤマト】職業:槍術師

・道場六段

・中級調教師

・見習い錬金術師

・レッドネーム

 [プレイヤーキラー]


【タフ】職業:剣術師

・道場六段

・上級猟師

・下級薬師

・レッドネーム

 [プレイヤーキラー]



 一応鑑定入れてみると、道場段位が見えた。

 これだけで、それなりに武術を積んでいるものだと言うのがわかる。

 初段とるのは簡単でも、段位を伸ばすとなるとスキル以外の修練も必要になるからな。

 ある意味玄人プロ向けコンテンツのようなものだ。


「へぇ……それだけなんだ……なんかちょっぴりイラっとしちゃったかも」


 俺の言葉に、タフは笑顔を崩さないでも少しだけその表情の奥に殺気を見せていた。


 っていうか、野伏兄弟って二十代後半くらいだったはずだけど。

 兄貴の方は老け顔だとして、タフの顔つきはモロ少年のそれだぞ。

 確かに見た目に反して若い奴だったとは覚えているのだがなあ……。

 キャラメイキング頑張ったのだろうか。


「いや、よく覚えているさ」


 イライラしているタフ君に、そう言い返して俺は距離を詰めた。


「──ッッ!?」


「──確か弟の方が強かったよな?」


 そう言って大太刀を構える前に肉薄、羅刹の剣戟と同時に膝蹴りを見舞う。


 野伏兄弟は槍術と太刀術に天賦の才を持って生まれたとさえ言われていたような、いなかったような。

 血の成り立ちが金を積まれればどこでもだれでも殺しに行く野伏だったと言われている。


 たかが徴発された野武士だと、思うことなかれ。

 自然の中で武と共に暮らし、戦国の世のをその戦闘術で生き抜いてきた。

 まさに戦の生え抜きとでも言えば良いのだろうか。


 洗練されたその武器捌きは人を殺すために培われたものだと評されていた。

 そして、短槍を扱う大柄な兄貴よりも、小柄で自分より大きな太刀を使う弟の方に武の才能は大きく片寄っていたことも記憶に新しく感じるようだった


「俺を愚弄するのか!! ぬあぁッ!!!」


 兄貴の方が手首をクルリと返して短槍を俺とタフの間にねじ込んで来る。

 俺の刀がまず止まり、そして膝蹴りが腹に命中する前に、大太刀の鞘が行く手を阻んだ。


「武器持ちに武器を持たせない……さすが、なかなかのやり手だねぇ……でも──」


 背負った大太刀は背丈ほど。

 抜刀までに時間がかかると言う大きな問題がある。


 構えていない状態から先頭に持ち込めば一瞬で終わるとは思っていたが、やはり一筋縄ではいかないらしい。


「──武器さえ抜ければこっちのものってことでオッケー?」


 タフは、しゃがみこみ鞘を走らせながら大太刀による変則的な居合抜きを放った。

 トンッ、と軽く跳ねてそのまま空転。

 遠心力を味方につけて、大きな太刀を振り回す。


 ……これだ。

 小柄な体格からその前身を使って太刀を使う。


 己が一身、武器と至りて。

 そして武器は人を殺す道具、まさに申し子である。


「うわぁ、これ流すんだ? でも、僕のターンは続くみたいだよ?」


 手甲の上を滑らせて斬撃を受け流す、そのまま殴り倒そうかと思ったら鞘を使って地面を弾き、路地の壁に垂直に着地すると再び斬りかかってきた。

 あるものは全て利用する、まさに野伏家の培ってきた技術と言えるだろう。


「だが……」


 手を交差させて、太刀を受けた。

 そのままスペル・インパクトを唱えながら手甲弾きを用いてその太刀をへし折ってやろうと思ったのだが……。


「俺を忘れるなッ!!」


 邪魔が入る。

 そう言えば隣に兄貴の方もいたなあ、とそんなことを思いつつ一度距離を取るために後ろに飛ぶ。


「逃すと思う? 端っからあんた相手に一人でやるつもりはないよ。僕たちは殺しの依頼を受けてここにきたわけなんだからさ?」


「チッ」


 すばしっこい奴は厄介だな。

 兄貴の方とは違って、弟の方はすでに闘志を発動させていたみたいだ。

 なんだろう、若い分ゲーム慣れしているのだろうか?


「く、闘志! やはり慣れんぞ!」


「ぷくく、兄さんってほんとこう言うの疎いよね!!」


 速度が増したヤマトの方も、壁を走って上からくる。


 小柄に大太刀。

 大柄に短槍。


 一見チグハグな組み合わせだと思いきや、そうではない。


 太刀、槍、共にリーチをアドバンテージにもつ武器なのだが、こいつらは身体と武器の長所と短所をそうして埋めて、どんな状況でも有利に戦う術を血脈と共に受け継いでいるのだ。


 さらに面倒なことに、兄弟である分。

 息のあった見事な連携を可能とする。


ったッッ! 見よ弟よ、兄の渾身のひと突k──」


「──馬鹿兄さん!!」


 功を急いだな?

 弟の方は誘い込みを感じ取り、徐々に間合いを詰めてくるつもりだったようだが……。

 兄の方はやはり心の何処かに、弟よりも先でありたいと言う思いがあったのだろう。


未取みどり


 後ろを取る。

 二人いた場合、付け入る隙がほぼなくなると言っても過言ではなく。

 死角を取るのに苦労するのだが、一人が節穴になれば十分だ。


「まず、ひとり」


 ヤマトの首を刎ね落とす。

 ……が、なぜか死なずに復活を遂げた。

 これは……兎のミサンガか。


 デスペナルティを一度だけ回避するアイテム。

 作れる人が限られてるから、あんまり出回ってないはずのアイテムなんだけどな。

 逆に槍で突き殺されそうになったから空蹴で距離を取る。


「……肝が冷えたぜ。本当に死を回避するとは、さすがの代物だ」


「兄さん、迂闊なことはやめてよね!」


 切れたミサンガを持って感心する声を出すヤマトに、タフは頬を膨らまして怒っていた。


「すまん、奴の言葉にすこしムッとしてしまって」


「ダメだよ? 戦いは僕の方が強くても、兄さんは兄さんにしかないものがあるでしょ!」


「すまんすまん、頭を撫でてやるから許してくれ我が弟」


「えへへ〜」


 ……ん?

 あんな奴らだっけな……あいつら。


「なんだおまえらは……?」


 そう言うと、ヤマトが誇らしげに胸を張る。


「なんだとはなんだ、俺たち兄弟は武術の道の果てに、ついに真の愛に目覚めた。それだけのことよ」


 そしてなぜかタフが頬を染める。


「兄さんが変に男を見せなかったら今の取れてたよね? まったくもう……兄さんっていつも早いんだから」


 ……?

 ……???


「これは、ホモォという奴ですね、美男子様?」


「ふぁっ」


 なぜか隣に道着に革製の軽鎧を身につけたモナカが隣にいた。

 いつのまに、気づかなかったからびっくりした。


「ホ、ホモォ?」


「男同士が男女という生物の垣根を超えた深い愛情を手にし、力が何倍にもます奥義です」


「…………はあ?」


 世界観がわからん。

 それは友情じゃないのか?

 そう、モナカに尋ねると。


「いえ、愛情です。男女の間で育むべき愛情を男同士で育て、鍛え上げた、それが今の野伏兄弟ですよ☆」


 し、しらねぇ。






どぎついキャラが出た。

びゅっとね。

自重します。

次回はしっかり自重しますので。





ちなみに文字化けしているかたがいらっしゃいましたらご報告を。

☆=ほしの記号だと思ってください。

見る環境によってやっぱり違うみたいなので><


次回もバトル回。

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