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■闘技大会初日


『さーていよいよ盛り上がってまいりました! 第二回闘技大会ですよー! 今回もGMデルタとGMベータが実況解説、そしてイベントの司会進行を務めさせていただきます!』


『GMベータ、司会進行はわかりますが、実況解説も私たちが担当するんですか?』


『じゃじゃーん! 特別ゲストに久利林さんをお招きして実況解説を行ってもらいますよー!』


『GMベータ、当初の予定ではあの人が来てくれるはずでは?』


『あー、アルファが泣きながら他の人を準備してくれって言って来てさぁ? 仕方なく代役として久利林さんをお招きしたってわけさー!』


『おい! 本人の前で仕方なくとか普通いわねぇだろ!』


 ハットを被ったハイテンション紳士のベータと、その隣には冷めた表情でノースリーブヘソ出しボディコンのデルタ。

 そして彼らと同じ席につくヘッドセットをつけた久利林が、空に浮かぶ超巨大ディスプレイのなかでそんなやりとりをしていた。


『てめぇー! どっかで見てんだろー! ローレントー!』


 設置されたカメラにしがみついた久利林の顔面が映る。

 クリクリっとした光る丸坊主が、俺の名前を呼んだので、とりあえずフードを目深に被って歩くことにしよう。


 招集は面倒だ。

 解説役なんてやってる暇はない。


 ちなみにGMアルファからのメッセージはこうきていた。




[※※※ゲームマスターより貴方に大切なお知らせがあります※※※]

『GMアルファです。わかってると思いますが、当日解説席に来ても来なくてもどっちでもいいので、とりあえずエキシビションマッチが開始する時間帯までにはお越しいただくようお願いします。テレポート系のスキルをお持ちだと思うので、今回は特別に私をフレンドリストに入れておいてOKなので、そちらをご利用ください』




 指定された時間までに来れば、なんでもいいようだ。

 これはこれはラッキーなことに、フレンドリストに名前を追加してもいいとのこと。

 でもそれだと色々追跡されかねないから、テレポートするときにやっておきましょう。


『それでは予選の方を開始させていただきますよー! 今回は前回よりより一層多くのプレイヤーがエントリーしてくださいました! さて、その中にはもちろんレッドネームの方々もいらっしゃいます! でも今だけはそれを忘れていただいて! PVPを盛り上がりましょう!』


『いざこざ便乗して、なんだかんだイベントとして扱ってますしね、GMベータ。決戦の後、こちらの闘技場スペースはPKとPKKの混戦会場として使用してもいいので、勝手に乱闘してください』


『助長してもいいのか……? まあなんにせよ、暴れたい奴らはあばれろよってことだな! 説明少ないから足しとくけど、今日だけ、PKやっても間違えてそうじゃない奴やっても、信用度は減らないし、レッドネームにもならないぞ! 無礼講だ、無礼講! そして一般プレイヤーはPKを倒すと高得点! PKはPKKを倒すと高得点! PKK指定のプレイヤーは一般もPKも特典は変わらないが、一度殺された相手を殺し返すと最高得点だ!』



 久利林の言葉とともに、会場は大いに沸き立った。

 なんだかんだ楽しいイベントじゃないかってことで、俺は空の大画面に背を向けて道を歩き出した。


 ノークタウンはケンドリックのお膝元。

 同時にアンジェリックのお膝元でもある、そして彼女の情報網に従って、敵を見つけて闇討ちしていく。


 それが今日の楽しみの一つ。

 さすがに今日、テンバータウンに溜まっている輩はいない。

 むしろ、昨日ボコボコに破壊し尽くしたテンバータウンに止まる場所なんてない。


 船も壊した。

 まあ、エンジンはないからいいのだが、マルタがいい素材くれって言っていたので、今度大量に取りに行くことに。


「いらっしゃい」


 フードを被ったまま、溜まり場を巡って行く。


「兄貴!」


「ん?」


 ナガセとその仲間たちがいた。

 ここはこいつらが溜まり場にしているところだったか……。


 ナガセは対外的には俺の敵として行動してもらっている。

 PK集団にも派閥はあって、裏ギルドに所属せず、天下を取ろうと言うアウトロープレイヤーたちは多い。

 それを利用して、PKを裏からガリガリ削って行くのだ。


「ナガセさん……こいつは誰だ?」


 一部中枢にしかナガセが話していないから、こんな輩も出てくる。

 かわいいもんだな、とりあえずナガセがげんこつしていた。


「いてぇっ!」


「馬鹿、手を出すと逆に殺されるぞ。ローレントの兄貴にな」


「ロッ──!?」


 それを聞いて、周りがざわつく。

 こいつら、初見の相手にまったく鑑定使わないよな。


「とりあえず情報をよこせ」


「あいよ」


 ナガセは俺に小さなメモ帳を渡した。

 仮想画面のメモ機能に、色々とコピペしてもいいんだけどな。

 個人掲示板とかもあるし、もう使ってないけど。


「こっちの方がなんか風情あるじゃん?」


「確かに」


 ニッと歯を見せて笑いながら、ブランデーを煽り葉巻をふかすナガセに同意しておいた。


「すげぇよナガセの兄貴! あのローレント繋がりがあるなんて! 敵対しねぇだけでも、天下を取るに十分な条件だぜこれ!」


「バーカ、天下を取る取らない以前に、まずは兵隊集めろ、兵隊」


「へぇ……知り合い連中はみんなこのゲームに突っ込んでるんですが、このゲームの中だけでとなると……今はバッシングとかPKへの当たりが強くて……あんまりうまくいかないんですぁ……」


 そうなのか、PKも大変だな。

 だがナガセは別にPKを集めるとかそう言う意味で言ったわけではない。


「NPCにもいるだろ。そいつらをこっち側に全部流しちまえ。とりあえずお前はあれだ、このイベントが終わったらテージの弱小マフィアを適当に潰してこっちになびかせる仕事あるから、それな?」


「げ、激戦区じゃないですか!」


「戦わないと、強くなれないぞ? とにかく新入りは全部一度は経験することだ! カッカッカ」


「ひえええ!」


 青い顔しながら、舎弟の一人はみんなが笑うテーブルに戻って言った。

 さて、余計な視線も無くなった。


「俺も一つもらう」


「奢るぜ。マスター」


「……瓶ごともらえるか?」


「おいおい、これ六十度だぜ?」


「いや、今は飲まないがちょっと取っておきたくて」


「まあ、いいけどさすがにそれは奢れないぞ? 一度潰れてお金ないんだから……ファシミの暮らしも支えていかないと行けないし」


 なんだかんだ、屋敷を払ったファシミはテージからさり、アンジェリックの息のかかるノークで生活している。

 テンバータウンで暮らすのもありだが、プレイヤーが所有する建物が少ないってのもあり、ここに落ち着いたと言うわけだ。


 独裁を振るっていた女マフィア、ぶっちゃけ深いエピソードがないから顔すら思い出せないが、ノークタウンでの商いをアンジェリックから斡旋されているらしい。

 女マフィアを使ったメイド喫茶だっけなあ……うーん、美人揃いだってのは知ってたけど、なんか俺とニシトモ、トンスキオーネがやってることパクってる気がしてならない。


 まあ、そんなことはさておいて。


「邪魔した」


「……やられんなよ」


 そう言ってこの汚いバーを後にすると、後ろからナガセがそう呟いた。


「やられる前にやり返す」


「……それ、やり返すっつーの?」










ついにイベント始まりました。





今の所わかっているヒロイン情報。




ツクヨイ……多分18歳、保育系の専門学校?に通っている?

十六夜……年齢不明。里の者。

十八豪……多分ローレントと歳近い。酒豪。一時期久利林と付き合っていた。

ブリアン……リアル農家の者。実はめちゃくちゃ美人という情報。

アルジャーノ……不明。

サイゼ・ミアン……調理師系専門学校に通っている。

レイラ……製薬会社の人。書籍版外伝ではガストンと一緒にローレントが一悶着起こした喫茶店に来ていた可能性がある。

アンジェリック……ケンドリックの妹。血の繋がりは不明。


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