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「は? ──ぇ?」


 髪の毛掴んで片手に持つ。

 さてと、蟻の動きは止まるかな?


「……止まらないのか──って」


 ルビーが弱った女王蟻に上から全力の蹴りを浴びせた。

 急いで飛び降りると、女王蟻の頭が地面にめり込んでいた。


 それを助けるために雑魚蟻達が群がってくる。

 ギジドラの身体がその蟻に飲まれてしまっているのを見る限り、制御からは外れたと思っていいだろう。


「離脱だ」


「ピィ」


 再びルビーに乗って跳躍すると、ちょうどトモガラが雄叫びをあげながら中央に向かってきていた。


「経験値いただきだ!」


 兵隊蟻が肩や足に食いついているが、トモガラは止まらない。

 巨大なまさかりで蟻達を打ち上げながら女王蟻に接近し、そのまま薪割りのように何度もなんども頭に打撃を与えていた。

 それで女王蟻も動かなくなる。


「──な……な……」


 首だけになったギジドラは女王蟻がボコボコにやられるのと、自分の身体が飲み込まれ従えていたはずの蟻達に貪られるのをよく見ていたようだ。


 放心状態か、さもありなん。

 クラフトの精神力はかなり強い部類だったと言えるだろう。

 所詮何かに頼って奢るような人間は虚を突けば脆く崩壊する。

 だからこそ、クラフトには後ろ姿を見せた。


「おい」


「あ、え……う……あ……」


 話にならない。

 殺す気でかかってくるくらいなら、首だけになっても食らいついてみろ。

 これだから、ストレスのはけ口でこんなバカな子供みたいなPK行為をする奴は好きじゃない。


 ギジドラの相手は、本当に楽しくなかった。

 ミヤモトが言っていたように、裏ギルドに所属した“本物”のPK達はどうした。


 いるんじゃないのか、すぐそこに。

 おまえらが奪った拠点は、俺が蹂躙しているぞ、早く出てこい。


 ……虚しいだけだな。

 さて、埒があかないので、トモガラとともに蟻の殲滅にかかるとしよう。


「人を殺すなら、殺される覚悟を持て」


 聞こえているのか聞こえていないのか、わからない。

 だが、そんなギジドラの生首の口に手榴弾をねじ込んでスイッチを押す。




 ──そして、スペル・インパクトを込めて全力で蹴り上げた。




 月に向かって飛ぶ生首は、そのまま上空で爆発した。




「へっ、きたねぇ花火打ち上げてんじゃねぇよ」


 鼻で笑い、蟻をぶっ飛ばしながらそういうトモガラに言葉を返しておく。


「……完全に不完全燃焼」


「なら暴れていけ、まだまだたくさん蟻はいるぜ?」


「そうだな」


「けっ、なんか雰囲気が面倒くせえ感じになったと思ったら、一人で勝手にキレてその矛先見失ってるだけじゃねぇか……変わってねぇ、変わってねぇ」


「……」


 それもそうだな、と実感する。

 これは……テンバータウンは破棄だな。

 すべて、全てぶち壊して新しく作ったほうがいい。


 経済制裁をニシトモが行なっている以上。

 崩壊させられた拠点を再び一から作り直す体力がPKにはあるのか。

 まあ、裏のルートで何かしらのことができるかもしれんが、南方を治めるレジテーラがついて、さらに裏のマフィアを俺が抑えた。

 あとは、ノスタルジオさえ潰してしまえば手出しはできないだろう。


 トンスキオーネから未だオッケーサインが出ないあたり、まだ時期ではないということだ。

 いずれ、いずれ蹴りをつける、そして俺がテンバータウンにいる限り面倒な真似はさせない。


「もうひと暴れする」


「いいぜ、馴染みとして付き合ってやるよ。創造のあとは破壊で破壊のあとは創造だってな……どっかの芸術家がいってたらしいぜ」


「……しらんなあ、でもとりあえず首謀者クラスが出てこない以上、ここの拠点は取り返せない。後手に回った時点でダメだったわけだ……だったら自ら放棄するまで徹底的に叩こうじゃないか」


 そういうと、トモガラはニヤリと笑いながら、巨大な鉞をしまうと斬馬刀をさらに巨大にした大剣を二本、両手に構えた。

 俺も刀と六尺棒を構える。


「おい、ローレント」


「なんだ?」


「闘技大会終わったら大型アップデート第二弾だぜ」


「そうだったな」


 ついにステータスが導入されるらしい。

 ステータスというものがどういうものかはなんとなく察しはつく。

 だが、ここまでレベルを上げて今更ステータスがなんだと言うんだろうか。


「臭え情報だと、身体能力の強化みたいな、オーソドックスなもんらしい」


「ふーん……」


「興味なさげだなおい」


「今さら身体能力強化してもなあ?」


 魔法職だから、すごい魔法が欲しかったりするのだけど。

 すごーいスキルがもらえたりするわけではないらしい。

 あくまでスキルの威力向上におけるさらなる個性化が図られると言うことだった。


 ……ダメだ、わからん。

 とりあえずアップデートを待つしかない。


「とりあえず、アプデ終わったら試しにデカブツ狩り行こうぜ」


「強くなるならさらに上の魔物も倒せるのか……そうか……」


 うむ、楽しみにしておきましょう。


「っしゃ、やんぜ!」


 トモガラは自分の頬を軽く叩いて言う。


「ちなみに俺の目を通してストリーミングで事の顛末を生産組に流してるからな」


「へえ、気が利く」


「お前だって、掲示板に貼られてたぞ? オメェのストリーミングURL」


「……はあ?」


 掲示板に?

 この戦闘模様が生中継されてたのか?


「……カイトーめ」


「いや俺がやった」


「トモガラァ……」


 俺はストリーミングを閉じた。

 今回はカイトーのサポートこみでこうやって映像配信をして見たわけだが……迂闊にするもんじゃないな。

 っていうかトモガラ、全てお前が悪いぞ。


「エナジーブラスト」


「うぉっと! あぶねぇな!」


「手が滑った」


「滑ってビームが出るかよ」


 チッ、殺し損ねたか。

 まあ、こんなところでPKになってレッドネームになるのもあれだし。

 ここはぐっと飲み込んで、この気持ちはPKの残党と第一拠点村に当てよう。


「おっと、トモガラ」


「んだよ、今から攻勢出ようと思ってんのによ」


「お前のは掲示板につながっているのか?」


「いんや? 自分のをするわけねぇだろが!」


 ピキピキピキピキ……。

 ま、まあいい。

 本当にこいつは昔っからどうしようもない奴だ。

 だが、そんなことはさておいて。




「すまない、みんなで一から作ってきた拠点を俺は壊すことにした」




 こうして画面の向こうでも、面と向かって“友達”に謝罪するのは初めての経験かも、なんだか緊張するな。




「まずサイゼとミアン、すまん。サイゼミアンは爆破した。でも新しい店の店舗代は全て俺が持つ」




 一番最初に、手榴弾を店の中に複数転移して木っ端微塵にしてしまった。




「次にガストン、弟子たちも使ってる工房だが……これも壊す」




 サイゼミアンもそうだが、俺の知らんところで色々と今まで培った歴史や思い出があったんだろうな。




「あとは見てるか知らんが、責任は全て俺がとる。だから一からまたやり直さないか?」




 自分でも思い切りのいいことをした。

 だが、更地にしたほうがいいと思ったんだ。

 システム面での初見殺しには対応できない。


 レイラの方針には賛成だし、みんな納得していた。

 だが元を正せばだ……彼女だけに責任を丸投げしていたこともまた確か。




「次は第一生産組でまとまろう、レイラに負担を丸投げするのもダメだ」




 どう言う仕組みにするか……は、まだ決めてない。

 そう言うのに詳しい奴らがやったほうがいい、ニシトモとかにやらせればすぐにうまく回りそうだけどな。


「とにかくそれだけだっ」


 なんか途中で恥ずかしくなってきたのでそれだけ言ってトモガラに背を向けた。

 それでもまだストリーミングしてそうだったので、“未取”つかって顔面に蹴りを入れてやった。


「ぶはっ! オメェよおっ!!!」


「知らん、やるぞ。ノーチェ、ローヴォ、戻ってこい」


 呼び戻したが、ノーチェには乗らなかった。

 ローヴォやルビーと同じように、自由に動いてみろっていうところもある。


「目が覚めてログインした奴らが驚くくらいまでやるぞ」


「わかってるぜ」


 それだけ言葉を交わすと一斉に動き出した。

 時たまメッセージが来ていたのだが、見る必要はなかった。

 書いてあることみんな同じだったしな。



 夜が明ける頃には、すべて建物が倒壊。

 そしてテンバータウンのNPC達が総動員し破壊された拠点村の瓦礫回収やらなんやらを行なっているようだった。

 運悪くログインしたプレイヤーキラーはかたっぱしから蹴散らしたがその中に旧知の達人クラスは混ざっていなかった。


 敵はすでにノークタウンに向かっているのだろうか?

 まあ、それも後々わかることだな……。







生産組がリニューアルするそうですよ。

PKとの抗争は次回から闘技大会ですので、そこで絡んで来ます。

奪われた拠点はとりあえず更地に、そして出てこなかったPK上層部は一体どうなるのでしょう。


十六夜のリアルに切削すると、多分知らぬうちにピンポンがなると思うので。

感想欄で詮索しないよーに。


電子書籍出ています。

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