-428-※※※十六夜視点※※※
そういえば、電子書籍版が発売されてます。
■第二回闘技大会前夜/第一拠点村上空/プレイヤーネーム:十六夜
よくわからない残酷なバッタの下から、ほんの少しだけ……彼の背中から伝わってくる雰囲気が変化したのを感じた。
一見隙がないように見えて、実は隙だらけだったりするそんな彼が、第一回の闘技大会でほんの少しだけ見せた本気に近い雰囲気。
あの時も、本気を出していたかどうかすらわからないほどの動きだった。
私の“目”で見ても次元が違う。
いったい、どれだけの困難を超えて行けば……いいのでしょう。
私も里でそれなりに鍛錬を積み、試練を受けてきました。
それでも霞んでしまうような、卓越したものがそこにあって……お父さんとお母さんにこの人を旦那にしますと連れて帰りたい気持ちでいっぱいでした。
出会いは月夜の森の中。
テイムモンスターを持った男女の二人が夜の森で一緒に狩る。
ペアルック狩りですね、運命感じちゃいますよもう。
さらに、私の心をかき立てたのは狩りの間際に起こったPKとの戦闘。
私のせいでローヴォちゃんがデスペナしてしまいましたけど、その後に見せた彼の拷問の手際の良さ。
惚れ惚れとしてしまいました……。
それからなんとか関わりを持てないかと思っていたんですが、わりかし口下手な私は他の人に道を譲るばかりというか……なんというか。
気がつけば大所帯が彼の魅力に気づいていたので、無理して積極的にやってます。
あ、でも、逆に良かったのかも……フフフ。
そんな彼は、どことなく強烈な怒気を撒き散らしながらクラス5という強力なモンスターを操るPKと戦っています。
あまり感情というものを見せないですが、割とノリはいいタイプなんですよね。
初見の相手には基本的に敬語で話しますし、受けた恩はしっかり返しますし、時には悪ノリだってしてる節があります。
度が過ぎてツクヨイさんとかミツバシさん、コーサーさんあたりが見てないところで振り回されてますが、そんな無邪気な姿が、童心を忘れない大人って感じで……出ますね、ヨダレ。
……ああ、話が逸れてしまいました。
そうやって情が深いからこそ、情け容赦を取っ払うことができるんでしょう、普通の人は躊躇しますし。
みんなで作り上げた拠点でしたから、心の底では相当怒っているんでしょうね。
焼肉屋さんで見せた怒気を更に倍の倍にしたような、トモガラさんのオラオラよりもはるかに強烈なものが、戦いが進むに連れてどんどん高まってきています。
あ、トモガラさんはオラオラしててヤンチャでギラギラしてるところもありますが、基本的に面倒見が良くて、色々と手伝ってくれたり、かなり優しい方ですよ。
「ローレントを叩き潰せ。俺はもう眠たいんだよ~、はやく寝かせてくれや、なあ──?」
PKの方が、女王蟻を操って彼に襲いかかりました。
「──ッッ! ブルーノ、高所へ!」
その瞬間、大爆発が起こりました。
彼を中心にして、です。
「た、助かりました……ルビーさん」
「ピィ」
同じく空中での機動力を持つ彼のテイムモンスター。
クリムゾンコニーのルビーさんが、ご自慢の脚力を用いて一気に高所まで連れて来てくれました。
あのまま近場を飛んでいたら私とブルーノはとんでもないことになっていたでしょう。
「──な……はっ……?」
王であるギジドラと、女王蟻を守るために、自動的に蟻が壁を作っていて、でもそんなこと御構い無しに、彼を起点に巨大な爆発が起こったようでした。
「おいおいおいおい、──んだよこれ!」
とんでもない爆風で、女王蟻の巨体が上空に押し上げられています。
爆心地には石でできた箱。
その中から、彼が、ローレントさんが出てきて上を見ながら一言。
「しぶといな……まあこれで死んでたらわりかし拍子抜けだったけど」
「くっ、そ──が!」
押し上げられて、ようやく巨体が止まり、そして落下が始まる直前。
真下にいるローレントさんに向けて、女王蟻の渾身の蟻酸が……お尻から吹き出ました。
口からだけだと思っていたんですが、やはりお尻からも……そうですか。
なんかヤラシイですね?
いや、そんなことはさておいて、巨大なお尻から吹き出される蟻酸は滝の様です。
「しねえええええええ!!!!」
徐々にしぼんでいく女王のお尻が、その攻撃がなんどもできないことを物語っています。
必殺技みたいなものなのでしょうか。
「……やっぱりそこからも出るのか」
私と同じことを考えていたんですかね。
ローレントさんはそんなことを呟きながら上に手をかざします。
「エナジーブラスト」
蟻酸に対抗する様に、比較的上位に位置する無属性魔法スキルが炸裂します。
あれを得た時は、まだ三次転職すらしてなかったみたいですけど……本当に二次職系列のスキルなんですかね。
本人は愛着がわくとそれをずっと使うタイプの人なので、偶発的に新しいスキルを獲得するか、周りから色々言われないと次のスキルを取りそうもないですけど、どうなんでしょうね。
まるで、夜空を照らす青白い光の柱。
凄まじい熱量を持っているのがわかりました。
無詠唱や詠唱スキルをつけることで、威力の向上などが図れるのを考えると。
名一つ詠唱でここまで威力を持つスキルも珍しいですね。
いったいボーナスポイントをいくつ詠唱に振っているんでしょうか?
「ぐぅっ……」
焦げ付く様な臭いが立ち込め、煙をあげる女王蟻ごと、ギジドラは降下します。
「蟻どもッ!」
動員できる蟻を動かして、なんとかクッションにしながら着地。
それでもそれなりの衝撃ダメージを負っている様でした。
ギジドラを乗せるほど体力が残っていないのか、たまらず鳴き音をあげて彼を頭から降ろします。
蟻ってたしかどんな高さから落ちても死なないらしいですけど……さすがにこれだけのデカさだったらもろにダメージを受けてしまうんですね。
ゲームの世界の虫系モンスターはかなり大きなモンスターばっかりです。
この大きさの外骨格がどうやって自律行動しているのか謎ですが……なんか適当な法則のもとに動いているのでしょう。
「ちっ! どこに行きやがった! おらっ!」
荒い声をあげながらキョロキョロと周りを見渡すギジドラ。
上から見ている私にはローレントさんがどんな動きをしているのかよくわかりました。
闘技大会の時に見たあの動き。
ただ、普通にテクテクと歩いているだけなのになぜか当事者は反応できない。
隠密を得意とするうちの里の一族ですら真っ青の人の無意識に糸を通す繊細な技術。
そしてそのまま冷徹な視線を向けながらすっと後ろに立って刀で首を薙ぎました
十六夜視点は初めてですね。
とりあえずこんな奴です。
そして裏設定をようやく出すことができました。
あと、電子書籍ですが。
あま○んのkindleノベル、ライトノベルで昨日45番くらいにいて嬉しかったです。
みなさんありがとうございます。
いい報告ができるように頑張りますので、応援宜しくお願い致します。
次回、ローレント視点に戻ります。
すでに書き終えています、投稿するだけなんですが、勝手にメモ帳見つけて更新しないよう。




