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 骸の雨、とでも言えばいいのだろうか。

 下は阿鼻叫喚の地獄画図だ。


 石造りの家屋を容赦無く弾け飛ばすほどの威力を備えた手榴弾。

 このリアルの物理法則と、このゲームにしかない魔法スキルを掛け合わせて作られた代物。

 なんというか、とんでもない威力だった。


 雑魚のマーダーアントならば、四肢はバラバラにもげて然るだろう。

 バラバラボタボタと降り注ぐ雨に、黙って戦いを見ていたPK達は唖然の表情。

 そんな彼らを横からトモガラが叩いていた。


 テンバータウンの方にも少し余波が向かってるみたいだが、まあなんとかなるでしょう。

 向こうに一匹たりとて蟻を送ってみろ、精神まで殺しつくしてやる。


「む?」


 だが、まわりの動向に反して、ギジドラは静かだった。

 奴ごと、爆発してしまえと手榴弾を投げていたのだが、蠢く蟻の肉壁で凌ぎきっている。

 蠢く虫の中心で、何か企んでいるのだろうか──


「──ルビー右だッ!」


 一瞬の殺気と共に。

 下から、ものすごい速さの何かが飛来した。


 すぐにルビーに指示を出すが間に合わない。

 なので悪いが蹴り飛ばさせてもらった。

 空中で手甲を用いてガードすると、べちゃっと何かがまとわりつく衝撃。

 そのあと、シュウシュウと音を立て煙を上げ始めた。


「……なんだ、硫酸?」


「いえ、おそらく蟻酸ではないかと」


「十六夜」


 十六夜を見ると、装備が溶けていた。

 太ももの白い肌が露出し、赤くただれ始めている。


「……あんまり見ないでください」


「とりあえずポーションを使え」


 レイラ謹製の上級ポーションをストレージから転移させ、十六夜に投げ渡す。

 うら若き乙女の肌が赤くただれている、なんということをするもんだと思った。

 さすがにこういった傷は見せたくないのだろう、女性だし。

 空気を読んでギジドラに目を向ける。


「……なんか勘違いしてません?」


「はあ?」


 とりあえずギジドラに目を向けるんだ。

 また蟻酸食うぞ。


「あぶねぇ〜、まにあったぜ〜……おら、殺し屋女王のお出ましだ、どけ雑魚ども、そして道を作れ」


 マーダーアントが再び道を作り出す。

 次は闇雲な高い塔ではなく、壊れた家屋の建材を織り交ぜならが基礎を固めて上へ上へと続く架け橋のようだ。


「いけ女王」


 その上を、レイドボスクラスの大きさを持ったケツのでかい歪な蟻が悠然と歩いてくる。

 もちろん、ギジドラがその上に乗って操っているようだった。




【マーダーアント・クイーン】Lv1(-15)

殺人蟻の女王。クラス5。

まだ若いがそれでも十分な脅威を持つ。




「……クラス5」


 初めて見るランク帯だった。

 一体そんな魔物をどうやって、どうやって従えるというのだろうか。

 契約魔法でも、難しいだろうに……。

 クラス4のテイムモンスター達をプレイヤーのレベルに換算して60〜70くらいだと算出する。




契約モンスター▽

【ローヴォ】バッドラックウルフ:Lv21

特殊能力:悪運の瞳

装備:合わせ翅と翡翠の首輪

【ノーチェ】幻影馬:Lv16

特殊能力:残像

装備:馬装一式

【ルビー】クリムゾンコニー:Lv19

特殊能力:空蹴

装備:無し




 するとだな、ローヴォが俺と同じペースでのレベルアップとなっているから。

 だいたいクラス4の21レベルで俺と同じレベル71程度の実力を持つ。

 もっとも、スキル的にはプレイヤーの方が強かったりするが、そのへんはとりあえず置いておく。


 クラス5とは、いったいどの水準なのだろうか。

 わからんが、とにかく今よりもっと強いのだろう。


 せめてもの救いは、この得体の知れないクラス5の魔物。

 そのレベルの横にカッコ書きでマイナス表記されていることだな。

 おそらくヤツにも扱いきれないレベルの魔物なのだろう。

 まあ、それをどうやって調教するのか謎なのだが……それはさておいて。


「おら、黙ってると飲み込んじまうぞ〜!」


 ギジドラは、そう言いながら蟻の架け橋をどんどん登ってくる。

 なんだかんだ学習しているようだ。

 外側に瓦礫やらを多く作って隙間を無くしている。


「てめぇのその爆発物だって怖くねぇんだよ〜!」


 巨大な蟻だと隙間が大きく、その隙間に手榴弾を投げ込まれたから対策してきたんだろうな。

 これだと、寸分の狂いもなく小さな隙間に手榴弾を投げ込まないといけない。

 外側から爆破させてもあまり削ることはできんだろうし……だが……、


「……まあ、俺には意味ないんだが」


 手元にある手榴弾のボタンを押し、魔力回路を作動させる。

 そのまま時間差で起爆する前に、アポートで適当にはみ出た建材の一部を引き抜いて、その隙間にアスポートで手榴弾を送り込む。

 寸分たがわず投げ入れることはできるが、面倒だからこの手法に限る。


「ちぃッ!!」


 バランスをとりながら舌打ちするギジドラ。

 強度が増している分、それなりに耐えるがやはり内側からは脆いな。

 外から中に、は肉壁たる強度を持つが、内側から外に向かって攻撃してしまえば……所詮ただの蟻。

 もげて死ね。


「芋虫バッタみたいにしちゃる」


「な、なんですか芋虫バッタって」


「ん? 知らないのか?」


 昔──小学生の時、トモガラがよくやってたんだが。

 ショウリョウバッタを捕まえて、足を全部モグと、触覚だけでもぞもぞする芋虫バッタが出来上がる。

 触覚を引きちぎると脳に直結してるのかしてないのかわからないが、頭までもげるからNGだ。


「ざ、残酷……」


「許せ、子供の無邪気な遊びだ」


 カエルを躊躇なく踏み潰すやつもいたな。

 そして俺は成長して、紛争地域で人の頭蓋を踏みつぶしたこともある。

 あの時は子供の無邪気な遊びではなく、殺される前に殺すっていう殺伐とした世界だったな。

 それに比べると、バッタはたかがバッタでしかない。


「世の中、ベジタリアンだとか、動物愛護だとか、命を大事にだとか色々とうるさい声も多いが……あいつらは本心ではなく、副次的な欲望から叫んでいるだけだ」


「……はえ??」


「まあ、なんだ。科学の発展とかなんとかで蚊が消えた今、人を一番殺すのは人だし、その性質がこのゲームでは如実に出ている」


「饒舌なのは珍しいですが……すいません私には話がよくわかりません……」


 ……たしかに、こんな話をして伝わった試しがない。

 なんて説明すればいいのかわからないが、今昔を思い出して心の箍が外れようとしているのだけはわかる。

 一閃天やら久利林と戦った時のように、なんだろう色々呼び起こされるように、蚊kん角が戻っていく。


「俺もいるの忘れてんじゃねぇよ!!!! オラァッ!!!!」


 トモガラが蟻をぶちまけながら無理やり前進し、架け橋を下から切り崩そうとする。

 外からの衝撃に強い肉壁も、それを超える強引な力にかかればゴリゴリと削れ、そこに生じるとんでもない摩擦熱によって蒸発していくみたいだ。


「兵隊ども! 全部あの男に迎え、全部だ!」


 ギジドラは女王蟻の周りで護衛に当たらせていた兵隊蟻を全てトモガラへ向かわせた。

 いわば超個体とも言える超攻撃的スキル構成とグローイングだ。

 数の暴力に真っ向から対抗している。


「十六夜、ルビー、離れてろ」


 その隙に、俺はルビーから降りて蟻の架け橋の上に降りた。


「はっ! 獲物が自分から食われにくるとか、つまんねぇの〜!」


 クイーンは強力な顎を持っているが、それより厄介なのは蟻酸だ。

 でかい尻からくるかと思いきや、なんと普通に口から飛ばしてきた。


「マナバースト」


 まずは弾く。

 そして下にいた蟻にもダメージを与えつつ冷静に攻撃力をアップさせる。


「ナート・エスカレーション」「ナート・マジックアームズ」「マジックブースト」「マジックエッジ」


 さらに詠唱を重ねる。

 そこへ悪運の瞳、残像を待機させる。

 もちろん魔装は起動済みだ。


「お得意の石の雨でも無駄だぜ! 時間が経てば立つほど、蟻が死ねば死ぬほど、この“土台”は固く、硬く、堅く、なんだよッッ!! その弾き技も一発使ったらしばらく使えないんだろ? ほかにも色々スキル持ってるみたいだが、俺の女王は全部しのげるようにしてあんだぜ〜? ギャハハハ!」


 ギジドラは、一人で目の前に立つ俺を前にして狂気の笑いを一つあげると、女王に命令を下す。


「ローレントを叩き潰せ。俺はもう眠たいんだよ〜、はやく寝かせてくれや、なあ?」









あれ、ろーれんとの……ようすが……。

次回、やや十六夜視点かも。

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