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「後ろ三人と蟻の処理をします」


「うむ」


 十六夜のペットであるブルーノも戦いに加わったことで、戦闘がさらに楽になる。

 わざわざカイトーの配信画面を移さなくても、十六夜は的確に指示を出してくれる。


「前から十人」


「後ろ処理完了です」


 走りゆく馬上。

 軽い身のこなしで体勢を変える十六夜はさすが猟師。

 後ろを向いて矢を放ちながら、俺の声に従って前を向く。

 ツクヨイにない感触とともに、俺の動きを邪魔しない程度に後ろから肩越しに腕を回して器用に弓をひく。


「……別に俺の上に立ってもいいけど」


「そそそそんなの失礼ですよ」


「いやでも、くっついてると弓引きづらくない?」


「いいいいやいや、これはそのあの、なんて言いますかね? あのー、二人羽織弓っていうスキルで……そう、スキルですスキル。こうすることによって体をしっかり支え強い弓が放てるというスキルです! スキルなんです!」


「お、おおう」


 スキルだったらしょうがないけどな。


『うわああああああああああ!!!』


『おらおらたまやーってやつだPKども!!』


 ドガーン。


『ぎえぴいいいいいいいい!!!』


『これならレッドオーガどもの方が歯ごたえあったぞPKども!!』


 遠くの方では蟻と一緒にPKが打ち上げられている。

 剛力というかなんというか……。


「とんでもないな……」


「ふふふ、変わらずですね。少なからず、トモガラさんもこの拠点を奪われた時に別の場所に行っていたのを悔しがってましたから」


「へぇ……あいつが……?」


「むしろローレントさんがレイドボスで陽動をされてるのに、なんで俺にはねぇんだとかなんとか言ってましたよ」


「あいつなら言いそうだな」


 他ゲーでは基本的に目立ちに目立つタイプだからな。

 俺の陰に隠れてしまったのが悔しいのだろうか。

 まったく、どうしようもないやつだ。

 こういう時こそ華を持たせてやるべきだな。


「……なにをやっているんです?」


「ん? 色々と溜まってそうだし、マーダーアントの数を増やしてガス抜きしてやろうと思って」


 そう思ってあいつのいる場所に寄せ玉投げました。

 蟻さん帰省ラッシュのサービスエリア並みに寄り道し出して面白いです。


「終わってからのほうが……」


「確かにそうだが、もう投げたしな」


「あわわわ、だ、大丈夫でしょうか」


「大丈夫だろ」


 ……たぶんな。


『ローレントおめぇよおおおおおおおお!!!!!!』


 うわ、怒ってる。

 けど怒りに任せて打ち上がる蟻とPKの数が増えたので良しとしておこう。

 あいつにはこれくらいが丁度良いのだ。


「前、五人です」


「わかってる、後ろの蟻はローヴォとルビーに牽制させる」


「なら私は正面三人、手傷を負わせます」


 俺の背中に体重をかけ、ぐっと弓を引き絞った十六夜はそのまま三本連続で弓を放つ。

 正面三人ならば、ノーチェに乗って肉薄しながらでも打ち抜けると、そういうことか。

 そして有言実行。


「ぐぅ!?」


「て、手が!」


「う、馬の上から!?」


 レッドネームたちが痛みにうずくまっている。

 さすがだ十六夜。


「隙は作りました」


「ありがとう」


 それだけあれば十分にお釣りがくる。

 正面でうずくまった一人をノーチェが踏み潰し。

 左で手を抑えていた一人はすれ違いざまに左足で腹を蹴り抜き。

 右側で怯んでいたやつはそのまま羅刹ノ刀で首を刎ねた。


「う、うおおおおおお!!!」


「せめて一撃だけでも!!!」


 五体満足の残った二人は、そう勇みながら斧や剣を大きく振り上げる。

 だが、


「よっと」


 素早く六尺棒に持ち替えて、相手の武器が振り下ろされる前に六尺棒ラリアットだ。


「「ぐえっ!?」」


 そのまましばらく連れて行って、窒息しそうになるところで適当な蟻の集団に放り投げておいた。


「すごい馬力ですね、ノーチェさん」


「ブルルル!」


 座りながら身体をポンポンと叩く十六夜に、ノーチェは心なしか嬉しそうに鼻を鳴らしていた。

 空中から、フクロウの鳴き声が聞こえる。

 十六夜のテイムモンスターブルーノだ。


「正面、あなたの倉庫あたりにプレイヤーキラーが集結しているみたいです」


「すぐそこへ向かうぞ」


 どいつもこいつも、骨がない奴らばかりだと思ったが、そろそろ真打が出てきたのだろうか。

 今まで看破しなくても鑑定が効いていた奴らは、一次職の後半か、二次職中盤までだった。

 なんなら、黙って見ているクラフトが三次転職も済ませてレベルも70後半に差し掛かっていて一番強いほう。


「おい」


「なんですか? 晒し首は黙っててください。今いいところなんですから」


 辛辣な十六夜の一言である。


「チッ、好きでなったわけじゃねぇよ……バカがッ」


 すごい歯ぎしりが聞こえるあたり、とんでもない形相になってるんだろうな、銛クラフト。

 だが、こいつから話し始めるのがなんだか気になった。


「なんだ?」


「なんでそんなに楽しそうに人を殺す? だったらテメェも“こっち側”にくりゃ、好き勝手できるぜ?」


「……………………」










核心に迫る晒し首。

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