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「あっ」


 やばい、クラフト死んじゃうかも。

 とりあえず取り出したバケツに回復ポーション適当に突っ込んで、じゃぶじゃぶ。


「……生きてるか?」


「ぐぼあーー!! バカが!! 殺すぞ!?」


 よかった生きてた。

 とりあえず呼びでセレクからもらったミサンガ引っ掛けとけ。

 その辺に落ちてる身体がマーダーアントに食われたり、衰弱死するまで保つだろう。

 攻撃力が低いとはいえ、銛のダメージでも致命的になりかねないのが嫌なところ。


「うわぁ、なんなんそのゾンビ的なもの……」


 ポーションまみれになったクラフトの生首を見てめちゃくちゃ引いた表情をしながら、カイトーはいやいやそして渋々手渡された銛クラフトを持った。

 ダメージは入っているようだが、その瞬間上級回復ポーションによって強制回復。

 微妙なドットではあるが……まあこのゲームでのポーションが即時回復ではなくてじわじわ回復して行く機能を持っていたことに感謝だな。


「掲て叫べば相手は驚くぞ」


「……みんな引いてるやん、見てみ」


 PK達に視線を飛ばすと、確かにとんでもない形相で固まっているようだった。

 なあに、それくらいで固まるような精神力のやつにはこうだ。

 寄せ玉を投げ込んでやる。


「今ならマーダーアントで蹴散らせるだろう」


 とりあえず後ろからぞろぞろと第一拠点に侵入してきたマーダーアントは、俺に集いながら、時折投げた寄せ玉の方へ寄り道して、再び俺の元へ戻ってくると言った挙動を繰り返している。


 道ゆくプレイヤーキラーをちょこちょこつまみ食いしているようだが、基本的に狙いは俺みたいだ。

 まあ、こいつらの効果は陽動撹乱、そして軍勢による轢き殺しが主だからよしとする。


「キシキシキシ!」


「お前はあっちだ」


 寄せ玉投げたのに、俺に向かって飛びかかってくるマーダーアント。

 とりあえずPKの方へ蹴り飛ばしておいた。

 ちなみにMPのことを考えずにスペル・インパクトとか使っちゃうと、一発で消し飛ぶ。

 まあ、レベル的にはクラス1〜3の寄せ集めだからな。


 それでもじわじわ膨らみ続けたマーダーアントの大群の数は約千を超えた。

 俺が蹴散らした分が約百以上だとすると、すでに十倍以上の数に膨れ上がっているのだろう。


 ギジドラを追わせていたルビーも、本人が落ちたことで俺の方に戻って来ている。

 よし、契約モンスター大解放スペシャルだ。


「準備はいいかローヴォ、ルビー、ノーチェ」


「グォン」


「キィー」


「ブルルッ」


 さすが俺の契約モンスター達。

 もはや歴戦の戦士を思わせる意気込みよ。

 よし、


「正面から叩き潰すぞ! 旗を掲げろカイトー!」


「え? これの銛を旗みたいに? んなアホな……ってまあここまで来たらなんぼのもんじゃーーい! うおおおおおおおお!!!!」


「ぐわー! 揺らすなー! やめろー! バカがー!」


 アリの大群は寄せ玉を投げて別ルートへ寄り道だ。

 そして第一拠点の中央通り。

 つまるところ、テンバーとサイゼミアンのある真ん中の公園をつなぐ大通りを俺が押し通る。


「や、やばい! お、俺はPK拠点から一抜けたぜ!」


「アカウント作り直して最初からやり直す!」


「ばか、PKやってたらペナルティかかるぞ!」


「知ったことか! あんな行かれた野郎の相手してる場合じゃねぇよ!」


「陣形を崩すな! むかえうてって! 今リアルでこっちの仲間と連絡とってるからよ!」


「しらねぇよ! あの緑色の目で睨まれたら不幸になっちまう! ガンストの二の舞になりたくねぇ!」


 ノーチェに乗って、ローヴォとルビーを従えて。

 さらに討ち取った中堅ポジPKのクラフトの生首を抱えて。

 高笑いしながら駆け抜けていると、軟弱なPK達は恐怖ですぐに崩壊した。


『こういう展開を、待っていた、わくわく』


 この混乱には、羅刹が仕事をしてくれているようだ。

 うむ、楽しそうで何より。

 崩壊した集団、彼らはテンバータウンに逃れようとする。


「何人たりとも逃さんからな」


「ひいいい! 追ってくるううう!」


「おい早くいけよ! おら! はやく! はやくしろっての、おい!」


 背を向けるPKにエナジーブラストをぶちかまそうか。

 そう思った時だった。


「なんや? 向こうから人が来よるで?」


 カイトーも気づいたようだ。

 月夜の明かりに照らされて、テンバータウンの方向から誰かが一人でつかつか歩いてくるのが見えた。

 体格的に言えば俺と同じくらいの身長で、金髪ドレッドの男。


「……あいつはトモガラか」


「面白いことやってんな? とりあえず混ぜろよおい」


 そう言って、自分の体よりも三倍ほど巨大なまさかりを振り回る。

 PKが十人ほど、まとめて真っ二つに薙ぎ払われた。

 今の攻撃がまるで準備体操とでも言わんばかりに、トモガラは首をコキコキと鳴らす。

 そこでいつもと違う様子に気づいた。


「……湯気でてる?」


 凶悪に笑うトモガラの身体を見ると、ゆらゆらと彼の身体から蒸気のようなものが上がっていた。


「身体強化の称号派生【鬼滅】だ」


 俺の魔法剣士のようなものだった。

 魔闘家スキルも基本的に称号から派生が生まれたスキルである。

 身体強化オンリーであげていたトモガラも、ついに称号派生を得たのか。


「いいな」


「俺だけのオンリーワンにしたいから取得方法は教えねぇよ」


 ずるい。が、まあそれも仕方ない。

 俺も基本的に称号取得方法なんて教えないからな。


「あくまで上位身体能力強化スキルを取った上での派生だから、お前は取れないけどな!」


 そう言いながらトモガラは汚く大きな声で笑っていた。

 聞くところによると、ポジション的には派生下位のスキルであるが、性能的には上位に食い込む、そんな特殊スキル。

 身体強化系スキルに瞬間的な攻撃力と回復能力を付け足したようなスキルだという。


「今の俺はまさに鬼」


「えげつないな……鬼とか」


「あんさんがそれいう? はたから見てあんさん達、どんだけ戦闘狂やねんって百人が百人とも100回同じこと思うで?」


「ぐわー! 殺してくれー! バカがちくしょー!」









銛クラフト落ちが楽しい今日この頃ですが、多分飽きて掃いて捨てられる落ちが待ってるでしょう。

役者が揃いつつありますが、実はまだまだです。



PK戦は、頭がおかしい奴らに焦点を絞って書いてます。

なので、もう一人頭逝ってるやつが来ます。


PKって悪人ロールは誰しもしたくなりますし、わざとそういう風にやってる節があります。

横ギルドとか、ネトゲにいますしね。

やりたいことをやってるやつらに、同じベクトルをぶつけるとどうなるか。

頭で考えてそっちの選択をしている奴らに、本能でその選択をしているやつをぶつける。


……どうなるんでしょうねぇ……





「扱いもっといい感じにしろバカがー!!!!!!」

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