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「なに爆破してんねんてー!!!!!!」


「ん?」


「しかもサイゼミアンちゃうんかあれ!!!」


「大丈夫だ問題ない」


 中央を爆走していたら、PKたちが建物の中に篭り始めたので、とりあえずガラス張りで一番中の様子が見やすいサイゼミアンに爆弾放り込んだ。


 魔製グレネードとでも言うのだろうか?

 魔銃のように中で石弾生成してって言うよりか、魔石に火属性魔法スキルが発現する魔法陣を書き込んでおり、中にたくさん仕込まれた火薬に暴発させる。


 ピンを抜けば、制御用の魔法陣に魔力が満たされる仕組みになっており……試しに投げて見たら思ったより強力で、一発でサイゼミアンのホールが崩壊した。


「扱いに気をつけないとな……」


「ほんまやって……耳キーンってするわ!」


 アポートでストレージからノータイム転移できる俺はあまりその心配もなく。

 最悪アスポートで空中に飛ばせばいいが、アイテムボックスから出すのには手間取る人が多いと思うので、素のまま袋に入れて持ち運ぶ人が出ると思う。


 事故死増えそうだな。

 なんて、思った。


 っていうか、爆発の威力は大したもんだが、もっと弱くして中になんか金属片とか適当にゴミを詰めて入ればどうだ?

 負傷だけ負わせる方が、使い方として合ってるんじゃないかと。


 まあ、そういった武器兵器方面では製作組やら商人組がなんだかんだ進めていてくれそうだ。

 ニシトモのやつ、なんだかんだそう言う感覚だけはずば抜けていると言うか。

 俺も一目おくよな、あいつの性格。


 個の力を超越した何かを持ってそうで、はっきり言えば恐怖すら浮かびそうだ。

 まあ、個に打ち勝つのは数の暴力でもあるのだが、さらにその先には超個体的な力というものが存在する。

 そしてそのさらに上に超数の暴力。


 どこまでいっても数は強いが、烏合の衆ならばそれは数として考慮しない。

 このPKに奪われた拠点を一人で攻めるという無理やりな図式が成り立っている時点で、お察しというものだ。


「よし、とりあえず行け蟻」


 崩壊した建物に、マーダーアントの寄せ玉を投げ込み。

 そして手元に引き寄せる。

 俺に集まる蟻は膨大だが、その片割れが数の暴力としてPKに押し寄せる。

 ギジドラ……いいものよこしたよな、これツクヨイとかに頼んで量産できるか聞いてみよう。


「……何やこの状況」


「そういえば、盗賊ギルドってどこにあるんだ?」


 あっけにとられるカイトーに、襲い来るマーダーアントを切り倒しながら俺は尋ねた。

 ついでに叩けたらいいんだがね……、盗賊ギルド。


「盗賊ギルドの本部はここには存在せぇへんで? どこか別の大きな都市にあって、定期的に指令が届いて支部として仮構えされた建物に集まるんや」


 随分と用心しているようだ。

 支部はその都度かわって本部の場所は一部の上役しか知らないし、何らかの制約によってばらすことができなくなる。

 と、そんなところだった。

 情報を扱うところだけあって、入るのにも抜けるのにもある程度厳しい線引きがある。


「いや、上に行くにつれて開示される情報が多くなって行くんやけど……そのぶん抜ける時に色々と面倒なんやで……表向きは中立のトレジャーハンター的なポジションを通しとるが、実際はどす黒い部分もぎょーさんあるわ」


 盗賊の職業は、こういったRPGもののゲームには欠かせないもの。

 もっとも、RPGのカテゴライズではなく、もはや“何ゲー”だと言わんばかりのGSOでは、盗賊職は特殊職として別枠に仕上がっているらしい。


 最初に取れるスキルが最初は固定だったからな、猟師系の職種から移行した人も多いが、アップデートともに開始されるスキルに数種類ほど追加されているのだという。


 開始地点の発展とともに、新しい職業も増えて行く。

 そんなことがあっていいのか?

 とも思うが、別に職業自体はいつでも選択可能だ。

 後ろ、先人が職業について、広めて、ってやったからこそ。

 他の人がその職業につきやすくなった……発展していった……という体裁らしい。


「──ローレントオオオオ!!!」


「うわっ、なんやっ!?」


 遠くで大声が聞こえた。

 何だと思ったら……、クラフトがいた。


「お前か」


「お前かだとっ!?」


 クラフトはそう言いながら足の裏を爆発させて飛ぶ。

 その衝撃で何人かのPKが被害を負って恨み節をあげていたが、本人は知ったこっちゃない様子。

 飛び上がり、炎を巻きおこし、次は燃えない剣を持って、ノーチェに乗った俺の頭上から切り込んで来る。

 魔銀の剣は一つしか持ってなかったんだな。


「俺の剣を返せ!」


「せめて一日後に出直してこいよ……」


 一度負かされた相手に、すぐに勝負を挑むなんて愚の骨頂。

 しかも、デスペナルティで身体の動きに制限がかかってるはず。

 いや、本当に笑えんな。


「く、くるで!?」


「マナバースト」


 慌てるカイトーを尻目に、俺は落ち着いてクラフトの炎を弾き飛ばす。

 今回は、マナバーストで事足りる。

 リフレクションは見せてやらないのだ。


「くっ、違う弾き技か!?」


 一瞬、上空で怯んだクラフトは、すぐに足から火属性魔法スキルを噴出させ体勢を整える。

 こういったスキルの応用や熟練度はいいのだがなあ……。


「だが上はとった! リベンジマッ──」


 炎も纏ってない、そんな状態で何ができる。

 魔銀の剣ですらない、レイドボスマナズマの素材を使った手甲で鈍らな剣は簡単に弾ける。

 あとは首を薙ぐだけだ。


「俺を殺したかったら、もっと万全を期せ」


 当然、羅刹ノ刀は開始からずーっと抜刀状態。

 クラフトも抜かりなく、まだ意識があるようだ。


「ぐわーー! またこれかー! バカがー!」


「バカはおまえさんやろ……」


 首だけになって悔しそうにするクラフトに対して、カイトーが呆れた声でそういっていた。


「クラフト」


「……なんだ? 殺せよ、またあの時みたいに」


 一点して再び冷静にふてくされるクラフト。

 こいつ学習しないのか!?


 とりあえず話を進めよう。


「俺を調べたと言っていたが、ハンデとして今からこの戦いをお前に見せてやる」


「──は?」


「──は? なんて?」


 唖然とするクラフトとともに、カイトーも声を上げていた。


「……嫌な予感しかせぇへんのやけど?」


「持ってろ」


 俺はクラフトの生首をアポートで引き寄せた銛に突き刺した。

 そしてカイトーに手渡した。

 クラフトの後方に控えていたPK達の表情が歪むのが見えた。










○<バカが! このー!


銛クラフト。



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